☆   ☆

一回めの絶頂を迎え、くたりと脱力した妹が続けて言った言葉は、ぼくには少々衝撃的なものだった。
「……よーし。そろそろ準備おっけー!」
「準備って、何の?」
「本番」
「うぇっ!?」
思わずまぬけな声を上げてしまうぼく。
だってそうじゃないか。
つい今しがたイッてしまったばかりの妹に、いきなり本番しようと持ちかけられるとはまさか思ってもみない。
「何よ。いつもだって、ちゃんと最後までやってるじゃない」
「……そうだけど。でも、いつもはちょっと休憩してからじゃないか」
「だからいいの。わたし、一度やってみたかったんだ。『間髪入れずに』ってやつ。
ほんとは『抜かずの二発め』に憧れてるんだけど、お兄ちゃん、いつもなえなえになっちゃうでしょ? 出した後」
それは確かにそうだけれども。
しかし、どうしてそんなに元気なんだろう。
……などと考え込む時間を、妹はぼくに与えてくれなかった。
思い切り体重をかけて、ぼくをベッドに押し倒したのだ。
「んふふー。幸い、お兄ちゃんの方ももう『じゅんびばんたん』って感じだしね」
言われてしまった。
ああ、そうだとも。
妹にご奉仕してあげながら、ぼくの方はとっくに元気回復してしまったとも。
彼女が感じている顔を見ながら、びんびんに勃起してしまっていたさ。
「気が進まないのはわかるけどね。お兄ちゃん、優しいから。わたしのこと心配してくれてるんでしょう?
 でも、大丈夫よ。……嫌だって言ってもやるし」
言うが早いか。
妹はぼくのズボンを剥ぎ取ってその上にまたがると、そのまま一気に腰を沈めてしまった。
にゅるんと妹の中に入り込むぼくのもの。
そこはついさっきまでの行為の余韻を残し、とろとろにとろけていた。

   ☆   ☆

――その日、わたしは夢を見た。

怖い夢。
嫌な夢。

その夢の中で、わたしは一人、瓦礫の中で泣いていた。
何があったのかはわからない。
泣きながら、どことも知れない場所を目指して歩き続けていた。
体はへとへとに疲れていて。
声はとっくに枯れていて。
わたしは足をもつれさせて転ぶ。
転がって仰向けに倒れるわたしの瞳に、空が映る。
見上げた空は真っ赤に染まっていて。
夜だというのに、星ひとつ瞬いていなくて。
わたしはそれを見て、たった一つのことを理解する。
それは、わたしが一人ぼっちになってしまったということ。
パパにもママにも。
お兄ちゃんにも。
もう決して会うことはできなくなってしまったのだということ。
何故かそれだけを理解する。
それがわかってしまったわたしは、たとえ様もない深い絶望に襲われる。
倒れたまま、全身から力が抜けて……。

――そこでわたしは目を覚ました。

   ☆   ☆

ぼくを迎え入れた妹は、何かをこらえるように長い息を吐き出すと、ぼくに向かって言った。
「……あ……はは……。やっぱり、キくね……。なんか全身がしびれてる感じ……」
ぼくの胸の上で、握り締めた手が小さく震えている。
やっぱり、妹の小さな体で受け止めるには、その快感は大きすぎるのかも知れなかった。
なのに彼女は、笑い顔を崩さない。
たぶん強がりなんだろう。そうやって虚勢を張ってみせる意地らしい姿をぼくは少し可愛いと思う。
「……このまま動いてあげようかと思ってたけど、ちょっと無理っぽいや。
 ……悪いけど、元気が出るまではこれでガマンして」
そう言うと、膣に力を込め、ぼくのものを締め付ける妹。
きゅきゅっ、という程よい刺激が何度もぼくを襲う。
だが、その度に、妹の顔は少しゆがんだ。
過ぎた快感は苦痛でもある。
もし、妹が純粋に楽しんでいるのでなく何かに耐えているのだとしたら、それはぼくにとっても望むところではなかった。
「いいよ。そんなにしてくれなくても」
「……平気。っていうか、わたしがやってみたいって言ったんだし」
「だからだよ。お前、無理してんじゃないかってさ」
「……わたしならだいじょぶだって。お兄ちゃんが気持ちよくなってくれるのが一番大事」
心配して気を遣うぼくの言うことを、妹は頑として聴きゃしなかった。
『お兄ちゃんが気持ちよくなってくれるのが一番大事』だなんて。
さっきまでは、自分がやりたいからやるって言ってたくせに、矛盾するじゃないか。言い訳としては最低だ。
でも、だからこそ、ぼくはそれが妹の本音なのだと、なんとなく気づく。
……はぁ。ぼくは心の中で溜息をついた。
頑固な妹には、無理やりにでも言うことを聴いてもらうしかない。
「……だったら。ぼくが動けばすむことじゃん」
ぼくは身を起こし、妹の背中を抱くと、静かにベッドに横たえる。
「体を使うのはぼく。それが嫌なら、もう続きはしない」
ぼくの言葉を聞いて、妹は一瞬呆気にとられたような顔をした。
けれど、すぐににっこり微笑みを浮かべると、こくん、とひとつだけ頷いた。

   ☆   ☆

目を覚ましたわたしは、ふと額に慣れない感触を感じた。
温かくて、柔らかくて……。
そう、これは誰かの掌だ。
それが、一心に、何かを慰めるように、わたしのおでこを撫でている。
わたしは、その掌の動きに懐かしさを感じて小さくつぶやいた。
「……ママ?」と。
けれど。
わたしがゆっくりと開いた瞳に映ったのは違う人。
「気がついた?」
「お兄ちゃん……」
「うなされてた」
どうして? わたしは思う。
だって、お兄ちゃんはわたしと一緒に眠ったはず。
時計を見ると、まだ夜中の三時。やっぱり、お兄ちゃんが起きているはずのない時間だ。
「何だかお前が心配になって。わかんないけど、目が覚めちゃった」
その言葉を聴いて、わたしは急に、熱いものが頬を伝うのを感じた。
そして、思わずぱっとお兄ちゃんに抱きついてしまう。
夢の中で、もう会えないと思ったお兄ちゃんに。
抱きついたお兄ちゃんの感覚はとてもはっきりしていた。
わたしの見た怖い夢なんか簡単に吹き飛んでしまうくらい鮮明だった。
「……良かった。もう会えないかと思った。お兄ちゃんはもういないって思ったんだよ……」
「馬鹿だな。ぼくはちゃんとここにいるよ」
そう言いながら、わたしの頭を優しく撫でてくれるお兄ちゃんの動きに、わたしはあることを気づかされる。
ずっと、わたしがお兄ちゃんを守っていると思っていたけれど。
何のことはない。守る人と守られる人は逆なんだ、と。
わたしこそがお兄ちゃんのこの優しさに守られているんだ、と。
そう気づいて、わたしはお兄ちゃんの胸の中で、ただ泣いていた。
……ずっとずっと。

   ☆   ☆

ぼくは体を動かし始める。妹が辛くないように、優しく、ゆっくりと。
妹のその部分は、熱くぬめりを帯びて、スムーズにぼくを導いてくれた。
彼女がぼくを待ちわびていたことの証と言ってもいいかもしれない。
わかっていたことではあるけれど、この身で体験することで、それが実感としてぼくの中に受け入れられた。
その実感が、少しだけぼくを意地悪な気持ちにさせる。
「もし声が出そうなら、遠慮しなくていいよ」
「ばか」
さっきのお返し。それにもう一つ、ぼく自身、妹の声を聞いていたいというのもあった。
あまり声を出さない彼女のこととは言え、これだけ高まっている今ならば、きっと可愛らしい声で鳴いてくれるはず。
たまにはぼくが男らしく主導権を握ったっていいだろう。
「お前だって、たまには声出して感じてくれたっていいじゃんか。こんな風に、さっ!」
ぼくは一度だけ、妹のことを考えないようにして思い切り腰を叩きつけた。
勢いで、ベッドが軽く軋む。
「……あンッ!」
期待通り、妹はぼくの動きに応えて小さく声を上げてくれる。
「……無茶しないでよ。パパとママに聞こえちゃうよ?」
「大丈夫。起きて来やしないって。今までだって平気だったじゃないか」
と、言いつつ、やり過ぎた気がしないでもないぼく。
思わずやってしまったけれど、こんな乱暴なのは、自分のことながら少しひいてしまう。
第一、妹に無茶をさせないように気をつかっていたはずのぼくが、かえって無茶させてどうするって。
だから、もう一言妹がぼくを叱ってくれさえしたら、素直に謝って、やめる準備はできていた。
――のだけれど。
「……あは。そうだね。たまには、こういうのもいいかもね」
妹はぼくを叱ってくれるどころか、むしろ乗り気で。
「そうと決まったからには、がんがんやっちゃってね。今のお兄ちゃん、ちょっと男の子っぽくてかっこよかったよ」
期待のこもった艶っぽい目つきで、ぼくをじっと見つめていて。
……えーと。
やっぱり、ぼくが主導権を握るなんて無理なんでしょうか?

   ☆   ☆

二人で生まれてこられたこと。
二人でいられること。
それをわたしは幸せと思う。
笑顔、泣き顔、怒り顔。
わたしが、嫌いな野菜をお皿に移したときにする困ったような顔。
「好きだよ」ってわたしが言って、それに「ぼくも」と返すときの照れる顔。
全部が好きだ。
わたしを抱いているときの息遣い。
発する匂い。
ちょっとした仕草。
一緒に絶頂を迎えるときの一体感。
何もかもを一つにして、わたしはお兄ちゃんを愛している。

わたしはお兄ちゃんが好き。
わたしはお兄ちゃんが好き。
わたしはお兄ちゃんが大好き。

わたしはまだ覚えている。
夜空を見上げて、一緒にわたしたちを探した日のこと。
空に輝く双子星を見つけた日のこと。
それは二つで一つの世界。
二人で一人分の魂。
絡み合い、支え合い、寄り添って立つ二本の樹。
そんなわたしたちは一つのレールの上を走り。
同じ終着駅にたどり着くんだろうと信じている。
それをわたしは幸せと思う。

                               ――でも……。

   ☆   ☆

「……ぁッ……ふぅンッ……くふぅ……ッッ……!!」
リズミカルに発せられる妹の喘ぎに合わせ、こんなに力を込めるのは初めてなんじゃないか、というくらい、ぼくは激しく体を揺さぶった。
中の感触を楽しんでいる余裕などはなかった。ただ必死。
仕方ない。だって妹は、ぼくが少しでも手を抜くと、すぐにそれを見抜いて「もっと」と要求してくるのだから。
「もっとっ! もっとだよっ、お兄ちゃんッ!! もっともっともっと激しいのがいいのッ!!」
『遠慮』と言う最後の箍が外れてしまった二人は、もはやひたすらに快楽をむさぼるだけの動物も同然だった。
ぎしぎしと激しく二段ベッドが揺れる。
夜のぼくらのお城。二人だけの世界。それが壊れてしまうんじゃないかというほどに。
もしかして、一緒に何もかも壊れてしまうんじゃないか。そんな恐れも心の片隅に芽生えた。
けれど、ぼくらは止まらない。止まれなかった。
結合部からは、二人の迸らせる液体が交じり合って、勢いに任せて飛び散っている。
そしてじゅぷじゅぷと淫靡な音を響かせている。
「……ぁはぁッ!! いいよっ、お兄ちゃんッ!! わたしの中、いっぱいだよっ!!」
いつの間にか妹も身を起こし、ぼくの動きに合わせて腰を振っていた。
時に従うように、時に抗うように、たぶんその時々で彼女が一番気持ちいい位置を探して動いているのだろう。
ぼくもそれに応え、さらに速度を増して動く。
「……はっ……はっ……。ねぇっ、わたしたち……ッ……、今、一つになってるよね……っ?」
「うんっ!」
「いつもより、ずっとずぅっと、一つになっちゃってるよねっ!?」
「うんっ!!」
「あぁぁっ!!」
そして。妹が、一際大きな息をつき。
「きゃふぁあぁッッ!!」
「うぁぁぁぅっッ!!」
膣がぼくからすべてを絞りつくすかのように激しく収縮する。
ぼくは、最後の一突きで妹に分け入ると、そのまま一息に熱い塊を注ぎ込む。
どくんどくん、と。
その余りの高まりに、いつまでも、ぼくの射精は止まろうとはしてくれなかった。

   ☆   ☆

気だるい体をお兄ちゃんの横に寝っ転がらせたまま、わたしはお兄ちゃんに声をかける。
「ねえ、わたしたち、これからもずっと一緒にいられるかな」
「いられるさ」
いつもみたいに、困ったような顔を浮かべてそう答えるお兄ちゃん。

でも。
本当はわたしは知っている。
この小さな世界は、もうわたしたちには狭すぎる、ということを。
わたしは、いつまでもお兄ちゃんとこうしていることを望んでいる。
だけどそれは、子どもの淡い夢に過ぎない。
子どもの頃の夢は、大人になったら崩れてしまうのだ。
……それを、いつしかわたしは知ってしまった。
「……そうだね。ずっとずっと、一緒にいようね」
「うん」
わたしは、それに気づかないふりをして嘘をつく。
理想の未来をお兄ちゃんにも共有して欲しくて。
いや、お兄ちゃんもやっぱり、こんなことがいつまでも続かないのだとわかっていると思う。
わかっていて、わたしに合わせてくれているのだと思う。きっと。

――と。

「……いられるよ。ずっと」
「え?」
「大丈夫。ぼくらは、最高の双子だから。大人になったって、この世界が壊れたって、ずっと一緒にいられるさ」

わたしの心の中を見透かしたように、
お兄ちゃんが、そう言った。

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