ムラサキ×桔梗


肩と腕に、違和感を感じて目を覚ました。
開いたはずの視界は、闇に覆われていた。


「………」
闇の中で目を瞬かせながら、眠りから覚めた桔梗はとりあえず目を擦ろうと思い至る。
「…痛ッ…?」
しかし眠っている間に背の後ろに回ったらしい両手は、何故か体の前に持ってこられなかった。
「何だ…これは」
両の手が、手首を合わせて縛られている。
そう気づいたのは手を動かせば互いの手に触れられ、しかし手首は摺り合わせながら僅かしかずらせなかったから。
「おや、お目覚めかい」
少し遠く…上の方から声がした。
「ムラサキ…殿?」
それはよく聞きなれた女性の声。
自分が今宿を借り…時に肌を合わせる事もある仲の女性だ。
「何が…どうなって」
「御仕置だよ」
「………何?」
意外な言葉に身を捩り、声のした方を向こうとしたが、視界が覆われていてはそれも上手くいかない。
「…っ、何の真似だ、ムラサキ殿」
「だから言ってるだろう、御仕置さ。……アタシがもう怒ってないと思うのかい?」
言われて、桔梗は記憶を辿る。
急激な眠気に襲われる前の事、夕食の席で確かにムラサキは怒っていたように見えた…そう思い出す。
「何を言っている、あれは御主も」
「そうかい、とは言ったけどね。わかったとかそういうことは一言も言っちゃいないよ」
「……」
蘇った記憶と、ムラサキの言葉には相違がない。
桔梗は言葉を続ける事無く、今日の出来事を出来る限り鮮明に、もう一度思い返す。



事は、小一時間程前に遡る。

普段は夕食を摂るような時間に、ムラサキは店の奥にある家には居ない。店に出て、客の相手をしているからだ。
桔梗自身も仕事に出るか、宛がわれた部屋で暇を潰すかしており、特に退屈を感じたことはない。
一人で適当に摂る食事も、いつものことだ。

しかしこの日は月に数度ある店の定休日。
普通に家事もこなすムラサキに、桔梗は思わず意外だといってしまったことがある。
それにムラサキは笑って「そうだろうね」と返したものだった。
そんなムラサキの用意した夕食を摂りながら、桔梗はぼんやりと考えていることがあった。

「ムラサキ殿…」
「なんだい」

この家は、温かい。
世話になってどれくらいが経つだろう、まだそこまでは長くない。
別に間男の様にただ居座るだけではなく、仕事をこなし幾らか納めてもいる。
ムラサキは最初それを拒んだが、それでは自分が落ち着かないと言い聞かせて。

しかし、そんな世間的な理由だけでなく、この場所が余りにも温かい事、それが少し怖かった。

「余り長く、宿を借りているわけにも行かぬだろう…」
「はァ?」

その呟きは、思わず零れた物。
一月程この生活が続いた、その辺りからずっと心の中にあった言葉。

「私とて、一人の成人だ。何時までも御主の家に厄介になっていては、都合もよくないだろう」
「なんだい、急に」
「御主は、客と店以外の場所で会う事もあるのだろう?」
「まあそりゃね、付き合いってモノもあるからねえ」
「此処を使っていた事は無いのか?」
「確かに昔はあったけどね。アンタまさか、此処にアンタが居るのが、アタシの店にとって不利益だろうとか思ってるのかい」
「…思っていないことも無い」
「はん…」

表向きは「世間性」。
それも本心の一つではある、しかし、

「……違うね」

「違う?」
桔梗はてっきり「不利益である」という事を否定してきたのだろうと思っていた。
だがムラサキは、桔梗のもっと深い部分を見ていた。
「身分不相応」
「……!」
「図星かい、やれやれ」
ムラサキは溜息をつき、頬杖をつく。
桔梗を見つめる視線が鋭くなったような気がするのは、恐らく気のせいではないのだろう。
「桔梗」
「……なんだろうか」
「此処は、居心地がいいかい」
「………」
桔梗は思わず視線を逸らす。
「……居心地はいいけど、それに甘んじていいと思えない、そんな所かい」
「……私は」
「ったく、何処の思春期なお子様だい。馬鹿な事言うんじゃないよ」
「しかし、私は…!」
思わず語気が強まった。
逸らした視線の先、暗い「自室」。
そこにはまだ、手放すことが出来ないで居るものがある。
本来ならば、在るべき場所に祀らなければならないのだろうものが。
「……出ていくのかい?」
「その方が…良いだろう」
もう一度、深く溜息をついたムラサキは立ち上がると、
「そうかい」
そう言って、台所の奥へと姿を消した。

何事も無かったかのように食後のお茶を淹れてきたムラサキからそれを受け取り、互いに無言のまま啜る。
特に会話が続くことも無く、蒸し返されることも無く、淡々とした時間が流れ、桔梗は不意に眠気を感じた。

「……少し、疲れた。先に休ませてもらう」
「はいよ、御休み」

立ち上がり、自室に向かう間にもどんどん眠気は酷くなる。
どうにか白い浴衣には着替えたものの、余りの眠気にきちんと着られたかどうかもよくわからなかった。
どうせ今夜はそんなに寒くない、そう思いつつも出来る限り浴衣を調え布団に潜り込んで数秒。
意識にあっという間に闇が落ちてくる。
ほんの一瞬だけ、壁の向こうから音がした気がした。
壁際に敷かれた布団の中で、隣に部屋を持つムラサキの歩く音を聞きながら、桔梗は眠りに落ちた。



そして、目覚めて見ればこの現状。
どうやら「怒っていたように見えた」のは、間違いではなかったらしい。

「アタシはねえ、桔梗」
近くで、声が聞こえた。
つ、と頬に何かが触れる。恐らくはムラサキの指。

「アンタに此処に"居て欲しい"。でも、それが叶わないなら力ずくでも此処に"縛り付けたい"んだよ」

指は首筋を撫でながら肩、腕と進み…縛られた両手首に触れる。
「それならアンタは納得するのかい」
「……」
桔梗の手首を拘束しているのは何かの布。
故に固く縛り上げてはいるが、締めによる痛みはそれほど無かった。
桔梗は思う、いつもであれば眠っている最中にムラサキが傍に来れば目を覚ました。
仕事柄、というものもあるのかもしれない、割と人の気配には敏感なのだ。
それなのに、今日は気づかず…あまつさえ両の手を縛られ、目を塞がれても気づかなかった。
それは、あの唐突な眠気に関係するのだろうか、と。
「不思議そうな顔してるねェ、どうして今日は目覚めなかったのかとか、そんなことを考えているのかい」
「……その通りだ」
「簡単なことさ、馬鹿な事いうお子様に、ちょっと御仕置きしてやろうと思ったからね。一服盛らせてもらっただけさね」
「………っ」
予想はしていたが、いざはっきり伝えられると怒りがこみ上げて来る。
それがムラサキに対しての怒りか、桔梗自身に対しての怒りかはわからなかったが。
「でもま、流石というかなんというか、そう長くは効かなかったみたいだね。こんなに早く起きるとは思わなかったよ。
……その方が、好都合だけどね。無理やり起こすのはあんまり好きじゃないのさ」
ムラサキの手は再び桔梗の頬に触れる。
人形を愛でる様にその白い頬を撫でながら、ムラサキは見えていない桔梗の上で薄く嗤っていた。
「ムラサキ殿…とりあえず解いてはもらえぬか」
「何言ってるんだい、人の話、聞いてたかい?」
桔梗の唇を指でなぞる。
「放っておくと、本当に出て行きそうだったからね…だからアタシはアンタを縛り付けることにしたのさ」
「何を…!」
桔梗は身を捩るが、やはり後ろ手に縛られている状態ではまともに動けない。
「文字通りこうして縛りあげて…精神的にも、ね」
言って、ムラサキは桔梗に口付ける。
「ん…むぅ…っ」
容赦なく、ムラサキは舌を捻じ込む。
いつもならこんなに乱暴ではない、桔梗がそう思うほどに強く、強引に。
「ん――…っ」
横に倒され、縛られた桔梗には成す術も無い。
口付けられながら浴衣を乱されているのが理解できても、何も出来ない。
抗議の声は唇の隙間から音を零すのみ。
開かれた前から冷たい手が差し入れられ、桔梗の体に鳥肌が立った。

「…っは、何を…ムラサキ殿…!」
ようやく離れた唇に非難の視線を向けても、それは眼前に広がる闇に打ち消されるだけ。
「安心なさいな、アタシは好きな娘を痛みで屈服させるのは好きじゃないからね」
「何に安心しろと…!」
「アンタの体はアンタが思っている以上に素直だよ」
「何を、馬鹿な…っう」
柔らかな胸を撫で、背に指を走らせる。
その行為によって、桔梗の肌にはますます粟が立っていく。
「勿論、心もね…これからアタシはアンタが余り知らない事をするのさ。いつもよりはちょっと、過激にねえ」
「ぅ…」
「アンタはアタシの成すがまま。アンタにはアタシが居なくちゃあ誰もこんなことをしてくれない」
首筋に舌を這わせながら、背と胸への愛撫を続ける。

「それでも、アタシの傍から離れられるのかい?」

挑戦的な問いに桔梗は戸惑い、言葉を返せない。

「アタシはアンタが大好きだよ、だから今までは出来る限り普通に愛してきた。
けどアンタがアタシの傍からいなくなるって言うんなら…少しはきついお灸を据えて、二度とそんなことを考えられないようにしてやりたいのさ」
「そんな…簡単に…んぐっ」
何か言わなければと言葉を紡ぎかけた桔梗の口を、手で覆う。
「平たく言えば、そうだね…。アタシ無しじゃあ居られないようにしてやりたい、そういうことだね。
アタシが知ってる事、アタシがアンタにやりたいと思いながら抑えてきた事…今までの行為もこれからするような事も、アンタ自身も求めるようにしちまえばいい」
口を開放し、ムラサキは桔梗の身を起こさせ抱きしめる。
「桔梗? 何も見えないまま触れられるってのは、どんな感じだい」
「――っ」
耳元で囁かれる度温かい吐息が耳朶をくすぐる。
「いつもより、心地良いかい?」
ムラサキの問に返事は無い。
桔梗は羞恥心に顔を赤らめ、俯いて感覚に耐えていた。
「何処まで我慢できるか、見ものだね…」
ムラサキは目を細め、乾いた唇を舐める。
舌がぴちゃりと鳴り、それが聞こえた瞬間に背筋が震えた。

「……っ、くぅ…」
耳朶に湿った何かが触れる。
もう何度も味わってきたその感覚の筈なのに、いつも以上の鳥肌が立つ。
それでもなんとか堪えようと歯を食いしばった瞬間。
「ん…っ!」
胸に再び手が伸ばされ、撫で回し始めた。
「ぅ…っく」
「頑張るねえ…そんなにアタシに堕ちるのが嫌かい」
「な…」
「嫌われたもんだね、アタシも」
ムラサキの言葉に、桔梗は戸惑った。
そういう事ではなかったのに、そう判断されてしまったのかと。
しかし否定するにも今この状況では何かが不自然で、言葉が続かない。
「まあ、良いさ」
「―――-!?」
ほんの少し温もりが離れ、
「っぁ…!」
直後胸の先端に舌が触れたのがわかった。
同時に下腹部へ手が伸びていくのを感じ取る。
「…っ、止め…んんっ」
ムラサキは桔梗の抗議の言葉を無視し、胸を吸い下腹部の更に奥へと手を這わせる。
必死に閉じようとする足の隙間を潜り、下着の上からそっと秘裂を指でなぞった。
「ぅ…っ」
感覚こそ強くは無かったものの、既にそこが濡れているのがわかる。
「まだ、早いね」
何が早いのかはわからなかったが、桔梗はそれ以上ムラサキの手が動かぬようにと足に力を込める。
「無駄だよ、桔梗」
桔梗の行為を見透かしたかのような台詞に、一瞬気が取られた。
全ての視界が闇に閉ざされている状況では、何か言葉が聞こえる度そちらに意識が行ってしまう。
その隙に下着に手が滑り込み、そのまま脱がされていく。
「くっ…止め…ろ」
自由に動く足を僅かに動かしながら抵抗する、ムラサキはそんな桔梗を見て妖艶に微笑んだ。
「全部脱がさなくたってね…少しだけ下ろせれば、ホラ」
「あ…っ!」
抵抗に気を取られ、手の侵入を阻むことを忘れていた桔梗の秘所に、ムラサキは難なく指を潜らせる。
「っあ…! 嫌…だ」
「何が嫌なんだい、触れられるのが嫌かい? 濡らしてる癖に」
「ぅう…っ」
芽には触れず直接そこへ手を伸ばし、ムラサキは蜜を掬う。
「まあ、まだ確かにそんなに濡れちゃいないけどね。もう少し慣らしてやらないと、痛いだけだろうねえ…」
「何が…だ」
「今にわかるさ…、ホラ、耐えて御覧なさいな」
「んぅっ!」
ムラサキは僅かに濡れた指先で、桔梗の芽を撫で上げた。

「あ…はぁ…っ」
「ふふ、可愛いねえ、桔梗」
声色は熱っぽく、しかしそれ以上は何も言わず…淡々と芽を摘み、摺り、撫でる。
「は…う…止め、ろ」
体が震える。
背が仰け反り、只一本桔梗の体を支えているムラサキの腕に、図らずも強く圧し掛かってしまう。
ムラサキは何もいわず、芽を弄び続けた。
「ん…くぅ…っ」
真っ暗な筈の視界がチカチカと白く点滅している気がした。
「そろそろ、良いね」
ようやく聞こえたムラサキの声に思わず安堵を覚えるが、その指が離れた瞬間反射的に足が閉じる。
「ふふ、そんなに閉じたままでいたいかい?」
「……」
特に絶頂まで押し上げられたわけでもなく、半端に快楽を与えられた状態で桔梗は肩で息をする。
その平衡感覚がふと失われた。
「痛…っ?」
後頭部に布団のような床のような感覚が触れ、押し倒されたのだと知る。
状況が上手く飲み込めないまま、太股辺りに違和感を感じた。
「な、何を…っ」
「開かないようにしてあげようと思ってねえ、ああでも完全に締めちまうと入らないから最初は緩くしないとね」
「何のことだ…!」
まだ理性は失われていない、何も見えないまま、よくわからない行為を続けられるのが癪に障った。
しかし当のムラサキは何処吹く風といった具合で、黙々と行為を続ける。
足に何かが巻かれていた、感覚的に革のような冷たさ。
恐らくはベルトか何かなのだろう、それが数本だろうか、太股に巻きつけられていく。
「さて、とりあえずこれでよし」
「っく…?」
何が起こるのか全くわからなかった。
少しずつ恐怖が沸き起こってくる。
と、そこに僅かな水音のようなものが聞こえた。
「中に入れるのが本来の用途じゃないんだけどね、でもまあ、気持ち良いことに変わりは無いさ、きっと」
桔梗には何も見えず、ムラサキの言っていることの意味が殆ど理解できない。
「さ、力抜いてないと痛いよ」
「や、何を…!」
「まあまあ、ほら、力抜きなさいな」
「ッ…痛っ…!?」
何かが、中へ入ってくる。
人の体のような柔らかさは一切無い、異質の硬さと冷たさ。
それが割り入ってくる感覚に、桔梗は反射的に身を固くした。

「そうやったら痛いだけだって言ってるだろう」
溜息をついて、ムラサキは空いている手で芽をくすぐった。
「っふぁ…!」
瞬間的ながら力が抜けたその時を見逃さず、割目を指で押し広げ一気に押し込む。
「っぁあ…っ!」
痛みが走った。
幾ら濡れていたとはいえ、それは余りにも感じたことの無い感覚。
太股への戒めが更にきつくなり、入った何かは桔梗自身の手では最早動かすことが出来なくなる。
呆然としている間に下着は完全に取りさられたようだった。
「やっぱり入れてから締めた方が良かったかねエ。まあ、御仕置だから少し位痛くても我慢しなさいな」
「か…勝手なことを」
「お互い様だよ、さてと」

ムラサキの気配が、離れた。
そのことに少なからず不安を覚える。
「安心しなさいな、一番良い所からはずらしてあるからね」
「……?」
「これだけでイかせてなんてやらないよ、さ、始めようか」
「何…を………っっ!!?」

微かに、桔梗の中で何かが震えた。

「あ、ああ…っ!?」
その振動は、少しずつ大きくなっていく。
「っく…ぁ、ムラサキ殿、これは…っ」
「…玩具だよ、こういう行為の為の、ね」
「あ…あう…ッ」
ムラサキの押し殺した笑が聞こえた気がした。
どこでこの光景を見ているのか、見当もつかない。
ムラサキの気配をすぐ傍には感じられないまま、少しずつ大きくなっていく振動に、それが与える快感に、桔梗は必死に耐えるしかない。
「い…嫌…だっ」
苦しげに身を捩っても、固定された足は少しも隙間を開かせず、中へ入った異物が外へ出ることは無い。
「っあ、止め…止めてくれムラサキ殿…!」
返事は全く無い、ただ僅かに、中の振動が弱くなる。
それに息をついた瞬間、
「―――ぁアッ!!」
それまでとは比べようも無い程に大きな振動が、桔梗の下腹部を襲った。
「は、あっ! 嫌…だ、苦し、い…!」
「…たまにはこういうのもいいもんだろう? 桔梗」
ようやく聞こえたムラサキの声は、笑っていた。
耳の奥に、内から機械が動く独特の音が響く。
その音にあわせて走る振動に、桔梗はたまらず体を折り曲げた。
「は…んっ!」
「良いねえ、桔梗。アンタは本当に可愛い娘だよ」
「…ッ」
自分がどんな姿を晒し、それを何処からムラサキに見られているのか。
それがわからず、桔梗は羞恥と恐怖と快感から逃れたくて首を振る。
「アタシも、ローターなんざ久し振りに使ったけどね…桔梗はこれ、気に入ったみたいだねえ?」
「馬鹿…な、事を…んぁう…ッ!」
また、振動が強くなる。
途切れない快感の波に、桔梗は身を仰け反らせた。

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