デイヴ×ツララ


「あなたはサンタを信じますか―――?」


ここはこの世界でも北の外れに位置する場所
普段は人など絶対に足を踏み入れない場所に、それはひっそりと佇んでいる。
世界中の子供たちに「夢」を届ける サンタの修練所。そっちの立場で言うなら「学校」だ。

ここでは、一人前のサンタになるための様々なカリキュラムが組まれている。
地理や心理学は勿論の事、家人を起こさずにプレゼントを配って回るための「隠密術」などもある。


物語の舞台は11月
修練所が一番盛り上がる時期。
何故かというと、
毎年男女各一名ずつの見習いが「本番」…つまり12月24日〜25日の間のプレゼントの配達に
参加できる仕組みになっていて、その選考会が11月の最後の日曜に開かれるからだ。

誰もがそのメンバーに憧れ、それを目指す。
もちろん俺だって例外じゃない。
今年は…今年こそは俺が勝ち残って、一人前のサンタになってみせる。

ついにその日がやってきた。
11月の最後の日曜日

俺たちは、たくさんのソリが止めてある大きなガレージに召集された。
希望者のほぼ全員が集まった頃、一人の男が皆の前に立った。
帽子をかぶり、サングラスを掛け、何故か宙に浮いている。変な男だ…。
「あ〜ぁ・・・ったく、かったりぃなぁ・・・。」
とでも言いたげに大きく欠伸をしている。
なんなんだこいつは・・・。
そんなことを考えていたときだった。

「う〜し、みんな集まったみてぇだな。じゃあ今回の選考会の説明、始めっぞ〜」
その男は欠伸の余韻を残しながらそう喋った。
騒々しかったガレージが一瞬で静まり返り、張り詰めた空気がその場を支配した。

「――さて、今回お前らは男女2人1組で行動してもらう。で、今回はプレゼントの代わりに・・・」
男が手を前に差し出し、何かをブツブツ口元で呟く。
すると彼の掌の上にフワッと、青白く幻想的な光を放つウィスプが現れた。
何人かの修練生はウットリとした表情で溜息を漏らした。
「―――こいつを配ってもらう。それぞれのソリに地図と配達先の名簿、そしてコレが用意してある。
配達数は、各組100コだ。んで、一番早く帰ってきた1組が、晴れて合格ってぇワケだ。簡単だろ?」
それだけ言い終えると、その男はウィスプを宙に放り投げ、右手の人差し指をその光の塊に向け、一言二言呟いた。

―――刹那、一つの光の塊は破裂し、数百、数千の光の欠片となり、ガレージは幻想的な蒼い光で包まれた。
まるでクリスマスの夜の街の様に。

何人もの修練生が息を呑み、感極まっている者さえ見受けられる。
その余韻も覚めやらぬ内に、
「んじゃあ組を決めるかぁ。各自、受付で貰った袋を開けろぉ」
男は頭をポリポリ掻きながら言った。
ハッと我に返った俺は、ゴソゴソと袋を開ける。
中には「175」と彫られたシルバーアクセサリーが入っていた。
「じゃあ、アクセに彫ってある数字と同じソリに乗って出発だ。ほれ、行け行け」
最後に男は面倒臭そうに言い放った。

「さぁて・・俺のパートナーは誰かねぇ」
『175』と書かれたソリに辿り着くと、既にパートナーは来ているようだった。
俺は少し小走りにソリに飛び乗った。
「わりぃわりぃwさぁて、出発すr・・・」
「あ、来た来たw遅いですy・・・」

『はぁぁぁあッ!!!?』
二人分の叫びがガレージに響き、大勢の修練生がこちらに振り向いた。
最悪だ・・・。よりによって・・・またお前か・・・。
―――――――――――――――――――――――

一番恐れていた事態が起きた。
俺の頭の中で、去年の惨事がフラッシュバックする。

―――配達先の家人にバレて・・・道に迷い・・・挙句の果てに時間切れ・・・。
当然合格出来る訳もなく・・・―――

そのときのパートナーが、今目の前にいるツララなのだ。
(お・・・終わったな・・・。)
どうやらあっちも同じようなことを考えていたらしく、呆然と溜息を吐いている。
「終わったわね・・・。今年もこのトナカイと一緒だなんて・・・」
完全にやる気が無くなった声で、ツララが呟いた。俺に聞こえるように。
「はぁ、またお前と一緒かよ。こりゃ今回は諦めたほうが良いなァ!」
わざと語尾を強調して一息に言い終わると、案の定ツララが突っかかってきた。
「何よ!去年はアンタの方向音痴のせいで道間違えたんでしょ!?」
「お前だって人ん家の中で、外に居る俺にも聞こえるくらいの叫び声あげてたじゃねえか!」
俺らが睨み合って火花を散らしているうちに、ドンドンと他の組は出発していく。
『175番、早く出発しなさい!』
『は、ハイッ!!!』
場内アナウンスの叫びを食らい、俺たちのソリは夜の闇へ消えていった。 

ソリの中でも、俺たちは口喧嘩が絶えなかった。
「だからアレは、台所にゴキ●リがいたからビックリして・・・ッ!」
「だからってあんなに叫ぶかァ!?普通よぉ!」
「うッ・・・うぐぅ・・ぅあぁもう、うるさーーーいッッ!!」
「お前がうるせぇんだよ!!」
地上にも届きそうなくらいの叫び声と金切り声をあげながら、俺たちは所定の場所へ
ウィスプを配達していった。
―――――――――

「次は団地だぞ・・・えっと、1つの棟につき15個だとよ」
「はいはい、了〜解・・・っと・・・。」
俺が指示書を読みながらそう言うと、ツララは手馴れた手つきで大きな袋にウィスプを詰めていく。
「あれ・・・?2つ入らない・・・ッ。」
どうやら入りきらなかったらしく、一つをコートの帽子部分に詰め込んで、
もう一つは片手で大事そうに抱えて立ち上がった。

「じゃ行ってくるわね。よっ・・・と―――きゃぁあっ!」
ツララがソリからビルの屋上へと跳び移ろうとした時だった。
急に突風が吹き、バランスを失い彼女の身体がグラリと揺らめいたのだ。

―――迂闊だった。
団地や高層ビルが立ち並ぶ地域では、時々ビル風と呼ばれる突風が吹くのだ。

ツララの身体がソリとビルの間の空間に沈んでいく―――。
「――――ッ!!」

間一髪、俺はツララの手を捕まえることができた。
ツララは、じっと下を向き、恐怖に唇を噛み締めているようだった。
「デイヴ・・・ッ!あたし怖いよ・・っ!」
バッと上を向いたツララの瞳からは、涙が零れていた。
「イイから捕まれッ!早くっ!!」
ツララは、一瞬戸惑ったが、ウィスプを手放し両手でデイヴの腕にしがみついた。

――――――カシャン・・・
遥か下のほうで、ウィスプの割れる音がした。

俺は一気にツララの身体を引き上げ、間一髪、なんとかソリに戻した。
「はぁ・・・はぁ・・・」
ツララは、荒い息を抑えながら、手の甲で涙を拭っている。よっぽど怖かったのだろう。
「・・・大丈夫か?・・」
掛ける言葉が見つからず、ぶっきらぼうに俺がそう言うと、彼女はゆっくりと首を縦に振った。

―――――――――――――――数時間後―――――――――――――――
多少強がりも入ってはいたが、ツララはいつもの調子に戻り、100個の内、半分くらいは配達し終えた。
そして次の配達先へ向かっているときだった。

「ねぇ、さっきはありがとね。」
急にツララがそう言ってきた。
「あぁ、別に」
俺が振り向きもせずに言い放った。
すると、そのことに腹を立てたのか、さっきより少し不機嫌そうにツララは
「そうだ、さっきのお返ししなきゃ。」
と言いだした。
「別にイイって言ってんだろ?」
と、俺はまた振り向きもしないで返事をした。

「良くないッ!!」
急な大声にビックリしてツララのほうを見た。
彼女は何かを企んでそうな悪戯っぽい目でこちらを見ていた。
俺の背中にゾクゾクと冷たいものが走ったのが分かった。
「だって、アンタみたいなトナカイに借りがあったら、あたしのプライドがズタボロじゃない!」
ツララは、「トナカイ」の部分を若干強めに発音しながら、口には意味ありげな微笑を浮かべていた。

プライドねぇ・・・。

俺はハッキリ言って、あまりツララの話を聞いてはいなかった。

「だから今のうちにお返ししとくのよッ。そうねぇ・・・何がいいかなぁ・・w」
正直どうでもいい。でもあの目付きが異様に気になる・・とかボンヤリ考えているときだった。


ん・・・・・む。


なんか唇に柔らかい感触が・・・・
なぜかツララの顔がスッゲェ近くに在るってのも分かる。
何が起こっているんだろう・・・?

「―――――――ッ!!?」

全ての情報が俺の頭の中で整理されるのに、相当な時間がかかった。

―――ツララが、いきなり唇を重ねてきたのだ。

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