ロキVSデイヴ


「あと半年かぁ。そろそろクリスマスの準備しないとだなー」
いい加減、ニートのような生活にも飽きてきたところだ。
でも広々とした原っぱでゴロゴロしてるのも悪くないんだよなー。
「準備とは何だ、赤っパナ」
唐突だね、っていうかそれはオレにとっては褒め言葉です。
「他人の名前くらい覚えろよー。トモダチなくすぜー」
「それなら貴様も、しゃんと起きて会話しろ。相手に対して失礼だ」
なるほど。
日向ぼっこを始めてからずっと閉じていた瞼を開く。
「あー」
仰向けになっていたので、モロに太陽の光が目に入る。
たまらず横を向くと、やーらかいものにぶつかった。
……遠くない未来に襲ってくる衝撃に備えつつ、視界のピントを合わせ……真っ先に見えたもの。

「白」
「死ね」
先程までやーらかかったとは思えないその足が、オレの体を一回転させる。縦に。
くるくるーまーわーるー

「オレが言ったのは服の色だってば、ロキさんよー」
「……そうか、てっきり下g……悪かったな」
何か言いかけたなー。
深く追求したらもう一回転しそうだから、やめておく。

「デイヴ、トナカイの貴様がクリスマスに向けて準備することなどあるのか?」
水場で顔を洗い、すっきりしたところでロキが訊いてくる。
「そりゃあるさ」
「興味深い。聞かせろ」
「今年もオレがソリに乗るために、サンタのおっさんを罠にはめる準備」
ピタゴラスイッチも真っ青な巧妙な仕掛けだぜと続けると、相手は呆れたように肩をすくめてみせた。

6月下旬、暦の上では初夏だ。
それでも日差しが刺すように熱いので、オレ達は日陰に移る。

「そんなわけだから、オレも忙しくなるわけよー」
「……まぁ、なんだ。頑張れ」
ロキは呆れ顔だけど、こっちは割と真剣なんだぜー。
「ところで、デイヴに尋ねたいことがある」
「んー?」
オレに何か訊きたくて会いに来たのか。
……急に挙動が不審になったぞ。
妙にそわそわしたり、顔が赤くなったり。
ブチブチっておいおい、手近な花とか抜くなよー。

「その……魔女には、クリスマスプレゼントは……届かないのか?」
「へ?」
「去年のクリスマスイヴにだな、その、来客があると思って、い、いろいろ準備したんだが……」
「つーかロキさん、おいくつでしたっけプヘッ!」

くるくるーまーわーるー
それはもういいって。

「料理も結局、冷めてしまって……やっぱり魔女にはクリスマスプレゼントは届かない、のか?」
そうですねー。
少なくとも、いたいけなトナカイをグーで殴るお方にはムリだと思いますよー。
むしろ今年も駄目そうですよー。
と、様々な言葉を飲み込みつつ、
「まぁ、『魔女』って良い子の正反対みたいなモンだし」
「っ!……そ、そうか」

結局、その後無言のままロキは去っていった。
随分落ち込んでたなー。
オレが悪いわけじゃないんだけど――むしろ歳のせいだと言えそうだけど――良心が痛む。

オレは木陰に座り込み、ゆっくり流れる雲を数える。
5、6、7……
あの雲アイスみたいで美味しそうだな。
あそこの雲の形は……
白……いやいや。

200近く数えたところで、ふと思いついた。

ポッパーズに貰った「ロキちゃんち最短マップ」を手に、オレはうっそうとした森を進んでいった。
やがて見えてくる一軒の小屋。
ここまで来るのに何時間も歩いた……プレゼントが届かないのは地理のせいじゃないか?
よし……表札に「ロキ」って書いてあるし、間違いないな。
随分ファンシーな表札に見えるけどなー。魔女さんよ。
呼び鈴らしきものがないので、軽くノックしてみる。

knock knock!

途端に何かが割れる音やら、重いものを落としたような振動、何者かの悲鳴が立て続けに聞こえてくる。
「取り込み中かなー?」
その瞬間、入り口の扉が威勢良く開いた。
どう見ても「横にスライドさせる」タイプの扉なんだけど。

「……待たせたな」
肩で息をするロキが言う。
服の裾がほつれたり、カレーがついてたり、一部は今現在燃えているけど、あえて気にしないことにする。
「いや全然」
「久方ぶりの客人だ、デイヴ」
「あーうん、多分そうだと思った」

なんでも、ロキは客を待たせないように、最速で応対に出るらしい。
気がきいてると言っていいのかどうか。
そんな目が血走っているロキに、オレは用意しておいた包みを差し出す。

「メリー……なんでもいいや。悪い子のロキにプレゼントだ!」
「ぷれ、ぜんと?」
ロキの目が、一瞬大きくなる。
「ほら、今日ってクリスマスの正反対の日じゃん。だから良い子の正反対の、悪い子の家にプレゼントをってね」

差し出された包みをおずおずと受け取り、だけどロキはそっぽを向いてしまった。
げ、余計なことしちゃったか。
「……ぁ」
ロキが小声で呟く。
「……ぁ、あり」
「あり?」
「……あり、あり……」
お礼を言われるかと思った次の瞬間。




「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!」
ロキの両の拳から怒涛の連打が放たれた!
「アリーヴェデルチ!(さよならだ!)」

ドォーーーン!


オレ、そっちのほう詳しくないけど……
これが「ツンデレ」ってやつなのか?
ははは、ロキも顔を赤らめているし、きっとこれも照れ隠しってやつなのさ。
きっとそうさ……

ちなみに、オレがロキに送ったのは「銘店百選レトルトカレー詰め合わせ」。
我ながらグッドなアイデアだと思ったんだけど……。
怪我が治って再会したその瞬間、みたびオレの体は縦回転するハメになった。

螺旋のようにくるくるーまわる
だからもういいって。

終わり

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