ジャック×ロキ


 ベッドの支柱に手足を固定されることは何度かあった。腕であったり脚であったり、
勿論その理由は、セックスのため。何度も何度も逃げようとしたことはあったが、
結局私はあの獣の言いなりになるしか道も無く、最近では諦めを胸に抱きながら奴に付き合ってきた。
身体を重ねる時以外はあの獣の顔を見せることも無かったし普段の生活では
――思えば奴は、何時の間に当たり前のような顔で私の家に居るんだろう――
むしろ、大人しい部類だった。聞き分けの無い子供然とすることは、多々あったが。
ぼんやりとそんな事を考えながら、私は自分の首に掛けられた武骨な首輪を眺める。
垂れ下がる鎖を視線で追えば、ベッドの支柱に繋がっていた。ぐるぐる巻きに複雑に絡み、
おまけに南京錠まで掛かっている。木製の古いベッドは私の力で動かせるものではなく、
つまり、私の自由がかなり制限されているのが現状と言うわけだ。

「……これは一体、何の真似だ」

 ベッドから身体を起こし、私はじろりとダイニングテーブルを見遣る。
ダイニングも何も私の住居である小屋には部屋など一つしかないのだが、それはこの際問題ではない。
テーブルに座って、床に届かない脚をぶらぶらさせながら私を眺めている、この子供が何よりも問題だ。
私の言葉に無邪気ッぽく表情を緩めて、子供――ジャックは、笑って見せる。

「やっぱロキってば首輪似合うなー? 格好が飾りッけ無いからな、一番ハードなの選んだんだぜっ」
「……お前の方がこういったものは良く似合うんじゃないのか」
「いやいやいや。やっぱちょっとしたギャップがあった方が良いかなーっと。
しかしロキ、よく寝てたなー……鎖じゃらじゃらさせても首輪つけても、ぐっすりだったじゃん」

それは寝ていたのではなく気絶していたからだ、などと訂正を入れても無駄だろう。
私はぼろぼろになった衣服を見下ろす。情事の名残は白く固まって薄い胸にべったりとくっ付いていたし、
腕には指の痕が残っている。つまりは、そう言う事だった。
 くすくす笑いながらジャックは、脚をぶらぶらと揺らし続ける。その様子を尻目に、
私は鎖を引っ張った。思ったよりも短くはないが、希望したほど長くも無い。精々届いても
テーブルまでだ。中々に、困った事態かもしれない――さし当たってしたいことが出来ないのは、
ストレスだ。勿論それはジャックを殴るとかどうでもいいことではない。
 着替えと、湯浴み。
 汗と精液でベタ付く身体を早く洗ってしまいたいし、遅いとは思うが、色々と掻き出したい。
それから清潔な衣服に着替えて、シーツの洗濯も――だがそれのどれも、何一つ、
この状態では達成されない。
 私は引き裂かれたスカートから伸びる脚を取り敢えず隠して、ジャックを睨む。

「鍵を寄越せ、ジャック。このままでは動きがままならん」
「そうさせない為に繋いでんだけど?」
「鍵を寄越せ」
「いーやーだ」

 しゃらん、とジャックの手の中で金属の擦れ合う音がする。鳴ったのは鍵だった。
スペアと連なったそれを、奴はぽいっと部屋の隅に放り投げる。勿論、ベッドとは正反対の方向に。

「だってロキ、起きると風呂場直行だろ。たまにはピロートークぐらいしたいんだってば」
「ぴろーとーく?」
「ナニをヤッた後での感想大会☆」

 『☆』とか言うな、気持悪い。
 私は溜息を吐いて、汚れたシーツに身を包む。気持悪いが、肌を晒しているよりはマシだった。

「話すことなどないし、そもそも私が終わりまで意識を保っていたことなど何度も無いだろう。
お前が加減を知らん所為だがな。つまりは、自業自得と言うことだ」
「つれねぇの。ロキがいい歳して慣れてねーのが悪いー」
「阿呆が」
「結構観察してんだけど、ロキって一人でオナったりもしねーんだよなー。
まあ、そういう性格のお陰で俺が処女食えたわけなんだけど、でもやっぱもっと淫乱にしときたいし」
「なッ」
「俺ナシじゃ一日ももたないぐらい、滅茶苦茶にしちまいてぇ」

 にぱ、と笑った顔は、無邪気な子供。だがそれに騙されるほど私もこいつとの付き合いが
浅くは無い――眼に宿る嫌な光や、尖った犬歯を舐める癖。
それは、奴が馬鹿なことを考えている時の特徴だ。そして性質の悪いことに、
冗談でもなんでもない本音を言っている様子でも――ある。
 シーツの中に隠した手のひらが、じっとりと汗ばむ。滅茶苦茶の意味が判らない所為なのか、
判っているからなのか。とにかくこの首輪をどうにかしなければ危ないと言うのは、
はっきりしているようだけれど。
 重い鎖、冷たい金属がひやりと肌を撫でる感触が、心臓に悪い。

「んで取り敢えず、昨日の感想から教えてよ。腰振ってたんだからかなり善がってたんだろ?
俺もかなり出したし……久し振りに打ち止めだーって思ったなー。
やっぱ媚薬とか使うとそういうもんなのか? 魔女って大概の薬にゃ抵抗ありそーなイメージだけど」
「あんなもの、魔女の範疇ではない。お前の世界のものは特に、耐性がない……」

 ジャックがどこからやって来たのかは判らないが、私が住んでいるこの森、
メルヘン王国とは別の『地』ではあるらしい。科学が発達した場所、科学と魔法は、
相反する。互いに弱く、互いが強い。だからそういった世界の薬を使われれば、
私の場合は想定以上に効いてしまう。
 本当の事を言えば、昨日の情事のことは殆ど憶えていなかった。珍しく静かに眠ったと
思ったところで口付けと共に薬を飲まされて、あとは何が何だか判らなくなって。
だけど一つはっきりしたのは、一刻も早く身体を洗わなければならないこと――
掻き出さなければならない、と言うことだ。遅いかもしれないが、気分として落ちつかなすぎる。
いつものように掃除がてらの後戯で舐められているらしく、汚れてはいないが……
少し力を込めれば出てきそうな、気持ちの悪い感覚があった。

「なあロキ、どうよ」
「……」
「感じてた? 善がってた? 気持ち良かった?」
「……煩い、喧しい、黙れ。早く鍵を渡せ」
「やーだね。教えてくれるまでは」
「憶えてない」
「ふーん、じゃあ何言ったかも?」

 挑発するように眼を細めるその様子が気に入らない。私はむっと顔を顰めるが、
ジャックはただ笑うばかりだった。テーブルから飛び降り、私を覗き込むようにベッドを見下ろす。
身長は私の方が高いが、こういう状況では見上げるしかなかった。意味の無い劣等感が、
首輪の裏に溜まってじりじりと気持悪い。

「……知らん」
「こう言ったんだよ」

 ジャックは私の耳元に、顔を寄せた。

「『お腹の中いっぱいに出して』ってな」

 とろりと、足の奥から名残の精液が零れた。

「ッ……嘘を言え、この私がそんなことを、お前のように子供にッ!」
「子供相手じゃなかったら言うのかよ? でも本当だぜー、ロキってばすっげぇねだったの。
俺が命令すれば、なんでもした。すっげぇ淫語も喜んで言ったし、脚おっ広げて誘ったりもさ」
「嘘だ!」
「あれだけヤッて憶えてないって、そりゃねーよなぁ。俺の腰に脚絡めて、全然離してくんねーの。
笑いながらキスねだって、中出しされると潮吹いて、夢中になってフェラしてさ……
まだここ、ぐちゃぐちゃだろ?」
「んぁッ」

ぐいっと肩を押され、私は汚れたベッドに倒れる。無理矢理開かれた脚の間に入ってきた指先が、
零れ出した精液で濡れた淫部に触れた。ぞくりと背筋を波が駆け、思わず肩を竦める。
シーツに包まったのが失敗だった、腕が出ない。もがくほどに絡み付いて、私は口唇を噛み締める。
 くっくッと笑いを漏らして、ジャックは笑った。

「ぬるぬる。もしかしてまだ薬残ってんの? それじゃあピロートークは出来ないよな、
まだ真っ最中ってことになるんだからさ。クリとかビンビンになってる。ロキ、ほら、ねだれよ」
「そんな、ちが……昨日の残りだ、そんなのッ。良いから掻き出させろ、気持ちが悪いッ!」
「気持悪いー? あんだけ飲み込んでた癖に、よく言うな」
「ッぐ」

 ぐい、と首輪の鎖を引っ張られ、私は顔を顰める。喉を圧迫されて息が詰まったその隙に、
口付けを仕掛けられた。入ってくるのは長い舌、べろりと口腔を一周されて、喉まで降りて行く。
反射的に込み上げて来る嘔吐感に顔を顰めた。そして、込み上げられる中に、精のニオイを感じてしまう。

 緩く舌を食まれ、根元を擽られる。奴の器用なところは、一つの事に集中しながらも、
他へと気を遣れることだ。殺し屋と言うその職業によるものなのかもしれないが、
私にはその器用さが拷問になる。口付けだけでも身体が震えると言うのに、淫部までいじられては――

「ん、ッあ……」

 とろりとろり、名残が零れ出す。クリトリスを重点的に弄られ、眼が潤んでいくのを感じた。
指で押し広げられたそこに爪を立てられる。ぬめりを遊ぶように引っ掻かれ、突き刺され、抓られる。
一番快楽に敏感な場所を刺激されれば、愛液が零れてくるのは必至だった。
肌を伝ってとろりと落ちて行くそれが、気持悪い。じっとりとシーツに染みを作る
その感触さえも判る。もがかせた手は、それでも自由にならない。
 唾液の糸を引きながら離れた口唇、赤い舌でべろりと口唇を舐めて、ジャックは笑う。
 獣の顔で。

「んじゃ、雌犬プレイでも始めよッか」

 ジャックの言葉に一瞬だけ愕然とした私は、その隙を突かれて身体を引っ繰り返された。
その際に身体を包んでいたシーツが取り去られ、ぼろぼろの衣服を纏った肌を露にされる。
中途半端に布地が絡み付いているのは逆に妙な羞恥心を煽って、私は自由になった手で
破けたスカートを必死に押さえた。思えば無意味な行動だが、
それでも殆ど反射的なものだったのだから仕方が無い。
クスリ、小さく笑う気配を背中に感じれば、腰を掴まれた。高く上げる形は、犬を思わせる。

「ッ……ジャック、やめッ」
「あーあーあー。歯型残ってるなー?」
「んッ!?」

 するりと尻を撫でられる感覚に妙な痛みが混じっていた。言葉から察するに、
ジャックが昨日噛んだ痕なのだろう。どちらが犬なのか判らないが、
そんな事を考えている場合でもない。割り広げられた臀部、その箇所に舌が触れた。
窄まったそれを、広げるように、丁寧に舐められる。

「ッや……そんな、汚いとこ、舐めッ……」
「汚くはないだろ、昨日もしっかり舐めてやったしさ。
お前結構コッチ好きそうだったぞ、指ちょっと入れただけでびくびくしてんの。こんな風に――」
「ッひああ!?」
「両方突っ込んで摘まむとさ、そう、良い声出して……」

 はぁっと零れた吐息が妙な熱を持っているのに、手が逃げ場を探した。
シーツを引っ掻くだけの無意味は奴の視覚を刺激する。逃げる獲物は追いかけずに
居られない。獣の性に強く語り掛けるのだ。判っていたはずなのに、それでも、
反射に制限は掛けられなかった。冷や汗が背中を流れる感覚を遮るように、
舌がべろりと肌を撫でる。
 気持悪い。
 ぐちぐちと後ろから入り込んで行く指は、締め付けられてすんなりとは
入っていかないようだった。本来の機能とはまったく逆の事をしているのだから当たり前だが、
そのはずなのに、

「ッぁ、ひっ……」
「出す時が気持ち良いんだよな? はは、ん、良い締め。こっちにもぶち込みてぇなー」
「や、やめろ、このッ!」
「でも俺、デザートは後に残して置きたいオコサマだからさ。
こっちがガバガバのユルユルになって、俺が我慢できなくなるまで……で我慢してくれよな、ろーき」

 じゅるっと音を立てて舐められれば、身体からずるりと力が抜ける。
膝は体重を支えることを今にも放棄しそうに、がくがくと震えている。
大腿にも肩にも腕にも、いつの間にか大量の鬱血痕が付けられていた。
昨日――とやらの、ものなのだろう。本当に、何をされたのだか。
 鎖をぐっと引かれ、喉が絞まる。冷たい金属が肌に当たって痛んだ。
ぐいぐいと引かれて身体の向きを変えられ、奴を見上げる形にされる。
ベッドに立って、奴は、無邪気っぽく微笑んでいた。その表情は子供の物なのに
――厳つい靴が私の手を踏む。固定したままに鎖が引かれ、首輪が呼吸を遮った。

「あー、うん。この顔良いな。首締められてイく変態っているんだけど、
こういう苦しそうな顔って、かなり官能的だと思わねぇ?」
「ッあ……ぐ、うッ」
「唾液垂らして頬を紅潮させて、口いっぱいに開けてさあ――ほら、食えよッ!」
「んっんっぐ、う!?」

 空気を求めて開いていた口に突然性器を突っ込まれ、閉ざされた喉に呑んだ空気が押しかけた。
苦い味がべったりとこびり付く、逃げようと首を振っても、場の上下関係から逃げられるはずも無い。
下唇に押し付けられる睾丸の感触が気持悪い、喉を突く先端が苦い。
僅かに緩められた首輪が呼吸をゆるしても、まだ求める酸素には足りなすぎる。
 ジャックは私の頬を掴んで、固定した。

「ロキは俺のイヌなの、雌犬なの。だから俺にご奉仕しないとエサが貰えないし、
ご褒美も出ないんだよ。オーケィ? テンフォア? 理解できたら、さっさとしろって」
「い、やッ……だ、ふぁッ」
「拒否権なんかないって。お前は俺に傅いて、脚広げてればそれで良いんだからさ」

 鎖が引かれ、ぎりぎりと首が締め上げられる。首で骨がぎしぎしと軋む音がした。
踏みつけられた手の甲が割れそうに痛い。喉が苦しい、痛い、――怖い。
 私は涙を零す。
 ジャックは、鎖を緩めた。

「ご奉仕させて下さい、ご主人様。言ってみな?」
「奉仕、させ……」
「ちゃんと」
「……ご奉仕させて下さい、ご主人様」

 ジャックは笑って、自分の尖った犬歯を舐める。
 私は。
 涙を零したまま、奴の性器に舌を寄せた。

 学習能力、慣れた行動は身体が覚えてしまう。私はいつのまにこんな
淫らな行為に慣れてしまったのだろう、思いながら、ちろちろと舌を出して奉仕をする。
何故だか涙は止まらなくて、抵抗する気力も湧きあがってこない。止まってしまったように、
止まっていた。諦めるように、諦めていた。何度も受け入れたそれは苦味を零しながら疼いている、
煽るように治めるように私は舌を這わせた。張り出した部分を咥えて飴玉のように舐めることも、
舌に引っかかる裏側の筋を探して愛撫することも、唾液で濡らした手で擦り上げることも――
すべて、奴に教え込まれた。

「っん……ふ、っあっむぅ」
「そうそう、じょーず……ロキ、すげぇ上手」

 くすくすと笑いを漏らしながら、ジャックの片手は鎖をしゃらしゃらと鳴らしている。
それはいつでも私の首を締め上げることが出来ると言う威嚇であり、同時に、
今はまだ緩められているという安堵を促すものでもある。全てが支配されている状態は
屈辱的であるはずなのに、私は――

「んっあ、ちゅっちゅぷ、……んっんぅ」
「……ぁ、あ」
「ちゅ、っんあぅ……ふうっんちゅ……」
「は、ロキ、どんな味? 俺の舐めてて、どんな味がする?」
「んっあぁ」

 髪を鷲掴みにされて顔が奴の性器から遠ざけられる。鼻先には饐えたニオイで
とろとろと先走りを零す、それ。その先端に舌を伸ばしながら、私は無意識に首を寄せる。
だけどそれは鎖が鳴らされることで遮られ、ぼんやりとした視線を、奴に向けることになる。
 潤んだ視界に、獣の色が入った。
 赤い、獣の赤い眼。
 いつか何気なく言葉を零された気がする。その色は本当に血の色なのだと、
眼球を通るそれが透けている赤なのだと。奴の血の色をしているから、こんなにも暗く、
そして――美しいのだろう。
 それは儚いものではなく、ぎらぎらと、破滅的な色で。

 だから私は悪くない。

「甘くて、おいしぃです……ご主人、さま」

 私の緑じゃ、この赤に、焼き尽くされる。

「は……上出来」

 押し付けられたそれを素直に喉の奥まで導く。少し息苦しさはあったけれど、それでも、
苦痛ではなかった。それを口に含んでいることがどうしてだか快感で、快楽だった。
白い脚に伝って行くぬめりはもう名残ではなく、私が零している愛液。ただ咥えているだけ、
愛撫しているだけなのに、どうして。
 口を大きく開けて性器を出し、ちろちろと見せ付けるように舐める。横も、裏も、先端も、
満遍なく舌を突き出して――或いは広げて、或いは尖らせて、刺激を。とろりとろりと零れ出す
先走りは、性を混じらせてか色を持つ。一層に、甘さが――喉を刺激する。引っ掛かる独特の、
青臭い、それが、甘い。
 甘いから、もっと。

「もっと……ごしゅじん、さま」

 ぱたりと、シーツに愛液が零れ落ちた。

「なんだ、また薬ぶり返した? 結構きっついもんな、アレ……あーあー、こっちびっしょびしょ。ロキ、ほら」
「あ、あッ、んぁあ」
「真っ赤になってる。自分で見てみろよ」

 鎖が引かれて私の顔はジャックから離れる。言われた通りに見下ろせば、
陰毛の無い私の性器はぱっくりと開いて、内部の赤を露出させていた。
硬く尖ったクリトリスは肥大化し、刺激を求めるようにぬめる愛液を零している。
その下も、だらしなくぱっくり開いて――奥。
 こくん、と私は唾を飲む。
 この奥に、ジャックが、いつも――

「あ、いい事考えた。ロキ、自慰して」
「……ぇ?」
「自慰。オナニー。マスターベーション。自分の手や道具を使って、性器を刺激すること。
ほら、そんなにぴくぴくしてんだからさ……ほっといたら可哀想だろ?」
「っあ、ん!」

 つうっとジャックの指が、愛液の垂れた大腿を撫でる。そんな遠い刺激にすら、
触れられることを待ち侘びた箇所は疼いていた。痛いぐらいの、疼き。
身体の奥に何かが足りない欠落感を埋めたいような欲求。ぼんやりとした思考、
私は口唇の端から唾液を垂らして――そこに、落とした。

「ロキ、やれよ」

 命令に許されて、私は私に触れる。
 自身のそこに触れることなど、私には無かった。もともとそう言った欲求とは縁遠い
生活をしていたし、懸想する相手もいなかった。そもそも、種族柄と言うのもあるだろう。
血を守ること、子孫を残すこと、それを第一に――だから、どうしたらいいのか、判らない。
 腫れ上がった部分に爪先を掠めると、足が引き攣った。
 とろとろと一気に零れ出して来る愛液が、私の指を濡らす。頭の奥が痺れる感覚に、
私は傾いだ身体を倒した。脚を広げたまま仰向けになり、ジャックに見せ付ける形になる。
片手は自然に乳首を転がし、もう片手は、撫でるようにクリトリスを刺激する。幼くて拙くて、
他人に任せるとのはまったく違うじれったさと、微かに同居する期待感があった。

「爪で擦ってみて、皮があるからさ。それが剥けたら、もうそっち弄るなよ。
下の方に穴があるから、そっちに指突っ込め。一気に行けよ、四本ぐらいなら行けるからさ」

 言われるままに私は爪を立てる。尽きない愛液が微かに飛び散り、包皮が捲れる感覚があった。
もう少しいじれば絶頂感に辿りつけそうなのに、その未練を残して、命令に従う。指をそろえて、
先端を潜らせ――私は一気に、そこを貫いた。

「あ、あんッ……あ――――い、いやぁあああッ!」

 限界まで押し広げられたそこは、粘膜が突っ張っていた。だけど一旦潜ってしまえば
中は柔らかく指を迎える、初めて自分の中を知る。くるりと小さく指を動かすと、
襞の感覚がそれを受け止めた。ほんの少し、体温よりも冷たい。ぐいぐいと奥に突っ込むと
壁にあたる――私は、そこを、引っ掻いた。
 開いたような感覚があった気がする。
 だけどそれは、絶頂感で、朧だった。

「……すっげ」

 ぽそりと、ジャックが言葉を零す。

「ホントに突っ込んで、挙句潮噴きかよ。ほんっとに淫乱だなお前……
このままオナニーが癖になったら、もっとここがユルくなっちまうじゃんか」
「ッふ、ああ……んぁ」

 手首が掴まれて、無理矢理内側から指が引き抜かれる。それすらも刺激になって、
私は思わず甘く声を漏らした。今までに零したことがないほど力無く甘ったるいそれに、
内心驚く。べたべたの指はシーツに放り出され、そして――ジャックに、ねじ上げられる。
 痛みが一気に私のまどろみを消し去った。

「ロキ。これからは俺が許さない限り、オナニー禁止。絶対だからな?」
「ん、あ……ぜった、ぃ……」
「復唱は?」

 私はぼんやりと赤を見上げながら、すらすらと言葉を吐く。

「ご主人様の命令以外で、オナニー、しません」

 奴は満足そうに笑って、私の頭を撫でた。

「いい子だなーロキ。んじゃ、そろそろ、しよっか……」

 くるりと身体が反転させられて、腰を高く上げる形に戻される。
私はそれをぼんやりと受け入れながら、解けて散らばっている自分の髪に指を絡めた。
銀色は波のように揺れ、私の肌に零れかかる。乱されるのは嫌だ、思いながら、
押し当てられる熱に期待する。口元が緩んで、知らず、微笑んでいた。
 ジャックは私の髪を丁寧に払い、頬に触れて耳朶に囁く。

「じゃあ、言ってみな、ロキ」
「んん、ぅ……?」
「『ご主人様の雌犬に、たっぷり精液のミルクを注いで下さい』ってさ」

 頬に可愛らしいキスが下りる。
 なんだかそれがくすぐったくて嬉しくて、何より早く欲しくて。
 私は、笑って、言った。

「ごしゅじんさまのいんらんなめすいぬに、たっぷりおちんちんのみるく、いれてください」

 それは一気に、奥まで届き。
 そして引き抜かれ。
 奥へ。
 抜いて。

「あ、あ――――ご、しゅじ、さまぁぁあッ! あ、あっん、は、はげし、いぃい!」
「ッく、は、あ……ロキ、すっげ、熱ぃッ! ロキ、ロキッ!」
「あ、ああ、いい、すご、あっんあ、はああ! い、いく、出る、なにかくるっきますぅ!
ご、しゅじ……ジャック、じゃっくぅう!」
「あ、あー、もっとッもっと、鳴け……あ、あ! う、くは、あ、出す!
中に、ぶちこんでやるよ、ロキッ……ロキ!!」
「ひ、や、あ……――――!!」

 奥に勢い良く吐き出されたそれと共に、私も潮を噴いて絶頂を迎えた。
 完全に弛緩して崩れかける身体を、鎖が引き止める。
 ジャックは、笑っていた。

「まだまだ――だろ? たっぷりなんだからさぁ、雌犬」

 零れ出す精液に構わず、奴は腰を打ちつけた。

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