「嫌…嫌だ、怖い…ッく…!」
ムラサキは手にしたローターのリモコンを手の中で弄び、振動の強さを変化させながら桔梗を見つめていた。
そう離れているわけではない、けれど転がりでもしない限り後ろ手に縛られた手を伸ばしても届く距離ではない。
微妙な距離を取り、玩具から与えられる感覚に身を躍らせる桔梗を、満足気に見下ろしていた。
「もう、痛くは無いだろう?」
「ふ…ぁあ…ッ」
聞こえているのかどうかはわからなかったが、その声色からは少しずつ「痛みを堪えている」ような部分が消えていく。
「けど、まあイクのは無理だろうねえ」
「あ…ぅ」
ムラサキは小刻みに震える桔梗を見下ろし、ほくそえむ。
本当は今すぐにでも圧し掛かり、自分自身の指も使って桔梗を責めてやりたかった。
しかしそれでは自分の気持ちが静まらないであろうし、何よりこれは一つの機会でもある。
「アンタが一番良い所、アタシはちゃぁんとわかってるからね…」
普段抑えてきたものを、遠慮なく曝け出したい。
普段以上にもっと鳴かせてやりたい。
ムラサキは浴衣を乱しながら悶える桔梗を見つめながら、胸が高鳴っていくのを感じていた。

霞掛かる意識に蘇る記憶。
"一番良い所からはずらした"、ムラサキはそう言っていた。
「…ッく」
それは桔梗自身嫌でも理解できる事だった。
その振動は止む事無く桔梗に快感を送り続けるが、肝心の所には僅かにしか響いてこない。
そんなことが理解出来てしまうほど、ムラサキと肌を合わせたのだろうかと思うと顔が熱くなる。
「…さて、そのまんまじゃ辛いだろう?」
声が更に遠くなる。
恐らく、立ち上がったのだろう。
「…う…?」
体の内に響く振動は弱まっている。
微かに送られる快感が、少しずつ感覚を麻痺させて行く。
「は…ぁ」
しかし、微かだからこそ理性は堕ち切れない。
いっそ無理矢理にでも激しく乱された方が、感覚も意識も共に堕とされて楽かもしれないのに。

「じゃあ、次に行こうか」
カタン、と音がした。
それが何の音なのかは、全くわからない。
僅かに遠のいていた気配は再び近づいてくる。
その事自体には安心するのだが、ムラサキが良からぬ事を考えているのは想像に難くない。
「………何を、するつもり…だ」
いつの間にか、振動は止まっていた。
堕ちきらなかった理性は羞恥心を先程以上に湧き起こさせ、同時に反抗心を思い出させる。
「さあて、ねえ?」
その声と気配は、思わぬほどに近かった。
思わず身を引くより前に、唇を塞がれる。
「…んッ」
先程の強引なものとはうって変わった、柔らかく温かな口付け。
「ふ…ぅん」
柔らかく食まれ、舌を絡め取られ、頭の中に心地よい痺れが途切れ途切れに走る。
思わずそれを求めたくなるが、それではムラサキの意のままだ。
元より見えていない視界の先を、それ以上に拒むかの如く目をきつく閉じる。
それが、わかったのかどうか。
「まだ嫌がるかい? 桔梗」
「……」
唇を離し、余裕を含んだ声色で問うムラサキに、桔梗は答えない。
拘束されたままの足には、力が入らない。
余韻さえも薄れつつはあったが、未だ中に在るままの玩具が何時動き出さないとも限らず、それを思えば先程の感覚が思い出されてしまう。
声を零す程のものではないが、記憶と恐れは鮮明で強く、抵抗するよりも熱を上げていくだけだ。
「さて、じゃあこいつは外しちまおうかい」
カチャカチャと、何かを外す音。
少しずつ緩んでいく戒めと、熱を持った体に触れる冷たい金属の感触。
「く…」
今なら、逃れられるかもしれない、そう思った。
中に在る異物は未だ抜かれることは無い、それでも足が自由になったならと。
僅かでも抵抗するために、楽になっていく足を伸ばす。しかし、
「窮屈だったろう?」
「え…?」
そっと抱きしめられ、優しい声色で言われる。
その抱擁が余りに暖かく、桔梗は一瞬抵抗を忘れた。
それを見越し、ムラサキは秘所へ手を伸ばすと、入ったままであった異物を一気に引き抜く。
「は…ぅんッ!」
ずるり、と抜き出される感触。
それは僅かに残る力を留めていた最後の栓であったかのように、ただその行為だけで桔梗は下腹部から力も抜けて行ったかのような感覚を覚えた。

「は…はぁ…ッ」
「抵抗なんざさせてやら無いよ、さあ、今度は開いてもらうからね」
声は耳のすぐ後ろからした。
いつのまに後ろに回ったのだろうか、布団に程近い壁にもたれかかったムラサキは抱える様な格好で桔梗を捕らえていた。
「え…あ、何を」
「いいから、足を開きなさいな」
「な…ッ、何をする…!」
力の入らない足をばたつかせようとしてもその動きは酷く弱く、両足はムラサキの手で簡単に捕らえられてしまう。
後ろ手に縛られたままの拘束は解かれていない。
それ以上の抵抗をすることも出来ず、桔梗はムラサキが思うままに少しずつ足を開かされていく。
はしたなく厭らしい、そんな姿を正面から見られているわけではない。
それでも羞恥心は強く、桔梗の体温は見る見るうちに上がっていく。
「明かりをつけたくなるくらいだねえ、流石に今どく気はしないけどね」
「…ぅう」
頭の先から、足の先まで。
余す所無く熱は篭り、酷く熱い。
それ故に、
「…っあ!」
不意に首筋に触れた冷たい舌の感触に、全身が総毛立つ。
次いで片方の手が胸に触れ弄び始め、乳房を撫で回し、時折先端を擦る。
「ん…ぅ」
「可愛いねえ…本当に」
感度を刺激された後の体は敏感で、胸と首、耳への愛撫だけで頭が痺れた。
「そろそろこっちも、外すかい」
「……?」
桔梗が小さく首を傾げると同時に、なんの引っかかりも無くするりと、両手首を拘束していた布が解かれた。
「あ…?」
思わず落ちた腕で無意識の内に体を支えにかかったが、先程までの拘束の余韻である痺れと、与えられている快楽の影響で少しずつ力が抜け、ムラサキに寄りかかってしまいそうになる。
「いいよ、桔梗。力抜いて御覧なさいな」
「う…ッく」
「アンタは軽いし、心配するこたないよ、ホラ」
言って、ムラサキは桔梗が体を支えるために下へ付いていた右腕を取った。
「あ…っ」
当然バランスは崩され、桔梗はムラサキに寄りかかるように身を委ねる形になる。
「足、閉じたら承知しないよ」
言いながら、取った右手を胸に抱くように折り曲げ二の腕で押さえながら、
「……さ、乱れちまいな、桔梗」
「え…あ…っ、んんっ!」
そのまま下腹部へと手を伸ばし、桔梗の小さく膨れた芽を撫でた。
「あ、はあ…っ!」
思わず桔梗は取られた右手で身近なもの…ムラサキの着物を掴む。
それを確認したムラサキは不敵な笑みを浮かべると、更に手を伸ばして溢れ始めた蜜を掬いながら芽を摘む。
「ぃ…ぁあ…っ!」
何度も何度も、途切れる事無く掬っては塗りこみ、時に軽く引っかいてみせる。
「や…ぁっ、ムラサキ殿…!」
縋るように名を呼び、ずり落ちそうになる体をどうにか左手で支える。
ムラサキの着衣を掴む右手をそのまま口元に引き寄せ、自然と横を向いた顔はムラサキの豊かな胸に埋められていく。
「なんだい、桔梗」
「嫌だ…もう、止めて…」
「桔梗? これは御仕置なんだから、そういわれてやめるわけ無いだろう?」
「ぅう…っ、ぁあ…!」
ぐり、と強く芽を潰されながら撫で上げられる。
直後胸の先端と芽の先端を小刻みに引っかかれ、桔梗の下半身はがくがくと震え始めた。

何度も何度もそうして摺られている内に、頭の中が真っ白になっていく。
「ふぁ…う…」
「そろそろ、入れようかねえ?」
「あ…う」
段々意識は侵され、下腹部に広がっていく疼きがもどかしく感じられていく。
いつもなら、何も言わなくてもムラサキが桔梗の変化と願望を感じ取り事を進めるのに、今日はわざわざ確認を取る様に言ってくる。
「それとも、まだ早いかねえ…?」
耳元でムラサキが笑っているのがわかった。
もうわかってる筈なのに、あえてそんなことを言う。
だがそんなことをする理由は、ちゃんとわかっているのだ。
「さあ、どうしたい、桔梗…?」
「う…うう」
芽と胸を愛撫する手は止まらない。
視界を閉ざす布に、思わず溢れた涙が染み込む。

どうしたい、という問い。
それは、この行為の続きをどうするのかという問いと、

「アンタはアタシの傍に、居たくないかい?」

要らない不安と恐怖心、そして罪悪感に駆られて呟いた、あの言葉への。

ムラサキの着物を掴んでいた桔梗の手に、力が篭る。
下に伸ばされていたムラサキの手の動きが止まり、頬をなぞった。
快楽だけを求めて傍にいるわけではない、それは理解していた。
ムラサキは桔梗を心の底から愛している、だからこそあの発言に怒り、"仕置"と称して今こんな事をしている。
勿論それだけではないのだろう、ムラサキは桔梗よりはるかに大人で妖艶で、求めている事も多くは在った筈で。

それは、時折重ねた行為の中、どこかで感じ取ってしまっていた事だった。

少しだけ、罠に自ら飛び込んだ気分になった。
余計な一言を呟いて、彼女の抑制を壊してしまったかと。
けれど、そんな事とは関係なく。

「……私は」

罪悪感が全て消えたわけではない。
それでも、"今までここに居た理由"から、目を逸らすことは出来なかった。
彼女に抱かれる心地良さを、失うことも怖かった。

「ここに、居ても…」
「良いんだよ」

結局、全てがムラサキの言う通り。
子供の様な駄々を捏ね、思春期のような青い不安を抱きながらも、罪悪感だけでは拒みきれない甘い行為と温かな場所。
全て受け入れ、そして心のどこかで求めている何かを与えてくれるムラサキという女性の元から離れるなど、土台無理な話だったのだ。

桔梗は唇を噛み締めた。
俯き、小さくもしっかりと、その許可に安心したというように、頷いた。

「ぁ…んっ!」
胸に触れていた手が離れた、そう感じた瞬間、頬をなぞっていた指は再び下に伸びて芽を弾く。
「そう、それでいいのさ」
大分痺れも取れた手を口元へ運び、漏れ出る声を抑える。
「二度とそんな馬鹿な事考えるんじゃないよ、…そうでないと」
ムラサキの声のトーンが落ちる。
与えられる快楽に気を取られ、桔梗はそれに気づかない。
「また、こんな目にあうからね?」
くちり、と水音がして、ムラサキの指が濡れた割目に潜り込んだ。
「は、ぅん…っ!」
十分に濡れたそこは、ムラサキの細い指を易々と飲み込む。
「ぁ…っく、やっ…」
「嫌じゃないだろう? 中に欲しかったんでしょうに」
本心を抉り出さんとするかのように、指を折り曲げて中を摺る。
「ぅん…っ、はあ…ぁっ」
「…桔梗、もう許してもらえていると思っちゃ居ないだろうね」
「ぇ…あぅ…っ?」
ムラサキは桔梗の足を抱えていた手を、頭の後ろに回す。
そこには、未だ桔梗の視界を封じたままの布の結び目がある。
「アタシを怒らせたら、次はこんなもんじゃないからね。よぉく、覚えておくんだよ」
言って難なく結び目を解いて、それから手を離す。
桔梗の視界を封じていた布は、ついに落ちた。
「はぅ…っ」
口を塞がれていたわけではないのに、何故か大きく息をしてしまう。
視界は涙に濡れぼやけていたが、少しずつ少しずつ薄暗い室内を知覚しだし。

「よぉく、見ておくんだよ…?」

薄闇の中、乱れた浴衣に身を包み、ムラサキに抱かれ喘いでいる自分を映した。

「―――――-ッ!?」

思わず、手が今一度視界を閉ざそうと跳ね上がる。
しかしそれはムラサキの手によって捕らえられ、更に反射的に閉じかけた足は、
「閉じたら、酷いよ」
ムラサキの低い、たったその一言だけで、動きを封じ込まれた。

「…ぃ…嫌だ…ッ」
それだけ言うのが精一杯だった。
目を閉じ、顔を背けてムラサキに縋る。
「ムラサキ、殿…! 悪ふざけが過ぎる…っあぅ!」
一瞬快楽も何もかも忘れて、急上昇した体温に急き立てられるようにそう非難した桔梗だったが、ムラサキの容赦のない一突きで意識を引き摺り戻される。
「しっかり見ておけって言ったろう? 今更何言ってんだい」
腕を捕らえた手を離し、ムラサキは桔梗の顎を掴む。
「可愛いじゃないかい、もっと乱れて良いんだよ?」
言いながら、顔をぐいと上げさせ目尻を舐める。
「さあ、よぉく、見るんだよ」
「嫌…だ、あ…はんっ」
聞く耳持たずといった感じで中を突き、顔を前へと向かせる。
桔梗はただひたすらに固く目を閉じ、抵抗した。
「……目を開けるんだよ、桔梗」
その言葉は余りに低く、暗く…そして何故か抵抗する心を急速に萎えさせる強さを持って、桔梗の耳に響いた。
「は…ぅ」
心が悲鳴を上げていた、嫌だという心と、開かなければ恐ろしいと思う心とがぶつかり合い…結果瞳は再び少しずつ、ゆっくりと開いていった。
視界はまたぼやけていたが、すぐにピントを取り戻す。

「…っく…うぅ!」

ムラサキが使っている姿見、だろう。
それが少し離れた位置に立てかけてある。
それは当然後ろを向いて置かれている訳もなく、二人の行為を鮮明に映し出す鏡面が、窓の隙間から差し込んだ月の光で冷たく光っている。
「嫌…ぁ…!」
「だろうねえ…けど、閉じたら駄目だよ桔梗」
救いを求めるように視線を後ろに投げるが、ムラサキの表情は全く見えない。
「あ…はぅ…っん!」
動きを止めていた指が蠢きだすのが、感覚と視覚で理解できた。
目を開けたままで居る事を強要され、何故かそれに抗うことも出来ず、かといって目の前の光景を完全直視する事は出来ない。
しっかりとは定まらない視線を彷徨わせている内、耳の奥にどこかで聞いたような機械音が響いた。
「あ…や、それは…っ」
「折角だからね、この格好じゃあんまり奥まで入れられないし、それじゃあイけなくて辛いだろう?」
言いながら、ムラサキはローターを桔梗の芽に当てる。
「ぅ…あぁああ…ッッ!!!」
思わず仰け反った桔梗の背を、ムラサキは壁に深くもたれかかりながら受け止める。
結果桔梗の体は少しずつずり落ち、ムラサキの腹に頭を預ける形になった。
「おやおや、か弱いねえ、桔梗は」
ムラサキは一度中から指を抜いて、更にローターも脇に置くとその身を少しだけ抱えなおし、自らは体を前に折り曲げて手を前に回す。
「まだ見えてるね? 桔梗」
その視界を遮らない様にしながら、再び秘所へと手を伸ばす。
「あ…もう…もう嫌だ…っ」
足を引き寄せてまた開かせ、桔梗の懇願するような目をまっすぐ見つめ返しながら、
「駄目だよ、そもそもこんな所で止めて、いいのかい?」
「う…ッ」
どう思っていようと、体はもう走り出している。
言葉は止めようとしていても、最早此処で止められた方が辛い事など桔梗自身よくわかっている。
「さあ、続けようか…」
指が深く、潜り込む。
柔らかく開いているそこは、ムラサキの人差し指と中指を同時にすんなりと飲み込んだ。
「はあ…ああっ…ん」
広がるムラサキの着物を掴み、首を反らした。
溜まって行く涙が静かに零れていく。
時折薄く開いた視界に己の痴態とムラサキの行為が映り、桔梗は熱くなる体に意識を焼かれていく。
思わず反れた視界の先に直接、ムラサキの手が飛び込んできた。
「あ…んぁ…ッ!」
自分の中へ潜り込み、蠢いている手が。
「は…やあ…ッ」
右手で掴んだ着物を引き寄せ首を振る。
ムラサキももう目を閉じるなとは言わなかった。

彼女自身がもうその光景を見ていなくても、ムラサキが見ている桔梗の姿がどんなものかは、既に理解してしまっているのだから。

「ムラサキ、殿…っ」
「なんだい…?」
「嫌だ…見ない、で…く…ぁあっ!」
「それは出来ないねえ、目を閉じたままアンタを抱くなんて難しい以前に勿体無い」
再び、ローターにスイッチが入る。
その音に反応し、桔梗の体が震えた。
しかしそれは、
「怖いかい? 桔梗」
指での責めを続けたまま、ムラサキは問う。
桔梗はムラサキの着物に顔を埋めたまま暫く黙っていたが、

「もう…よく、わからない…ッ」

それを聞いてムラサキは満足げに微笑み、
「あ…」
震えるローターを芽に宛がった。
「ふぁ…あぅ…んッ!」
それを揺らしながら、奥を捏ねる。
中に在る指が少しずつ締められていくのを感じながら、ムラサキ自身も意識がぼんやりとしていくのを感じていた。
「はあ…いいねえ、桔梗…。どんなにアンタが嫌がったって、アタシが逃がしたりするものか」
「は…ムラサキ…殿…ッ…あぅんッ」
桔梗はムラサキに擦り寄りながら、濡れた瞳で訴える。
「なんだい?」
「お願い…だ、このままでは…怖、い」
「………」
「御主の姿が良く見えぬのは…嫌だ」
「……そうかい」
ムラサキはローターのスイッチを止める。
「ぁ…」
少し名残惜しそうな声を零す桔梗がいとおしく感じた。
「やっぱり最後は、アタシ自身でイかせてやる方が、いいかい?」
思わず視線で玩具を追っていた桔梗だったが、その言葉にはっとしたように顔を上げる。
その視界が、揺らいだ。

「え…あ、ああっ…!」
背中に固い壁の感触、そこに残ったムラサキの温もりを感じると同時に、より深く押し入ったムラサキの指が与えてきた快楽に背を焼かれた。
「痛くないかい…桔梗」
「あ…ぅ、大丈夫…だ」
一瞬にして桔梗は壁に押し付けられていた。
けれどそれは決して乱暴なものではなく、背には手が回されている。
「ムラサキ…殿」
「あぁ、わかってるよ」
ぐい、と腰を引き寄せ首筋に舌を這わせる。
「はあ…ぁ」
「嬉しいねえ、奥まで届くのは玩具の方なのに、アタシの方を求めてくれるのかい」
「それ…は」
言われた桔梗は顔を真っ赤に染め、俯く。
「それは?」
羞恥の余り答えないだろう事を予測しながらも、楽しげに問うムラサキ。
しかし桔梗はその着物の前を掴むと、呟いた。

「………御主自身の手に堕ちる方が…安心できる」
「……」

思いがけず帰ってきた回答に、ムラサキは一瞬言葉を失ったが。

「光栄だよ、お姫サン」

言って、桔梗に口付けた。

"仕置"であった筈なのに、最早ムラサキに怒りは無い。
苛めてやりたい、鳴かせてやりたいとは思うがそれはいつものこと。
だから、いつもの通りに。

「ん…っ、ふ…あ……ッ!」
口付け、舌を絡め取りながら指を動かす。
柔らかく戻っていた桔梗の中は、再び指を締め始める。
ゆっくりと口を離すと首へ、肩へ、そして固くなった胸の先へと舌を這わす。
「はう…ッ、ムラサキ、殿ぉ…!」
時折音を立てながら胸を吸うムラサキの首に腕を回し、縋りつく。
腹の中に在った疼きが指に掻き乱され、足が震えだす。
ムラサキはゆっくりと身を起こし、桔梗は首から背へと腕を移動させてしがみ付いた。
その肩越しに先程の姿見が見える。
「う…ッ」
「ああ、見えるのかい?」
その視線を追って僅かに後方に視線をやったムラサキは、愉しそうに笑った。
「まあこの格好じゃあ何をされてるのかは余り見えないだろうけどね。でもアンタが誰に抱かれて、誰に縋り付いてるか…よく見えるだろう?」
「は…あぁ、っ」
何故か目を反らせずに居た桔梗の中をより深く、抉る。
「う…ぁあ…んッ!」
「気持ち良いかい、桔梗」
何度も何度も、桔梗がより感じる所を集中的に、指を蠢かせて突く。
「は、あ…ッ、頭、が…!」
姿見からようやく目を反らし、顔をムラサキの肩に埋めながら桔梗は喘ぐ。
何度も締め付ける中は、ムラサキの指を食い千切るかとさえ思わせた。
「ふふ、相変わらずだね…可愛くて、厭らしい」
「そん、な…あ、ぅん…っ」
「もっともっと、鳴くんだよ。桔梗」
そういってムラサキは桔梗の腰を引き寄せ、指の動きを更に激しくする。
「あ、ああ――っ、ん、気持ち、良い…ッ」
「そうかい、アタシもだよ…!」
淫猥な水音が大きくなる。
それが桔梗の耳に届くようにと、ムラサキはわざと音を立てるように捏ね回した。
「こんなにするまで気持ち良いかい…!」
「はぁ…ッ、それは、ああっ!」
いやいやと首を振るが、内に響く快感は消えない。
震える足の先から、少しずつ何かが這い上がってくる。
「あ、ああ、何かが…っ。ムラサキ殿…っ、もう、私、は…!」
「限界かい? 良いよ、じゃあイかせてあげようかい…!」
「あ…んッッ、熱い…!!」
視界が白く染まっていく。
背筋が異様に熱く感じられた。
その熱が骨を、血管を通って全身に広がっていく…。
「アンタはアタシのモノさ、誰にもやらないし、どこにも行かせないよ…!」
それは何度か言われた言葉。
束縛と支配の言葉の筈なのに、酷く甘く優しく聞こえるのは何故だろう。
「は、ああ…ムラ、サキ、殿―――!」
ムラサキの名を呼んだ桔梗の表情に、一瞬笑みが広がったように見えて。
それが愉しく、ムラサキはそれ以上は不可能だろうと思えるほどに強く、芽を摺り上げながら桔梗の中を深く突いた。
「あ…ああ――――ッッ!!!」

白い熱が全身を支配し、意識を押し出す。
きつくムラサキに縋り、背筋をくすぐる快感に震えながら桔梗は達した。

桔梗の体は小刻みに震え、体の硬直が解けると同時に背に縋っていた手が落ちる。
ムラサキはゆっくりと指を引き抜くと、その身を優しく布団に横たえさせた。
桔梗は意識を失ってはいないようだったが、ぼんやりとした目が何処を映すことも無く時折瞬きする。
余韻が残っているのか、時折大きく体を痙攣させ、その度に薄く開いた口からは小さな声が漏れていた。

「……今夜はアタシも此処で寝て良いかい?」

その横に体を横たえ、合わない視線を無理矢理絡めてムラサキは笑いながら問うた。
その姿を認めたのか、桔梗の瞳に僅かに光が戻る。

「あ…」

親を見つけた子供のように、桔梗はその姿に縋った。
胸に顔を埋め、しがみ付く。
ムラサキはその背と髪を撫で、額に口付けた。

「…今夜、だけではなくて…」
「ん?」
「これからは…家に居る夜は…互いに予定が無い時には…傍に居ては、くれぬか…」
「……桔梗?」

弱々しく呟く桔梗にムラサキは眉をひそめる。

「一人では、余計なことを考えてしまう。情けないが…怖い」

言って、ムラサキの着物を掴む手に力を込める。

「………ああ、しようの無い子だねえ…ふふ」

安心したように顔を上げた桔梗に口付ける。
触れるだけの口付けを数秒、唇を離して頭を撫でてやると、桔梗はいつの間にか眠りに落ちていた。
その表情は僅かに微笑んでいる。

「まったく…先に寝られちまうのはしょうがないけど、これからこんな顔ばかり見せられながらアタシも寝るのかねえ…」

嫌味はもう桔梗に届かない。

「ま、桔梗は案外それなりに強く苛めても感じるみたいだしね…この我慢に相当するだけの可愛い姿をそれまでに見せてもらうことで、良しとしようか」

不敵な笑みを浮かべてそう呟くと、ムラサキもまた目を閉じ眠りに落ちた。


置かれた姿見と転がった玩具を見つけた桔梗が大いに赤面しムラサキに抗議するも、"桔梗の御願い"を復唱された挙句に口付け一つで大人しくさせられたのは、数時間後の目覚めの後の話――。

トップへ

動画 アダルト動画 ライブチャット