「っ、ふ」
 低い声で囁いて、KKは喘ぐ女の唇をキスで塞ぐ。
 ふっくらとしたくちびるを甘噛みし、逃げ回る舌をとらえて絡め合わせた。耳朶を嬲ったとき以上に、彼の舌使いは執拗で濃厚で――淫らがましい。

「ん……ぅっ」
 呼吸が上がり、鼻にかかった喘ぎが時折漏れる。
 その要因はけして息苦しいというだけでは、ない。
「……っ!」
 胸を嬲っていた手が朱華色の尖りを弄った。
 爪先で掠めるようにして、指の腹で押し潰す。
 痛いほどの鋭い疼きが伝播して、背筋にぞくりとした戦慄きが駆け下りた。
「ほら」
 そのまま、どれほどの時間、口唇と胸元を愛撫されていたのか。
 顎まで滴り落ちた唾液の筋をKKが舐め取って、それでようやく二人の唇が離れる。
 肩で息をするムラサキの面前で、男の瞳が笑う。
「こんなに濡れてる。
 ……そんなに気持ちよかった? 俺の、キス」
 薄笑いと共に、差し出された指。先程まで自分のナカに入り込んでいたもの。
 ふやけ、糸を引くほどに濡れたそのさまをまざまざと見せ付けられ、
 ムラサキは上気した肌を震わせた。
  
 強張るムラサキの面前で、KKは喉を鳴らしてほくそ笑むと、再度両足の合間に手指を運んだ。
 びく、と張りのある腿が跳ね上がるが、熟れた入り口の中に指先を埋め込めば、
 ムラサキの全身はくったりと力を無くす。
 先程はキツくて、指先を突き入れるのさえ困難だった部位だ。
 だが今は、骨ばった間接さえ容易に飲み込む。
 あまつさえ粘性の生温かいものが、しとどに溢れて止まらない。
 KKはその感触を愉しみながら、ムラサキの額に口付ける。

声を殺そうと、うつむいて唇を噛むさまに嗜虐心がソソられる。
意外にも貞節なのだな、とぼんやり思った。少し嬲ってやれば、もっと扇情的に腰を揺らすかと思っていた。
持ち歌のように、苛烈な性情を持っているのだと思っていた。
 だが腕の中の女は相反して、はらはらと落涙しながら生娘のように震えるばかり。
まあ自分の襲い方があまりにも強引で暴力的だったことも、怯えを倍化させる要因だろうけれども。
 ――落胆はしない。むしろ意外性が愉しくてならない。
いままで幾多の女をあしらってきたが、こんなに燃え立たせてくれる相手は久方振りだ、ほんとうに。
  
「っあ……あ、ッ」
 濡れてはいない部位を無理矢理にこじ開けられるのはまるで拷問。
 だが、濡れきった場所をいたずらにかき回されるのもまた拷問だと、ムラサキは嬲られながら知覚した。
 苦痛か快楽か、差異はそれだけ。
 腰骨が蕩けそうな快さも、暴力的なまでに早急に与えられれば泣くほど狂おしい。
「もう止めて……御願いだから……っ」
「まだ嫌がるの? ……強情だねぇ、カワイーけど」

 涙に汗に濡れた頬に、黒髪が張り付く。
 それを優しく払いのけるKKにムラサキは涙目で縋ったが、もう一方の手指の進入を阻むことは出来なかった。
「声、殺してないで乱れてみなよ……
 もうコッチはこんなに音、立っちゃってんだからさ?」
「やぁ!」
 内襞の奥の尖りを指の腹で潰すように擦られ、上ずった悲鳴が喉を突いた。
 痺れるような享楽がその部位を核として全身に伝播する。
 ひっきりなしにソコで奏でられる、熟れた果実を押し潰すような粘性の響きに、羞恥心が倍加した。
「欲しいって……言えよ」
 濡れた目許を舐めながら、男はそう強要する。

「でなきゃ、イカせてやらねェ」
 埋め込まれた指先は不規則に胎内を動き回るが、先ほど掠めた一点は完全に無視して
 意地悪く熱くぬかるんだ場所を彷徨うばかり。
 胸元への愛撫も残酷なほど緩慢になって、ムラサキは上がった熱と快楽をもてあまし、
 掠れ声で鳴くほか何も出来ない。
「このままじゃ、辛いだけだろ?
 ……強請れよ、俺が欲しい、って」
「っあ」
 張り詰めた腿に押し当てられる、滾ったKKのモノの感触。
 たったそれだけで、全身が跳ねそうに撓る。
 熱に浮かされた意識のなか、理性と感情がせめぎあう。
 このカラダは、一体どうしてこんなに目前の傲慢な相手を欲しがっているのか?
 はじまりは強引で、一方的で、暴力的であったのに。
 いまや身も心もぐずぐずに溶かされて、次の愛撫無しには神経がおかしくなりそうだ。

「……もう、嫌……」
 否定の言葉を吐きながら、潤んだ瞳でKKを見上げた。
 鳶色の光彩は、研いだ刃のように剣呑で嗜虐的な光を宿している。
 もっと痛めつけて欲しい。もっと甚振って欲しい。もっと嬲って欲しい。
 屈辱的でも辛くてもなんでもいいから、快楽を頂戴、もっともっともっともっと。
 享楽に浮かされた神経が甘ったるい声でそう泣き叫ぶ。
 始まりが無理強いであっても、此処まで行き着いてしまったならば関係ない。
 もはやお互いの熱が冷め果てる結末以外に、終着なんて有り得ないのだから。
「お願いだから、手錠、とって……」
 切れ切れに嘆願した。自らの敗北を胸中で苦く受け止めて。
「このままじゃ、あんたに縋りつくことも、出来ない……」
 艶やかな隷属の言葉に、KKは会心の笑みを浮かべた。

 手錠を外されたとたんに、ムラサキの体は支えを喪って冷たい床に崩れ落ちる。
 すでにもう濃密な愛撫のせいで足腰は全く立たない。
へたりこんで肩を上下させ、ただひたすら喘いだ。
 呼吸の整う暇も与えてくれない。KKはしゃがみこんでムラサキの唇を奪う。
 膝を割り開かせて自分の体を密着させた。
「イくよ?」
 ジッパーを下げる音を鼓膜のどこかで聞いた、と思うや、甘く口唇を舐められながら囁かれる。
 朦朧となった意識が一瞬だけ覚醒したが、すぐに霧散した。
 熟れて開いた場所に、KK自身が入り込んでくる感覚。
指とは違う質感が、疼く場所を占めていく、統べていく。
「っあ、ぁああっ!」
 圧倒的な灼熱感に体の中核を割られ、背中を反らして喘いで鳴いた。
「すッげ……やっぱ、思ったとおり、イイ……っ」
 詰めたKKの声音が耳朶のすぐそばで響く。
 のばしっぱなしになっている、彼の金褐色の髪が、律動のたびに肩を首を掠める。
 そんな僅かな接触さえ、ムラサキの性感をいたずらに引き上げる。

「ムラサキ、手ェ、背中まわして?」
 肩の辺りにこわごわと添えられていた手を、KKは引き剥がして自身の背中へ運んでいく。
 ささやかな配慮に心が騒いだ。
 だが、その余韻に浸る暇もなく、KKの荒々しい律動に意識のすべてが攫われてしまう。
 緩く浅く強く深く。
 息も出来ぬほど荒々しく、と思えば、もどかしいほど緩慢に。
 KKは思うように、ムラサキの体内を蹂躙する。
 律動のたびに生理的な涙が溢れ、頬を伝った。
「すっごい絡んでくるよ……ムラサキのココ……
 絞られて、きついくらい」
「や……あぁ……」
「なのにこんだけ滑りがイイ、そのわけが分かる?
 ……濡れてんだよ、それだけさ。びしょびしょなのな……はしたないねェ」
「や……そんなこと……ッ」
 言葉でムラサキを攻め立てながら、KKはなおも腰を打ち付ける。
「否定すんなって。ますます屈させたくなンだろ?」
「っあ……ひぁっ」
「誰もがあんたを崇めたてる。女神みたいに崇拝する。
 当然だよな、美貌に才能に何から何まで、あんたは全て持ち合わせて泰然としてるんだから」
 結合部から波のように押し寄せる快楽に翻弄され、KKの声もどこか遠く切れ切れだ。
 だが、その声音に滲むどこか口惜しそうな響きは、なぜだろう、恐ろしいほどしっかりと聞き取れた。

「誰からも崇められる綺麗な女神様。
 穢してやりたかった、ずっとずっとずっとずっと。
 どれだけ俺がムラサキ、こうやってお前を汚す夢を見てたか、わかるか、なァ?
 どれだけ……お前が欲しかったか」
 言葉尻が耳朶を掠めたそのとき、KKの指先が陰部の尖りを押し潰すように愛撫した。
 直接的な刺激に全身が痙攣し、体の奥から灼熱感を抱いた滾りがこみ上げてくるのをムラサキは感じた。
「っやっ……ぁん、っ、ああ……っ!」
「イイ声。
 ――でも、まだダメ。」
 のけぞった腰はしかしキツくKKの無骨な手で拘束される。
 同時に体内に入り込んでいたソレもまたいたずらに快いポイントから退いてしまう。
 あと少しの快楽で高みへ至れると、分かっているのに。
 薄笑いを浮かべて、男はソレを阻む。もっと浅ましく欲しがれと。
「ぃや……も、意地悪しないで……」
「ナニが? 言わなきゃわかんねぇって。
 なんかして欲しいことがあるなら、可愛くおねだり、シろよ?」

 中途半端に高められた熱が、どうしようもない火照りになって全身をぐるぐると彷徨っている。
助けて、もう限界だと小さく囁いたがそれも聞き届けられない。
 鳶色の瞳は剣呑な色を宿したまま、
 直情的で淫乱な言葉を吐き散らさねば許しはしないと言外に語っている。
 焦らされた状態が辛くて辛くて、頭を振れば涙がぱたぱたと落ちた。
「お願……もぅ……っ」
 だが、脊髄のすぐうえをそっと一撫でされれば、
 涙と共に最後の理性が蕩けてぐずぐずに形をなくす。
 どんなに浅ましいと罵られても、もう本当に構わない。
 今すぐに、触れて抓って浚って舐めて貫いて苛んで、汚してーー壊して。
 おねがいだから犯して頂戴。でなければ発狂しそうにもどかしいの。
 全ての思いをこめて、濡れた唇を動かした。
「お願い、もぅ、イカせて……っ」
 鳶色の瞳が、笑う。嬉しそうに嬉しそうに嬉しそうに。
 刹那、KKの口唇が喘ぐ唇を塞ぐ。
 同時に、引き合った体の奥底まで、KKが穿たれて。
 脳髄さえ痺れそうな快楽が爆ぜた。

「ムラサキ……可愛い……」
「っいや……あっ、っあ、あぁ……っ、けぇ……っ!」
 角度を変え、変則的なリズムで。KKに貫かれ、嬌声が止まらない。
 ムラサキは爪指を深くKKの背中に食い込ませながら、
 全身を翻弄する快楽に流されるばかりだった。
「っあっ」
 口唇が胸元の飾りを潰すように噛む。
 鋭い痛みが爆ぜたが、それすらも極限状態にある性感を異様に昂ぶらせた。
 のけぞったムラサキの奥深く、もっとも欲しかったポイントにKKが入ってくる、熱く深く。
「っああああああああああぁっ!」
 甘い悲鳴を零した刹那、意識が白くはじけた。
 怖いほどに快さの高みに押し上げられ、全身の神経が焼ききれそうな快楽が体中を襲う。
「っ、ムラサキ、キツ……!」
 はからずも、絶頂の際に絞られた秘部はKKの張り詰めたソレをキツくキツく戒める結果となり。
 もがくように震え、腹の底で弾けた熱のかたまりに、
 頂点に至った体は再度、淫らがましく疼いた。

 ……冷たい床がふしだらに温もるほどには、その場で獣のような交情を続けていた。
何度達しても、KKはムラサキを離そうとしなかった。
 乱暴に突き上げては次を求め、何度も何度もムラサキを汚した。
 
「……どうして、こんなことをしたの……?」
 鳴いて泣いて、その果てに完全に掠れてしまった声でムラサキは尋ねた。
 KKは薄赤く染まった己の手首に、しきりと口付けを落としながら囁く。
「ずっと前から、あんたが好きだったーーって言ったら、信じてくれるか?」
 優しく静かに、口付けながら、そう言う。 
「俺はあんたが気づくよりずっと前から、あんたのことを見てた、って、言ったら。
 俺の縄張りは西新宿、あんたの仕事場のあの町も含んでる。
 あんたがパーティに出演するのが決まって、一番喜んだのは俺だと思うぜ……
 見つめるだけで手出しの叶わない、
 綺麗な綺麗な歌姫サンと、ようやく接点が出来たんだ。
 本当に、嬉しかった。
 ……たとえあんたが俺を毛嫌いしていても」
 瞠目するムラサキの瞳を、KKはまっすぐにとらえて言い放つ。

「薄汚ェヒトゴロシだ。
 誰からも忌まれる職種を好んで請け負ってる犯罪者だ。そんなこと自分が一番よくわかってる。
 だけど……あんたを諦めることは出来なかった。
 こんなコトまでしちまって、今更な言い分だけどな」
 KKは、ムラサキの手を掲げ持つ。
 さながら、中世の騎士が、愛する淑女にするように、
 場違いなほどにうやうやしく。
「愛してる」
 告白は、どんな濃密な愛撫より的確に、ムラサキの神経を犯した。
「……卑怯よ」
「知ってる」
 朱唇を噛んで、そう喘いだ。爆ぜそうに高鳴る鼓動を、ただ抱懐して。
「それでもあんたが欲しかった」
 KKは囁いて、ムラサキの手の甲に口付けた。永劫の忠誠を誓うように。

「愛してるんだ、本当にムラサキ、お前だけを愛してんだ。
 離す気はねェよ……やっと手に入れられた、体も。
 これから手に入れる、心もな」
 ムラサキは眉宇を寄せて頭を振る。
 喉がひり付いたようにからからで、言葉がうまく出てこない。
「……卑怯よ……」
 喘いで、それだけを繰り返した。
それ以外に言うべき言葉が、どうしてもどうしても見つからなかった。
「知ってる……」
 KKは、それだけを答える。
 そしてまた、手の甲に口付けた。
 そのくちづけは慇懃なまでに儀礼的だというのに、何故だろう、腰骨の奥が甘く疼く。
 柔らかな睫を伏せ、ムラサキは静かに落涙した。
 運命をつかさどる歯車は軋みながら、それでも廻ってしまったのだ。
 もう自分は以前の自分ではないし、過去には二度と帰れない。
 
 何が哀しいのかはわからぬまま、そっと面伏せて忍び泣く。
 KKの腕が己の肩を、まるで壊れ物でも扱うかのように優しく抱きよせるのを、静かに感じ取りながら。




                           ---終---

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