六の上で、アン子は両手で顔を覆っている。その間から歪められた口元が見え、生温かい液体がぽろぽろと流れ出ていた。アン子は悲しさの余り、泣き出してしまったのだ。
精悍な顔立ちの六の表情に、戸惑いが滲む。かと言って、どう接したら良いのか分からない。それ程、彼は女に対して疎く、他人との間に隔たりを築いていたのだ。
どうしようもなくなり、六は震える手でアン子をぎゅ、と抱き寄せた。彼女が望んでいる事だ、仕方がない――六はそのまま、蝶々結びされている黄色の帯に手をかける。アン子はしゃくりあげていたものの、泣く事をやめていた。
「愛でてもらう事を、オマエは望んでいるんだろう」
アン子は黙ったきり、されるままになっていた。帯が解けるのを、感覚の何処かで感じていた。
「これっきり、だからな」
「六さん……」
愛しい人に、愛してもらえる。
アン子はこの上ない幸せを感じ、六の上体に身を委ねたまま、彼に一枚ずつ衣類を取り除かれていた。

「ふ、ゃ…あ……」
アン子は六の腹を跨いで膝を付いて坐り、一糸纏わぬ姿で、彼に『一度だけ』愛してもらっている。
六は顔を真っ赤に染めたまま、露になった乳房に吸い付いている。無愛想で、まるで人を寄せ付けようとしなかった六が、乳飲み子の様に乳首に吸い付いているのだと思うと、アン子は一層彼がいとおしい存在に思えた。
「も、もう片っぽも弄ってぇ……やンッ、ひ、はぁあ……」
応えるが如く、もう片方の乳首に手が伸ばされる。血豆と傷だらけの大きな手が、膨らみかけの乳房に飾り付けられた突起を弄り始める。摘んでぐりぐり捏ね繰り回し、アン子に快楽を送り込む。
「っひ!噛んじゃやンッ!おかしくなっちゃうぅっ!!」
乳首を甘噛みされ、アン子の白い体がびくびく仰け反る。桃色に染め上げた頬に流れていた汗が飛び散り、月光を受けてきらきら輝いた。六は少し間を置いてから、胸元から顔を離した。

「…股が濡れてるぞ、どうしたらそんなになるんだよ」
「いやぁん、イジワルぅ……ひゃあ…ぁん…」
愛液が滲み出している陰部の割れ目に指を這わされ、アン子は六の肩に凭れかかって、快楽に打ち震えた。女体を知らない六は、そこが女の性感帯なのだと分かり、一層激しく責め立てる。白い裸体が、陸に打ち上げられた魚の様に、仰け反り、躍った。
「ああァんッ!それらめぇ!らめなのぉっ……!」
人差し指と中指を挿し込まれたまま、親指で陰核を押し込まれ、アン子は相手の上体にしがみ付いて泣き叫ぶ。愛液が一気に溢れ出て、内股を伝い、愛撫をする六の手までも濡らしていく。
もっと激しく責めてもらう事を望んだのか、アン子は六の手首を掴んで固定し、自ら腰を使い始めた。上下する度にぐちゅぐちゅ粘着質な音が響き、乳房が忙しなく揺れ、長い髪が不規則に躍った。
「気持ち良いよぉっ!やぁん!」
限界が近いのか、アン子はより一層腰を強く打ち付ける。ごつごつした二本の指が狭い器官の奥深くまで届き、親指が陰核を擦り、性器全体が火を付けられたかの様に熱くなっていく。
「もうらめぇへっ!イク…っ、イッちゃうー……!!」
次の瞬間、六は右手の指が肉の壁で締め付けられるのを感じた。それと同時に、アン子は半開きの口から涎を垂れ流し、全身を電流が走ったかの如く痙攣させて、呆気なく果てた。

「気が済んだか?」
問いかけたが、返事はない。六は指を抜き、未だ呆然としているアン子を抱き上げ、割れ物を扱うかの様にゆっくり床に降ろす。火照っている体は力なく横たわり、涙で潤んだ瞳は焦点が合っていない。六の指が荒らした秘部は出血し、透明な粘液と混じって内股を濡らしていた。
――ちょっとやり過ぎたか。
実際はアン子が自ら望んでやった事だったが、六は心の中で深く反省した。それから彼は、横たわっているアン子の上に覆い被さる様にして、そっと口付けした。途端に細い二本の腕が彼を捕らえ、結果、深い接吻を長くする事になる。
「はァ……」
ようやく互いが離れた時、つぅ、と銀の糸が伸び、そして呆気なくぷつりと切れた。

「股の方は……痛くないか?」
「う、うん。ちょっとひりひりしてるけど」
自分がやった事に罪悪感を感じる為か、六はまともにアン子の顔を見る事が出来ない。終いには会話をする事すら罪な気がしてきて、彼は口を噤んだまま、起き上がる。アン子も、彼から少し後退りして、起き上がった。沈黙だけが続く。
「…今度はアン子が六さんの事、気持ち良くしてあげるね?」
静寂が破られた瞬間、六ははっとなって、アン子を見た。
「おっ、おい…」
六が制するより前に、アン子は股を少し開いて坐っている彼の褌の縛めを解いた。
薄い布がはらりと床に落ち、勃起しかけている男性器が露になる。それは主の頭髪より濃い青の陰毛が生えていたものの、亀頭部はすっぽり包皮に覆われていた。

「…可愛い……」
「…ッ」
六は目を伏せて、ぷい、とそっぽを向く。アン子は苦笑した。そのまま陰茎の根元を摘んで、口を近付ける。
「…ンっ……」
鼻にかかった甘い声が聞こえる。ちゅく、と先を吸ってやると、開いたままの足がびく、と震えた。
「ん…ぴちゃっ……ちゅぷ、ンン、…んふぅ……」
棒付き飴を舐めるかの様に、アン子は六の自身に口を付ける。先を摘んだまま裏筋を舐め上げたり、根元を強く吸ったりして、六を高みへと追いやっていく。
自らが嫌っている煩悩に、完全に飲まれまいと我慢していたものの、鞴でされる様に止めどなく送られてくる快楽に、いつしか六は支配されていた。上気した顔に汗をうっすらと浮かばせて、熱を帯びた体を弓形にさせている。

程なくして、陰茎が完全に勃起し、包皮に包まれていた亀頭が露になる。それは淫水焼けのしていない証拠として綺麗な薄桃色を纏っていて、六が未だかつて女を抱いた事がないと言う事を証明していた。勿論、アン子にはそれが分からなかったが。
「ンひっ、あっ、ぅあァ……」
貼り付いていた恥垢をこそがれて、露になった敏感な部分にぬめぬめとした感触が走り、薄く盛り上がった腹筋がびくびく痙攣した。アン子は反り返っている陰茎を、今度は奥深くまで銜え込み、睾丸を指先で躍らせ始める。先走りと唾液とがじゅぶ、と音を立てて、混ざり合った。
「んぅ…じゅぷ、じゅぷっ……ちゅく…んむぅ……」
「い、あァ!やめっ、やっ……んぅううッ――!!」
陰茎全体を吸い上げられる度に、六は頤までも反らして、乱れ叫んだ。先走りが次から次へと溢れ、アン子の口腔を塩辛い味で満たし、遂には彼女の口の端から垂れ始めるまでになった。
六はアン子の髪を掴んで、限界が近いのか、腰をがくがく震わせている。血の色をした瞳は、快楽でとろとろになっている。

「…っ、アン子っ……俺っ…もうっ…!!うぅ…!」
「ぢゅるるっ……ぷぁ…いいよ…。アン子の口にいっぱい出して……」
「っひ!あっ!うあァッ、あああッ!!」
熱い吐息が絡み付き、開け切った鈴口から白濁を勢い良く吐き出し、六は果てた。長い間断っていた恍惚が脳髄を痺れさせ、目の前で虹が玉となって弾ける。
アン子は大量に噴き出た精液を多少顔面で受けてしまったものの、何とか口腔で受け止め、それからごくり、と音を立てて飲み込んだ。

「…ッ…」
性器の先端から、愛らしげな口が遠ざかる。放射したものの、陰茎は未だ勃起したままで、唾液と精液でぬらぬらと月光を照らし返していた。アン子は顔にかかった精液を指で拭い、自分の口に運ぶ。その仕草がかつて見なかった程妖艶で、六は胸を更に高鳴らせる事になる。
「六さん…今度は一緒に気持ち良く、なろ」
そう言って、アン子は熱い六の自身を入り口に宛がおうと、華奢な手を伸ばす。六は鈍っている思考で、これからアン子がしようといている事を何とか把握し、それを阻止する為に彼女の手を掴む。

「…分かってんのか?」
六はようやっとの事で言葉を発する。相手の手を握る手に、無意識的に力が入る。
「どうしようも出来ない事に、なっちまうかもしんないんだぞ」
「関係ないよ」
アン子はきっぱり告げる。強い意志が彼女の瞳に、台詞に込められていた。
「アン子、六さんだったら『どうされてもいい』って言ったでしょ?六さんがアン子と一緒にいてくれなくっても、もし…赤ちゃんが出来ちゃっても、アン子は六さんの事をずっとずっと想ってるし、赤ちゃんだってちゃんと育てるよ。
アン子は、六さんの事を……愛してるから…」
「アン子…」
六は手を握るのではなく、繋ぐ形になって、アン子をじっと見た。睨むのではなく、切なる愛で、じっと。

「…そうまで言うのなら、俺は…オマエを受け入れよう。
来な、アン子」

「んうっ…いた、い……あっ、あっ……」
愛しい者の肩に縋って、アン子はゆっくりと腰を下ろしていく。解されたものの、まだ狭い膣内を無理矢理押し広げられ、アン子はその痛みに涙を流す。六はそんな彼女の震える体を抱き寄せて、離れぬ様、腕を回して抱き締めた。
「いぁっ!!」
根元まで入った途端、処女膜がぶつりと切れ、アン子に激痛をもたらした。流れ出た血が、二人の色の違う肌を赤く濡らしていく。
「もう…やめるか…」
「いいのっ…ひっく……このまま、続けて……」
アン子は六の背中に腕を回して、より彼に密着する。互いの鼓動が、直接的に伝わる。

「ん…ぁ…」
腰を動かし始め、六は熱っぽい吐息を漏らす。狭い器官はきゅうぅ、と自身を締め付け、動きづらい。
それでも腰を小刻みに動かすと、愛液が滲み出て、滑りが良くなる。すると不思議な事にアン子が感じていた痛みが遠のき、代わって快楽が彼女の体を駆け巡っていく。
「あっ、あっ…あっ…ろ、く…さァ…」
舌が思う様に回らず、言葉を紡ぐ事が出来ない。だが、それこそが、今の二人にとっての最良の会話とも言えた。
粘液が混ざり合い、性器同士が擦れて、ちゅぷちゅぷと卑猥な音が聞こえ始める。それが否応なしに耳に入り、興奮し、快楽を得る媚薬となる。
「ひぁっ…!あっ、熱いよぉ……あぁん!」
摩擦の為か、それとも六の性器の熱か――アン子は膣内を蕩ける程に熱され、髪を振り乱し、淫らなまでに喘ぐ。

「いゃっ!やんっ!あァんッ!!変に、なっちゃう!!きゃん!」
「はっ…くっ、うぁ……!」
六は腰を激しく打ち振り、亀頭を肉の壁に擦り付け、より一層熱をもたらす。肉が打ち付け合う乾いた音がが続け様に鳴り、古びた板がぎしぎしと軋む。
「ろ、くさんっ!もうっ…アン子もう…!!ひあぁぁ…!!」
六は言葉で応えなかったが、彼も限界が近いのか、アン子を高く高く突き上げる。
子宮まで届くのではないかと思わせる激しい突きに、アン子は目を固く瞑り、六を抱き締める腕にも力が入る。
「もうらめっ!ひぁっ、あああぁぁぁぁんっっ!!」
「っぐ!あッ!うああぁぁッ!!」
先にアン子が絶頂を迎え、それに伴い自身を締め付けられた六が、後れて達する。
嬌声が重なり、アン子の中に白い飛沫が叩き付けられた。





エピローグ


「…………」
ふと気が付くと、辺りは強い光で白々と映し出されていた。
夜が終わり、朝がやってきたのだ。暑い一日の、始まりが。
アン子はしょぼしょぼした目を擦りつつ、気だるそうに起き上がる。
知らず知らずの内に眠っている間に、六が着せてくれたのか、アン子は忍者服に身を包まれていた。だが、相変わらず乱暴かつ雑で、黄色い帯がきつく締められている。コルセットを付けている様な息苦しさに耐え切れず、結び直そうと背に手を回すと、固結びで結ばれていた。

「あ、あれ…六、さん…?」
やっとの事で帯を結び直すと、アン子は六が何処にもいない事に気が付いた。
自分の想いを受け止めてくれた、愛しい人。そんな彼が、アン子が目覚める前に、何処かへ消えてしまったのだ。
――まだ、わたしはあなたの気持ちを聞いていないのに。
アン子はすくっと立ち上がる。既に黒い帯が解かれていた左足は、今は痛まない。歩ける。
アン子は神社から出ると、忍者特有の素早さで、瞬く間に竹薮の奥へと消えていった。

滝の音は昨日と変わらず、ごうごうと轟いている。
六は目を閉じたまま、流水が作り出す涼しい風を頬に感じ取る。アン子と初めて出会ったこの場所で、彼は何やら物思いに耽っている様で――何処となく寂しげに、独り佇んでいた。
彼女が目を覚ます前に、互いに辛い思いをせぬ様、発ったと言うのに。情けない事に、自分は彼女を想って、この場所へ戻ってきてしまった。
未練がましい。もうこれ以上誰かを愛さぬと、誰かを思い出さぬと、決めたばかりではないか。――六は心中で自分を叱咤し、やがて虚ろに目を開き、その場から立ち去ろうとした。
その時、遥か後方から気配を感じ、六は即座に振り向いた。程なくして、葉を茂らせている木々から、桃色が地面に着地した。

「ア、ン子…」
六は呟く様に、目の前の者の名を呼ぶ。アン子は息を切らせながらも六の側に近寄り、呆然としている彼の両手を取った。円らな瞳を潤ませて、優しく微笑む。
「会えて良かった」
「どこがだ。辛い思いをするだろうが」
突っ撥ねるかの様に、六はぶっきらぼうに言葉を返した。だが、返事を言うと同時に伏せられた目は、辛そうにぎゅっと瞑られている。藍色の睫毛が、微かに震えていた。
「オマエの事、一刻でも早く忘れて、修行に打ち込もうとしたのによ…どうした訳か、ここに来ちまったんだ。情けねェよな、俺」
そう言って、自嘲気味に笑ってみせる。ひどく虚しくなって、すぐに沈んだ表情になってしまう。アン子も切なげな表情を浮かべて、背けられた六の横顔を見る。

「剣と言を磨く為にも、俺ァ煩悩を断ち切って、鍛練を積む必要があるんだ。
それなのに、俺…どうしてもオマエの事ばっかし考えちまって……」
「……」
アン子は黙ったまま、六の顔を見つめている。
何処からともなく、少し強い風が吹き、木々がざざあっと騒ぎ出す。六はアン子の手をぎゅ、と握り、真っ直ぐな瞳で彼女を見た。
「俺…オマエの事が、……好きなんだ」
「…えっ……」
心臓がトクンと、一際強い鼓動を打った。風が勢いを弱めていく。

「一目惚れ、ってヤツかと思ってた。どうせすぐにそんな想い、消えるかと思ってた。
でもオマエといる内に、俺ァ心底…オマエの事を好きになっちまってた。
かつて情事に耽る事なんざしなかったが、オマエが相手だったから、俺、心の何処かでオマエの事を欲してたんだと思うんだ。だから昨日は…あんな真似を……」
「六、さん…」
「“さん”付けはよせ。俺はもう、そんな身分じゃねェんだ」
「……」
「…こんな俺でも、オマエは好いてくれるのか…?」
恥を忍び、心の内を全て晒け出して、六はアン子に告白した。
アン子の心に、もはや迷いなぞなかった。

「当然よ…わたしはどんな事があっても、六の事が…好き…大好き……」
風がぴたりと止んだ中、二人は抱き合い、どちらともなく、口付けを交わす――

「立派なくノ一になれよ、アン子」
「あなたも……元気でね、六」
再び風が森の中に吹き込んだ時、二つの影は違う方向へと別れていった。

それから数週間が経ち、見習い忍者達の卒業試験も無事終わった、ある日の事。
忍びの里の入り口には、ある少女の旅立ちを見送る為に、人集りが出来ていた。
「しっかりやるのよ、いつもあなたの事、お父さんと応援してるからね」
「うん、ありがとう…お母さん」
「未来のお婿さんと二人っきりの旅かぁ…羨ましー!」
「あんたおっちょこちょいなんだから、他の女に盗られない様、気を付けるのよぉ!」
「やめてよ、照れちゃうじゃない!それに、今回の旅は修行の一環なんだからねっ!」
「あ、あの、コレ…旅の途中で読んで下さい……」
「あら、ヨシ子の短編集!ありがとっ、ヨシオ君!」
「…にしてもぉ〜、ヨシ子って結局誰なのかしらね〜?」
「(ギクッ)」
「辛い旅になるじゃろうが…頑張るのじゃぞ」
「ありがとうございます、お師匠様!」
一人前の忍者になったアン子は、新調した黒い忍者服に身を包み、一回り大きくなった様に見えた。
大勢の人々が見守る中、彼女は後ろを振り向き振り向き、力いっぱい手を振って、忍びの里を後にした。


「六ぅ〜!会いたかった〜!!」
「!?アッ、アン子!?」
「あなたと一緒に旅をする為に忍びの里を出たの…って、六!?なんで逃げるのー!?」
こうして、一人前の忍者になったアン子は、恋人(?)である若き侍・六と珍道中を繰り広げる事になるのだが、
それはまた、次の機会に。

《終》

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