ニャミ×大樹


「え、えーっと…、ニャミ…さん?」
相手の様子を恐る恐る気にしながら、僕は話しかけてみる。
「は、はい!」
目の前には、あのポッパーズの一人、ニャミさんが座ってる。
本当はここには僕みたいな小学生じゃなくて、ちゃんとした相手、すなわち彼氏であるタイマーさんが座ってるべきなんだ。
なのに、何で僕がこんな所に座ってるんだろう?
「あ、あのぅ…、ダイキ、くんだっけ?」
「え!?あ、はい!そうですけど…」
さっきからこんな感じで、僕らは見つめ合ってる。もちろんラブラブとか、
そういう意味じゃないよ。

ことの始まりは、神様が企画した「ポップンキャラみんなでキャンプしようプロジェクト」
その名の通り、みんなでキャンプして楽しもうっていう行事で、僕もリンちゃんやハリーと一緒に
参加することになった。
それで、テントの部屋割りがあったんだけど…
「親睦を深めるということで、担当曲が違うキャラ同士でテントに入ってもらうからな」
なんて神様が言うもんだから、リンちゃんやハリーと同じテントに入れなかった僕。
結局、リンちゃんはリュータさんと同じテントに、
ハリーは佐藤さんの飼ってるネコと同じテントに入ることになって、
そしてかくいう僕は、ポップンキャラの大御所であるニャミさんと
同じテントになってしまったというわけ。
それで今、僕もニャミさんもこんな風に固まってしまっている。

固まりながら僕は、改めてニャミさんの様子を見てみる。
綺麗な緑色の目、半ソデにGパンというラフな格好、
そして何よりも目を引くのは、ネコと同じ耳と尻尾。ミルク色の毛がとてもかわいく見える。
でも今はニャミさんも相当緊張しているみたいで、どちらもぴくりとも動いていない。
あー…何とかしてこの気まずい空気を消さないと…

「ね、ねえ、ダイキくん」
僕が話し掛けようとした瞬間、ニャミさんの方から話し掛けてきたので、僕はどきっとしてしまった。
「な、何ですか?」
まだまだぎこちないなあ。気弱なのが災いして、思うように話せない。
「ダイキくんってさ、そういうキャラだったの?」
「…へ?」
いきなり突拍子もないことを聞かれて、僕は余計に入ってた力が抜けるのを感じた。
「いや、ダイキくん、髪型が何かバリバリ突っ張ってるぜ、って感じだし、
 初めて見た時に、この子恐そうだなって思ってたら、すごいおとなしくてびっくりして…」
なるほど、僕の髪の毛は金髪で立っていて、リンちゃんからもロックスターみたいだって言われる。
でも、これはロック好きの父さんの趣味でこうなっちゃっただけで、
決して僕の方からこんな髪型になったわけじゃない。
「いや…、これは父さんの趣味でさせられてるだけなんです」
僕がそう答えると、ニャミさんは少しホッとしたみたいだ。
どうやら、僕が不良のお兄さんのように見えたらしい。
「ああー、どうりで。いやね、ダイキくんに何か恐いことされたらどうしようかって、あたし、ずっと心配だったんだ」
「まさかー、そんなことしませんよ、だって僕、まだ小学生だし」
そう言った僕の言葉に、ニャミさんは急に食い付いてきた。
「えーっ!小学生!?中学生とか、小さい高校生ぐらいかと思った」
まあ、小6だし、そう見られるのも不思議じゃないな。
「そうなると、あたしが年上になるわけね…、やだ、あたし、さっき『はい』なんて答えちゃって、恥ずかしー!」
一人で恥ずかしがって、あははっと笑いだすニャミさん、なんとかぎこちない空気は取れたみたいだ。
尻尾や耳も、前よりは動かすようになったし、良かった良かった。

僕がニャミさんたちと初めて会ったのは、14回目にあったポップンパーティーで、とても最近のことだ。
「あの時はダイキくんもあの女の子も…」
「あっ、リンちゃんっていいます」
「そうそう、二人とも、とても緊張しまくりだったよねー」
そりゃそうだ、何しろその時僕らの周りにいたのはテレビでしか見たことのない芸能人ばっかりで、
僕たちみたいな「普通の人」があまりいなかったんだもの。
「もうどこを見ても有名人ばっかりで、『僕たちこんなところにいていいのかなあ?』ってずっとリンちゃんと話してました」
僕の言葉に、ニャミさんがまたハハハッと笑う。
「まあ、あの時の神は『とにかくFEVER!って感じのやつを集めろ!』って必死だったからね」
要するに、人気の上でフィーバーしてる人を集めたってことか。
そんなことが簡単にできちゃうなんて、神様は本当に凄いなあ…
「でもね、あたしに言わせれば、そういう芸能人だとか普通の人だとかっていうのはあんまり関係ないと思うな」
「えっ?」
「ダイキくん、はっちゃけたりするの好きでしょ?」「まあ、外に出かけるのは好きですけど…」
僕がそう言うと、ニャミさんはにっこり微笑んだ。
「でしょ?芸能人とか、普通の人だとかそんなの関係なしに、遊ぶことや歌うことが好きっていう点では
 ダイキくんもリンちゃんもハリーも、あの時のポップンパーティーでは一番だったと思うよ?」
ポップンの大御所であるニャミさんにそんな風に言ってもらえるなんて…、
僕にはこのニャミさんの言葉があまりにも嬉しかった。
嬉しさのあまりボーッとしてる僕に、ニャミさんがいきなりけたたましく笑いだした。
「やだー!あたし、何ガラにもなく格好いいこと言っちゃってんだろ」
「あっ、いえ…。…ありがとうございます」
「あたしがこんなこと言ってたの、ミミちゃんやダーリンには言わないでね。恥ずかしいから」
二人には言わないにしても、リンちゃんとハリーには伝えておこう。きっと二人とも喜ぶぞ。
「はい、二人だけの秘密ですね」
さっきの固い空気はどこへやら、僕はそう言うとニャミさんと一緒に笑い合っていた。

「あっ、そろそろ晩ご飯の準備始めなきゃ」
気が付くと時計はもう四時過ぎ、もうすぐみんなで晩ご飯の準備を始める時間だ。
「じゃあ、そろそろ行きましょう」
立ち上がって行こうとする僕に、ニャミさんはちょっと待ってと言った。
「着替えてくるから、外で待っててよ」
着替える?何でわざわざ?不思議に思いながらも僕はテントの外でニャミさんを待った。
「お待たせー♪」
出てきたニャミさんに僕は息を飲んでしまった。
何と、ニャミさんはコックの衣裳に早変わりしていたのだ。
「へへ、すごいでしょ。『スペシャルクッキング』って曲を担当したときに貰った服なんだけどね」
こんなに近くで衣裳を着ているニャミさんを見たのはこれが初めてで、僕はその姿を
呆然として見つめるしかなかった。
「じゃ、行こうか」
「あっ!はい!」
さっさと歩きだすニャミさんの後ろを、僕は慌てて付いていった。

それぞれのテントに分かれていた人たちも、夕ごはんの準備の時にはみんなで協力しあう。
もちろん、ごはんを食べるのも一緒だ。
僕は男って言う理由で、料理を作るための薪を取ってくる係、ニャミさんやリンちゃんは
料理を作る係になった。

「いただきまーす!」
みんなで作ってできた料理は、とってもおいしいカレーライス。
僕はニャミさんとリンちゃん、そしてリュータさんと隣同士でご飯を食べた。
あと、ハリーも僕らのそばでドッグフードを食べてたんだけど。
「ダイキくん、おいしいね!」
リンちゃんが楽しそうに言う。見てるかぎりリンちゃんもリュータさんと
仲良くなれたみたいで、お互いに本当に良かったなあ。
「そう言えばね、リンちゃん」
夕ご飯を食べおわったあとで、僕は彼女にニャミさんが僕達のことを誉めていたことを言った。
「えっ!?本当に?うわー嬉しいなあ…。あのニャミさんがそんなこと言ってたなんて…
 そういえば、リュータお兄ちゃんも私たちのこと、『元気でかっこいい』って言ってくれたんだよ!」
嬉しくて、興奮気味に話しまくる僕たち。ハリーも僕たち同様に、尻尾をふりふり喜んでいた。
そういうわけで、僕は本当に楽しい夕ご飯の時を過ごした。

夕食の片付けも終わり、僕はリンちゃんと別れて自分のテントに戻った。
「あれ?ニャミさん?」
テントの中に彼女はいなかった。僕より早く食べ終わって、もう帰ったはずだったんだけど…
「どっか、散歩でもしてるのかなあ?」
そうかもしれないな、と僕は思った。きっとタイマーさんか誰かと出ているんだろう。
まあ、あの二人は本当に仲がいいし、どこかでまたデートとかしてるのかもね。
「あーあ、僕もリンちゃんたちと散歩すれば良かったなあ」
そうは言ってももう後の祭り、リンちゃんもすでにリュータさんと散歩に行ってしまってるだろう。
仕方がないので、僕はお風呂に先に入ることにした。まだ7時と少し早いけど、
これから混むことを考えれば今入っていたほうが良さそうだ。
そう思った僕は、いそいそとお風呂の準備を始めた。

やっぱり大浴場の中は僕以外誰もいなかった。僕一人の貸し切りだ。
湯船に浸かりながら、僕はニャミさんの優しい言葉を思い出していた。
「ニャミさんって、見た感じ元気でガサツだけど、本当はとっても優しかったんだな…」
今日初めて知ったニャミさんの優しい一面に、胸がいっぱいになるのを感じる。
「さあ、そろそろ上がろうっと」
湯船から上がり、体を拭いてパジャマに着替えると、僕は温泉を後にした。

外は既に暗くなっており、夜風が体にとても気持ち良かった。
「もうニャミさん、テントに戻ったかなあ。心配してるかもしれないな」
自然とキャンプ場へ向かうスピードも速くなる。
でも、キャンプ場に近づくにつれて、僕は何かおかしなことに気付いた。
静かなはずのキャンプ場のあちこちから、ワイワイと騒ぎ立てる声が聞こえてくるのだ。
小さくてよく聞き取れなかったが、その声全部が喧嘩をしているみたいに聞こえた。

「何か、トラブルでもあったのかな」
不安になった僕は、ますます急いでキャンプ場へと向かう。その時だった。
「何で…、何であんなことしたの!?」
近くの林から、聞き覚えのある声がして、僕は思わず足を止めた。
(―――ニャミ、さん?)
次に聞こえてきたのは、男の人の声。でも小さすぎて、何て言ってるのかは分からなかった。
それをニャミさんらしき声が一気にかき消す。
「そりゃあ、同じテントだからっていう理由もあるでしょうね。でも、彼女のあたしを
 差し置いて、みここちゃんと二人きりで散歩だなんて…許せないよダーリン!」
ダーリン?じゃあもしこの声の主がニャミさんだったとすると、さっきの男の人は…タイマーさん?
「他の人たちみんながこのキャンプで浮気っぽいことしてたけど、ダーリンに限ってそんな
 ことないと思ってた。なのに、なのに…」
「じゃあ、君はどうなんだニャミちゃん!」
すごい怒鳴り声に、僕は10センチぐらい飛び上がった。タイマーさんの声だ。
「君だって僕を差し置いて、あの金髪の男の子たちと楽しくご飯食べてたじゃないか!」
僕のことだ、僕は胸がぞわっとするのを感じた。
「だって!あれはダーリンが先にみここちゃんとご飯食べてたから…」
説明しようとするニャミさんを、タイマーさんは無理矢理さえぎった。
「うるさい!君だっておんなじじゃないか。自分のことを棚に上げてさ」
「そんな…」
「分かったよ。君がそんなこと言うんだったら、僕はみここちゃんと一緒にいる方をとる。
 そっちの方がずっといいや」
タイマーさんはそう言って、林から出ていった。もちろんその時僕は近くの茂みに
隠れて、彼が向こうに行ってしまうまで息を殺して待っていた。

タイマーさんが去った後の林は、びっくりするぐらい静かだった。たぶん他の場所で
喧嘩していた人たちも、それぞれのテントに帰っていったに違いない。
でも、林の中にはまだ、大喧嘩した後のニャミさんが残っているはずだった。
そこで、僕は覚悟を決めて、林の中にいるニャミさんに会いにいくことにした。

林に入ってすぐの所に、うずくまってる影が見えた―――ニャミさんだった。
彼女はうずくまって、声を上げないようにして泣いていた。いつも僕が想像していたニャミ
さんとはあまりにかけ離れていたことに僕は戸惑った。
ニャミさんのそばにそうっと近づいて、僕は声をかけてみた。
「…ニャミさん?」
僕の声に、彼女はすっと顔を上げた。暗くてよく見えなかったけど、目が涙で
いっぱいだったのと、充血して赤くなっているのだけはよく分かった。
「…ダイキくん…」
震える声で、ニャミさんは僕の名前を呼んだ。
「…さっきの会話、聞いてた?」
「はい、全部じゃなかったですけど…」
僕がそう言うと、彼女は下を向いて、小さな声でつぶやいた。
「あたし、どうしたらいいんだろ…」
その痛ましい様子は、側から見ている僕にとっても、耐え切れるようなものじゃなかった。
とりあえずこのままだと風邪を引いてしまうので、僕はニャミさんにテントに帰
りましょうと言った。その言葉に、彼女はこっくりとうなずいた。

いきなり聞き出すのは失礼かなあと思ったけど、僕はテントに帰るとニャミさん
に何があったのかを尋ねてみた。
すると、彼女はぽつりぽつりとではあったけど、僕に詳しい話を聞かせてくれた。

ニャミさんが言うには、彼女はやっぱり僕の予想どおり、タイマーさんと一緒に散歩をしようと
彼のテントへ向かったそうだ。でも、そこにタイマーさんはいなかった。
それでニャミさんはテントの周辺で二時間ぐらいタイマーさんを探して、ようやく彼女を見つけた。
だけど、その時タイマーさんは同じテントに泊まることになったみここちゃんと散歩をしていた。
―――手をつないで、本当にラブラブそうに。
怒ったニャミさんはタイマーさんを林の中に連れていき、責め立てた。そこに僕が通り
かかったというわけだ。

「あたし、ダイキやリンちゃんと一緒に楽しくご飯食べたかっただけなのに…。
 浮気してるだなんて、そんな無茶苦茶な話ないよ…」
消え入りそうな声で、ニャミさんは言った。いつもはピンとしている耳や尻尾も、この時
ばかりはしおれた花みたいにくにゃりとなってしまっついる。
僕はそんな彼女の様子を見ているうちに、だんだんと悲しい気持ちになってくるのを
感じた。
(どうしてあの時、僕はニャミさんと無理に仲良くなろうとなんかしてたんだろう。僕がそんなこと
 してなかったら、ニャミさんはこんな目に遭わずにすんだのに…)
申し訳なさと恥ずかしさ、今度はそれで胸がいっぱいになって、僕は涙がこぼれそうになった。

それから30分ぐらい、僕もニャミさんも背合わせになってずっと黙っていた。僕たちの間には、ものすごく
重い空気が漂っていた。ニャミさんと初めて会ったときでさえも、こんなに重たくはなかったと思う。
「…ねえ、ダイキくん」
先に口を開いたのは、ニャミさんだった。
「な、何ですか?」
緊張と申し訳なさで、僕は少しどもってしまった。
「ダイキくんってさ、彼女はいるの?」
えっ、と僕は思った。たぶんドキッともしたんだろうけど、その時は気付かなかった。
「彼女…ですか?いませんけど…」
「リンちゃんは?」
リンちゃん?リンちゃんとは毎朝一緒にハリーの散歩に行ってるけど、
そんな恋人同士ってわけでもないしなあ…
「リンちゃんは…、普通の友達です」
「そっか」
僕の言葉に、ニャミさんは短く答えた。何だか、ホッとしているようにも聞こえた。
少しの沈黙があって、ニャミさんは言った。
「ダイキくんともう少し早く会えてたらなー。あたし、絶対彼氏にしてたのに」
えっ、と僕はまた思った。でも、さっきの時とは違う。
僕は自分の心臓が少しずつ速くなっていくのを感じた。
「ニャ、ニャミさん?」
そう言って振り返った僕は、一気に言葉を失った。

「ん、んん…、んぅ…」
振り返ったとたん、ニャミさんはいきなり僕にキスしてきたのだ。
少しずつ速くなっていた鼓動が、一気に高まるのを感じる。
もう、何も考えることができないまま、僕はニャミさんのなすがままにされていた。
「んっ、……ぷはぁ」
10秒ぐらいだったかな、ようやくニャミさんは僕の口から唇を離した。
やっと自分が何をされていたのかが分かって、僕は恥ずかしさで耳たぶまで
真っ赤になってしまった。
「えへへ、ビックリした?」
ニャミさんがにかりと笑いながら僕に言う。僕のほうはというと、情けないことに体の
力が抜け、後ろに手をついてしまっていた。
「い、いきなりだったから…、びっくりしましたよぉ…」
だいぶ経ってやっと言葉を発した僕を、ニャミさんはいたずらっ子みたいな目で見つめていた。
そうして、力の抜けた僕の体をゆっくりと起こさせると、急にやさしい目で僕を見つめて言った。
「ごめんねダイキくん。いきなりこんなことしちゃって……、でもね」
ニャミさんはここで言葉を切ると、さらに続けた。
「あたし、今日ダイキくんに出会えて、本当によかったと思ってる。今まであたしが見てきた中で
 一番格好良くて、優しくて…、ダーリンよりもずっと素敵だった」
そんな、言いすぎですよ。僕はリンちゃんに振り回されっぱなしの、ダメな小学校六年生。
「素敵」なんて、僕に一番遠い言葉だ。
必死に首を横に振る僕の頭を、ニャミさんはそっと両手で包み込んで、僕の目をじっと
見つめた。緑色のくりくりした目が、かわいらしく僕をのぞきこんでいる。
僕は改めて近くで見たニャミさんの顔に、いつの間にか見とれてしまっていた。
「それでね、あたしからダイキくんに、一つだけお願いがあるの」
「な、何ですか?」
僕の言葉に、ニャミさんはためらうように一瞬視線をそらせた。でも、また僕の方を見つめると、
ささやくように言った。
「今晩だけでいい、あたしの『彼氏』になってほしいの」

「彼、氏――?」
僕はニャミさんの言葉が信じられなかった。だって、あのニャミさんに、ポッパーズの一人として
ポップン界ではあまりに有名なニャミさんに、「彼氏になってほしい」だなんて…。
「うん、彼氏…。どういうことか、分かるかな…?」
ニャミさんの質問に、僕は少しムッとした。いくら僕でも、「彼氏」っていうのが
どんなものぐらいかは分かってる。
「それは…、デートしたり、手をつないだりする、ってことじゃないんですか?」
「ううん、違う」
僕の言葉に、ニャミさんは首を横に振った。
「あたしの…『初めて』を、受けとめてほしいの」
『初めて』?何が初めてなんだろう?僕はニャミさんの言ってることが全く分からなかった。
そんな様子の僕に、ニャミさんはさらに言葉を続ける。
「ふふっ、ダイキくん、『初めて』なんて言われても、よく分かんないでしょ」
「は、はい…。全然分かりません」
僕がそう答えると、ニャミさんはにっこり微笑んで、
「じゃあ、今からダイキくんにあたしが『初めて』の意味を教えてあげる」
そう言うと、優しく、だけどいきなり僕を地面に押し倒した。

抵抗する暇も、あっと声をあげる暇もなかった。
僕を押し倒したニャミさんは、僕の体の上でうつ伏せになりながら、彼女の唇と
僕の唇を重ね合わせた。でも、今度はそれだけじゃなかった。
「んぅ!?」
口の中に入ってくる、ざらざらした柔らかい感触。ニャミさんの舌だった。
彼女は舌を上手に動かして、僕の口の中を舐め回す。くすぐったくなって舌をちょっと動かしてみると、
すかさずニャミさんの舌が僕の舌を包み込むみたいに絡み付いてきた。
(これが、『ディープキス』っていうんだな…)
心の中にじわじわと広がる不安の中、僕はそんなことを考えながら、ぎゅっと目をつぶった。

ふと、下半身をまさぐられているような感覚に、僕は目をぱちっとあけた。
(ッ!?)
なんと、ニャミさんは右手で僕の股間をまさぐり、ズボン、いやパンツの中に手を入れていたのだ。
とたんに、大事な所を触られているという恥ずかしさが、僕の頭を真っ白にしていく。
恥ずかしさと恐怖で、僕は声を上げたくなった。でも、口はニャミさんの口で塞がれてしまっている。
れろん、ぴちゃっ…、くちゃっ…
口元からのいやらしい水音を聞きながら、僕はだんだんと、目に涙が
たまってくるのが分かった。泣きたくなってきた。
そんな僕の様子を見て、ニャミさんはまさぐっていた手を止めて、唇を離した。
彼女が唇を離すと、僕とニャミさんの口の間に、細い糸がつうっとできた。

ニャミさんは僕の泣きそうな顔を見て、少し困った顔をしていたけど、すぐにぎゅっと
僕を両腕で抱き締めてくれた。
「そうだよね…、ダイキくんだって『初めて』なんだもんね」
彼女の言葉に、僕はうなずいた。確かにこんなことは『初めて』すぎることだ。
でも、恐がってた僕をニャミさんはより一層強く抱きしめなおすと、じっと僕の顔を見つめて言った。
「これはね、男の人と女の人が気持ち良くなるための『オマジナイ』なんだって」
「『オマジナイ』?」
僕がそう言うと、ニャミさんは僕の体の上からころりと自分の体を転がすみたいに降りて、また言った。
「うん、だから大丈夫。最初はちょっと恐いかもしれないけど、後になれば
 だんだん気持ち良くなってこれるから…」
「…痛いとか、ないですか?」
「平気。何にも心配しなくていいの。あたしを信じてくれれば」
そう言って、ニャミさんはまたにっこり笑った。
そんな彼女を見ているうちに、僕は『初めて』のことに対する不安が少しずつ溶けていくのを感じた。
「…分かりました。お願いします」
まだ心の中に不安は残ってこそいたけど、僕はニャミさんに精一杯の笑顔を見せることができた。

僕の表情に、ニャミさんはまるで笑うみたいにふっと息を吐くと、また手をパンツの中に入れてきた。
僕は大事な所をまさぐられて、何だかくすぐったかったけど、初めの時より恐い感じはしなかった。
でも、ニャミさんにまさぐられているうちに、僕は少しずつヘンな気分になってくるのを感じた。
何というか、気持ちいいっていうのか…。
「ううっ、ニャミさん…、何か、変な感じです…」
思わず僕が声を漏らすと、ニャミさんは黙って僕のズボンとパンツをずり下ろした。
とたんに、まっすぐ上を向いた大事な所が顔を出す。まだ皮の剥けてない僕のモノは、
今にも剥けそうとばかりに固くなっていた。
「これがダイキくんのおちんちん…、カワイイね」
「あ、あんまり見ないでください…」
恥ずかしがる僕を尻目に、ニャミさんは裏側の部分を優しく撫でる。
一気に体中を駆け巡った切ない感じに、僕はまた小さく声を漏らしてしまった。
「気持ちいい?じゃあ、あたしがもっと気持ち良くしてあげる…」
次の瞬間、僕は気を失ってしまいそうになった。

「あ〜ん、パクッ」
ニャミさんが僕のモノをいきなり、はむっとくわえて舐め始めたのだ。
「ニャ、ミ、さん…。汚い、です、そんなこと…」
あまりの気持ち良さに僕は途切れがちになってニャミさんに言ったけど、ニャミさんは首を
横に振って、さらに僕のモノを舐め続けた。
ぷちゃっ…、れろれろっ…、にちゃり…、くちゃっ。
ネコ特有の柔らかくてザラザラした舌が、ねっとりと優しく、僕のモノを包み込むようにしゃぶっていく。
「ニャミさん…、も、もう、やめて、くださっ…。何か、出そう……」
突然オシッコを出したいような、そんな感覚が走って、僕はニャミさんに頼むように言った。
でも、ニャミさんはまたしても首を縦には振らなかった。
「だいじょうぶ…。我慢しないで、あたしの口の中にいっぱい出して…」
そう言うと、ニャミさんは僕のモノをちゅうっ、と吸い上げた。
「あっ、あぁーっ!」
ついに我慢できなくなって、僕はニャミさんの口の中に出していた。

「はあ、はあ…」
オシッコかな、と思ったけど、出てきたのは粘り気のある白っぽいやつだった。
それをニャミさんはペロペロと舐め取っていく。その姿は、まるでネコがミルクを舐めているのにそっくりだった。
そして、全部舐めおわると、彼女は息も絶え絶えな僕の顔を見ながら言った。
「うふふ、ごちそうさま。おいしかったよ」
そう言うと、ニャミさんは僕の背中を優しく撫でてくれた。

ニャミさんに撫でられてると、僕は何だか安心するのを感じた。ニャミさんの優しさが、
体の中に入っていくみたいだった。
「ねえ、今さっき、ダイキくん気持ち良かったかな?」
「は、はい…」
ためらいがちに答えた僕だったけど、事実こんなに気持ちいいことはないと思った。
「そう、良かった。」
僕の言葉に、ニャミさんは嬉しそうに答えた。でも、彼女は続けてこんなことを言った。
「でもね、本当は、もっともっと気持ちいいことがあるんだよ」
え?もっと気持ちいいこと?これでさえも気持ち良かったのに、
まだ気持ちいいことがあるのかな。
頭から?マークを飛ばす僕に、ニャミさんはふんわりと微笑むと、今度は自分の
ズボンとパンツを脱ぎはじめた。
「わっ、わっ、ニャミさん何やってるんですか!」
こっちが恥ずかしくなって、かあっと顔が熱くなるのを感じる。でもニャミさんは
そんなことお構いなしに、下半身まるはだかになってしまった。
初めて見る、女の人のアノ場所。
ニャミさんのそこは、毛も生えていなくて、とってもすべすべしているように見えた。
「あたしのココ、結構キレイでしょ?毎日お風呂で洗ってるんだよ」
さすがはニャミさん。芸能人というだけあって、毎日清潔にしてるんだなあ。
と、僕がそんな事を呑気に考えていると、ニャミさんは僕のそばに座って、また
僕のモノに口を近付けていって…
―――ちゅっ―――
唇でキスするみたいに、ニャミさんは僕のモノにそっと口付けた。そして、ふーっ、ふーって、
息を吹きかけていく。
「うっ!ニャミ、さぁん…」
さっき出したばっかりなのに、僕のモノはまた固くなって、どんどん上を向いていった。
「これで、準備OKだね」
そう言うとニャミさんは、僕のモノが再びしぼまないように、自分のしっぽを僕のモノに絡ませてきた。

下半身に当たるフワフワしたニャミさんのしっぽの気持ち良さに、僕は体が震えるのを感じた。
「…ダイキくん」
いきなり僕の目の前に、ニャミさんの顔があらわれた。でも、さっきと違って、
ニャミさんは少し緊張した顔つきをしていた。
「今から、『もっと気持ちいいこと』をするんだけど、これから言う約束を守ってほしいんだ」
約束って、何かな?難しいことだったら嫌だなあ…。
でも、僕の顔を見て、ニャミさんはまた笑顔になると、続けて言った。
「ふふっ、心配しなくてもいいよ。約束っていっても一つだけ。
 『今からやることを、途中でやめないでほしい』ってことなの」
うっ…、『途中でやめないでほしい』って…、何か僕、責任重大かも。
でも、僕はともかくニャミさんが『気持ち良く』なれるんだったら、約束を守ったほうが良さそうだ。
そう思った僕は、ニャミさんの言葉にこっくりとうなずいた。
「じゃあ、行くよ…」
ニャミさんはしっぽを僕のモノから解くと、僕の腰の上でまたがるようにして立った。
彼女のピンク色の割れ目が見えて、僕は恥ずかしくて目をそらしてしまったけど、
自分のモノはますます固くなっていってしまう。
そんな僕の様子を見ながら、ニャミさんはゆっくりと僕の上に覆いかぶさってきた。

―――ちゅくっ…―――
腰の辺りから聞こえてきた水音と、僕の頭の中を電撃みたいな感覚が駆け巡ったのがほとんど同時だった。
(僕のが…、ニャミさんの体の中にッ…!!)
彼女の割れ目は、まるでご飯を飲み込むみたいに僕のモノを中へ中へと入れていった。
「ダイキくん…、ハアッ、どう…?」
くちゃっ、にちゃっ、と水音が聞こえる中で、ニャミさんは僕に囁くように尋ねた。
「はい…、すごく…ウッ、気持ちいいです…ッ!」
ニャミさんの割れ目のなかはとっても暖かくて、柔らかくて…、
僕は確かに、さっき以上の気持ち良さを感じていた。ニャミさんの方も、体の中に
入ってきた僕のモノの感触を味わってるみたいだった。
「ねえ、ダイキくん…、もっと奥にきて…」
ニャミさんの言葉に、僕はそーっと、そーっと、自分のモノを中へ入れていった。

その時だった。
「うっ!」
さっきまであんなに落ち着いてたニャミさんが、いきなり体をピクンとのけぞらせたのだ。
「ニャ、ニャミさん!?」
あわてて腰を動かすのをやめる。ニャミさんは険しい顔をして、ハァハァと息をしていた。
「…だ、だいじょうぶだから、続けて…」
どう見ても大丈夫そうじゃなかったけど、彼女がそう言うんだからやめないということはできない。
僕はニャミさんを心配しつつも、また奥の方まで腰を進めはじめた。
―――ズズッ、ズッ―――
ゆっくりと、僕は自分のモノをニャミさんの割れ目の奥へと入れていく。
奥にいくにつれてだんだん窮屈になっていって、先っぽが何かにあたる感触が…
「ひゃうッ!」
「わぁっ!」
今度は大声を上げてさっきよりも強く体をのけぞらせたニャミさん。あまりに突然のことに、
僕は思わず自分のモノを割れ目の中から抜いてしまった。
ズルッ、という音がニャミさんの大事なところからするのが聞こえた。

それからまた、ニャミさんは肩を震わせて荒い息をしていたけど、ようやく落ち着いたのか
今度は僕の方を泣きそうな目で、すがるように見つめてきた。
「やめちゃ…、ヤダぁ…」
その潤んだ瞳に僕はまたドキッとしてしまった。
「でっ、でも、ニャミさん、すごく痛そうだったし、これ以上やったらニャミさんの方が」
「いいの!やって!」
しどろもどろになって説明する僕を、ニャミさんは一気にさえぎった。
「…ニャミさん?」
「ダイキくんにしてもらえるんだったら、あたし、どんなに痛くてもいいから…」
そう言うと、ニャミさんは真っ赤になってうつむいてしまった。

僕はそんな彼女を、ただ呆然と見つめていた。
(ニャミさん…、僕なんかのことを、そんなにまで思ってくれてるなんて…。なのに、なのに僕は…)
だんだんと、僕の心の中に、『ニャミさんの気持ちに答えなきゃ!』っていう気持ちが広がっていった。
気が付くと、僕はニャミさんを力いっぱい抱き締めていた。
「わわっ、ちょっ、ダイキくん…」
「ニャミさん、僕、嬉しいです…」
緊張して僕の体は震えてたけど、それでも僕は自分の気持ちをニャミさんに伝えようとした。
「僕、こんなに弱虫で、情けなくて、頼りないのに、ニャミさんは僕のことをすごく思っててくれて
それに、あんなに『気持ちいい』ことを教えてくれて…」
僕の言葉をニャミさんは黙って聞いている。でも、彼女の体温が、少し上がったような気がした。
「でも、気付いたら僕、ニャミさんのために何にもしてなくて…。
だから何とかして、ニャミさんの気持ちに答えたいんです」
そして僕は、今度こそニャミさんをまっすぐに見つめて言った。
「ニャミさん。次は絶対に途中でやめません。だから、もう一回お願いします」
そう言った僕の顔を、今度はニャミさんの方が呆然として見つめていたけど、彼女はすぐに
輝くような笑顔になって、
「そんなの…、OKに決まってるじゃん」
そう言って、しぼんでしまった僕のモノを手で擦りながら、ペロペロと舐めはじめた。

さっきよりもねっとりとしたニャミさんの舌の動きのおかげで、僕のモノが
硬くなるのにそんなに時間はかからなかった。
「ううっ、ニャミさん…、何か、さっきより…」
「だってだって、早くやって欲しいんだもん☆」
ニャミさん、明らかに楽しんでる…。痛いのが楽しみにできるなんて、さすが大物だ。
一方僕は、さっきあんなに格好いいことを言ったのに、また不安な気持ちになってきていた。
でも、彼女の楽しそうな様子に、少し緊張がとれたっていうのも本当のことだった。
「よし、これで準備OK!」
完全に硬くなった僕のモノの先端を、ちょんっと指で触るニャミさん。
それに答えるみたいに、僕のモノがひくん、と跳ねた。
「こっちの方も…、もう準備OKだしね」
そう言いながら、ニャミさんは自分の大事な所をちらりと見た。
彼女の割れ目からは、オシッコみたいなのがいっぱいあふれ出てきている。
「も、もし痛すぎたら、思いっ切りぶってもいいですから…」
不安でどもりながら僕が言うと、ニャミさんはくすっと笑って、大丈夫だよと言ってくれた。
「じゃあ、いきますね…」
そう言うと、僕は自分のモノを割れ目の中に差し込んでいった。
―――つぷっ…―――
「あっ…、ダイキくんの熱いのが、入ってくるよお…」
僕の上に覆いかぶさりながら、切なそうにニャミさんが声を漏らした。
少し僕が体を動かしただけで、下半身からはくちゅくちゅといやらしい音がして、
その音に僕もニャミさんも顔を真っ赤にしてしまっていた。

「あうっ!」
「!!」
突然ニャミさんの体がピクリと跳ねた。ついに奥の所までやって来たのだ。
さっきはここでやめてしまっていたけど、今度はもうやめるつもりは無かった。
だって、そうしないとニャミさんに今までのお礼ができないもの。

「ダイキ、くん…。ハアッ、ハアッ、来て…。あたしの『初めて』、ハアッ、受け取って…」
ニャミさんの言葉に、僕はとうとう覚悟を決めた。
ゆっくり、できるだけ優しく、痛くないように、そーっと腰を進めていく。
「ハウッ…!クッ…!」
僕に強く抱きついて、声を出さないように必死で我慢しているニャミさん。
彼女のしっぽは、まるでアンテナみたいにピーンと立ってしまっていた。
僕の方だって、気持ち良すぎて気が変になりそうだったのに、いつの間にか
右手でニャミさんの耳をくにくにと撫でていた。
「ニャミさん…、これなら、ハアッ…、楽でしょう…?」
「ウッ…、ダイキ、くん…」
「このまま…、いっちゃいます、ね…」
「やっ、あん…、気持ちいい、よ…」
僕はそのまま、ニャミさんの体の深いところまでモノを進めていった。

そして、何か膜みたいなのがある所まで来た。
「お願い、破って…」
ニャミさんが息も絶え絶えに言ってくる。
もう声を出す余裕さえない僕は、そのまま一気に膜を突き破った。
―――バリッ―――
そんな感触がしたかと思うと、僕のモノは信じられないくらい深くニャミさんの
割れ目の中に入ってしまった。
「やっ、あぁぁーーーーっ!」
体をこれ以上ないぐらいにのけぞらせたニャミさん。
それと同時に、ニャミさんの大事な部分が僕のモノをかなり強い力で『ぎゅうううう』っと締め上げる。
「あはぁっ!ニャミさんっ…!僕、僕ぅっ…!」
柔らかいものに自分のモノ全体を揉まれて、僕はさっきみたいにオシッコがしたくなってきた。
だけどあまりの気持ち良さに、言葉を続けることができない。
それでも、ニャミさんは最後の力を振り絞って言ってくれた。
「いいよっ…!くはぁっ…、ダイキ、くん…、ひうっ…、いっぱい、いっぱい…、
我慢、しないで…、やぁっ、あたしの中に、出してぇっ…!」
もうその時、僕は我慢の限界だった。
「ニャッ、ニャミさぁぁーん!」
大きな声を上げて、僕はニャミさんの体の中に、『オシッコ』をいっぱい出していた。

「んっ…、んん…?」

ふと、僕は目を覚ました。どうやらあの後、僕もニャミさんも気を失ってしまってたみたいだ。
「あのまま、寝ちゃってたんだな…」
そのうち意識がはっきりしてくると、僕は自分のモノを彼女の割れ目の中に
入れっぱなしだったことに気付いた。
もちろんこのままにしてもおけないので、僕はニャミさんを起こさないように、
割れ目からモノを引き抜いていった。
―――にちゃっ、…ズルッ―――
ようやく割れ目からモノを出して、僕は大きくため息をついた。
ニャミさんの方はというと、すぅすぅと気持ち良さそうに眠っている。

その時、僕はあることに気付いた。
「これって…、血?」
ニャミさんの下半身の辺りに、少し赤い何かがついていたのだ。
慌てて自分のモノも見てみたが、やっぱりそこにも血のようなものがついていた。
だけどあの時、僕は自分のモノから血が出たなんていう感じは全然しなかったし、
実際に見ても傷がついているようには見えなかった。となると、これは誰の血…?
(――まさか)
僕は急に不安な気持ちになった。ひょっとしてニャミさん、自分が血を流して
いることを知っていながら、あえてそれを僕に言わなかったんだろうか。
「そんな、ニャミ、さん…」
目の前でニャミさんは何事もなかったかのように寝ている。
だけど、ニャミさんはあの時とっても辛かったに違いない。
それを僕は知らないまま、ニャミさんを傷つけてしまっていたんだ。
「ヒック、グスッ…」
悪いことをしてしまったという罪悪感と一緒に、そんな健気すぎるニャミさんに
申し訳なくて、僕は一人泣きだしてしまった。
男の子は泣いちゃダメ、って誰かが言ってたけど、これはもう止めるに止められなかった。

僕の泣き声のせいだったんだろうか、その時、ニャミさんが目を覚ました。
「ふにゃあぁぁ、寝ちゃってたのか。ダイキくんおはよ……、って、え?」
泣いてる僕を見て、動揺しているニャミさん。
「ダ、ダイキくん!?どうしたの!?」
慌ててニャミさんは、心配そうに僕の顔を覗き込んだ。
その様子に、僕はますます涙を抑えられなくなってしまう。
「ニャミ、さぁん…ヒック、…血…、グスッ、僕の、せいでッ…!」
それ以上言葉が続かなかった。
ニャミさんはそんな僕を困った顔で見つめていたが、自分の下半身に血が
ついているのを見て、何があったのかを理解したみたいだった。

急に僕は、ぎゅうっと抱き締められるのを感じた。
あまりにいきなりのことだったので、僕はびっくりして、泣いていることも
忘れてしまうほどだった。
「ダイキくん…。ありがとう、心配してくれて…」
僕を強く抱き締めながら、静かにニャミさんが言う。
僕の悲しい気持ちを癒していくかのように、彼女の手としっぽが、ゆっくりと背中を撫でていく。
なんだか暖かくて、気持ちいいな…。
「あたし、嬉しいよ。ダイキくんみたいな子と『キモチイイこと』できて」
「で、でもニャミさん、その血…。痛かったんじゃ…」
「ううん、大丈夫。ダイキくんがすっごく優しくしてくれて、全然痛くなかったし」
そう言って、ニャミさんは僕の顔を見つめて、ニカッと笑った。
「それに、ダイキくんにだったら、どんなことされても大丈夫だって思ってたもん」
その言葉を聞いた瞬間、僕は大声を上げてニャミさんの腕の中で泣いていた。
でも、それは悲しかったからじゃない。
ニャミさんの優しさ、温かさが身にしみて、嬉しかったんだ。
(ニャミさんに会えて、本当に良かった…)

いつしか、僕たちのテントの中には朝日が差し込んできていた。




その後、ニャミさんはいつもと変わらない様子で僕やリンちゃんたちと
朝ご飯を食べて、普通に過ごしていた。
でも、時おりタイマーさんたちとすれ違うことがあっても、ニャミさんは彼と目を合わそうとも
しなかったし、むしろリンちゃんたちの方としゃべるようになっていった。
「へぇ〜、神様ってそんな風にして世界を作ってたんですねー」
「そうそう、あたしも初めて聞いたとき、『コイツ凄い!』って思ったもん」
何事もなかったみたいに、楽しそうにリンちゃんとおしゃべりするニャミさん。
一方リュータさんは、ゆうべ何かあったのかあざだらけになって、黙ったままご飯を食べていた。

そうして、いよいよキャンプも終わりが近づいてきた。
いろいろあったなぁ…、そんなことを考えながら、僕たちはテントの中をきれいにしていく。
そして、片付けが終わると、ニャミさんが僕に何か差し出してきた。
「ニャミさん、これは…?」
「ゆうべ、素敵な思い出をくれたお礼」
そう言われて貰ったのは、緑色のポップくんのキーホルダーだった。
僕がそれを受け取ると、ニャミさんはまた何かを見せてきた。
「ふふっ、これでお揃いだね」
見ると、彼女の手にはもう一個緑色ポップくんのキーホルダーがあった。
「あっ、ありがとう、ございます…」
何だか恥ずかしくて、ドギマギしながらお礼を言う僕。
ニャミさんはそんな僕の手を、優しく握ってくれた。
「どういたしまして、新しい『ダーリン』♪」
ますます僕は顔が赤くなっていくのを感じた…。

「でねでね、その時ミミさんが凄い恐い顔して林から出てきて、リュータさんを
引っ張ってっちゃったの。とっても怖かったー!」
キャンプが終わり、僕はリンちゃんやハリーと一緒に家に向かって歩いていた。
「うわー、それは大変だったね」
「うん。で、リュータさんあっちこっちケガして帰ってきて、
私が『どうしたんですか?』って聞いても答えてくれなくてね…」
リンちゃんの話はまだまだ終わらない。よっぽど楽しかったんだろうなあ…。
まあ、僕の方だってある意味かなり『貴重』だったんだけど。
でもあんなこと、タイマーさんに知られたら…、と思うと、僕は今度は背筋が少し寒くなるのを感じた。
「あっ、そうだダイキくん」
ふと、リンちゃんが思い出したように言った。
「何?」
「ダイキくん、『すわっぴんぐ』って言葉知ってる?」
『すわっぴんぐ』?そんなの初めて聞いた言葉だ。
「うーん、知らないなぁ…。何で?」
「ちょうど帰るときに、神様がニヤニヤしながら私の所にやってきて、
『どうだったか?俺の計画した「すわっぴんぐ・キャンプ」は』って聞いてきたの」
それで、『すわっぴんぐ』って何ですか、ってリンちゃんが聞くと、神様は相変わらず
ニヤニヤしながら去っていったらしい。本当、神様ってこれだからよく分かんないや。
「でもさリンちゃん、キャンプ楽しかったし、そんなの気にしなくてもいいんじゃない?」
僕がそう言うと、リンちゃんも納得したみたいで、
「うん、そうだよね。面白かったし。また一緒に行こうね!」
そう言って、僕らは笑い合った。

だけどこの時まだ、僕はこれからやってくるいつもと違う毎日のことなんて、
全然知る由もなかったんだ…。

              (終わり)

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