ヒグラシ×リサ


ここは東京の渋谷から横浜までを結ぶ鉄道が通る沿線地域。夏も終わりが近づき、人々の
かれ気分も落ち着き始めていた。そんな中、その周囲の雰囲気とは対照的に明るくなってきた
青年の姿があった。彼の名前はヒグラシ。ミュージシャンを目指す若者だ。

話は3日ほど前に遡る。

PPPPPP…

電話だ。この音は自宅の電話ではない。携帯の着信音だ。

「はい、ヒグラシです。」

「やっほー、アタシ。リサだよっ。ねぇねぇ、ヒグラシさん、今度の土曜ヒマぁ?」

この間ヒグラシが偶然出会って知り合ったリサからの電話だ。相変わらず底抜けに明るい。

「あぁ、リサちゃん。うん、予定は無いですよ。」

リサの声を聞いたヒグラシは表情が明るくなる。

「んじゃぁさ、一緒に遊びに行かなーい?」

「いいですよ。じゃぁ時間と場所を…」

そうやって(リサ主導で)次に合う待ち合わせ時間・場所の打ち合わせをして電話を終わらせた。

「土曜、か…」

ヒグラシは表情に少し明るさが増していた。カレンダーを見て、うんうん、と一人で頷いていた。

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そして今日、土曜日…

また渋谷にやってきた。ヒグラシはどうもこの街が苦手だ。自分より格段に活気の有り余った人が多すぎるからだろう。
駅を降りてハチ公の前で待つ。土曜のせいかいつもに増して人が多い。人々がここで誰かを
待ち合わせている様子が多く見て取れる。日差しはきつくない。
時計は9時57分を指している。10時に待ち合わせているので丁度いい時間だった。

「…ですね。その事をバラされたくなければ金曜日に一万円払ってください。そうです、…」

隣に居る若い男が電話をしている。何か物騒な話に薄ら寒さを覚えるが、まぁこんな人の
多い街だからいろんな人もいるさ、と一人で納得した。

「おっはよっ♪お待たせ〜。」

後ろから声が聞こえた。リサがやってきたようだ。周囲の若い男たちがリサを見る。やはり他人から
見てもかわいく見えるのだろうか、同時にヒグラシを見て「ハァ?コイツじゃあの娘にはちょっと
釣り合い取れてねーぞ」という感じの表情をする。
その周囲の人たちの不満げな表情を見てヒグラシは「だからこの街に来るのは嫌なんだ」と思った。

「や、やぁ。おはようございます。」

ヒグラシは少し照れながら挨拶をする。顔が少し赤い。リサは気にせずヒグラシの手を引いて
歩き出そうとする。

「さっ、行こっ。」

「あ、あの…どこに行くんですか?」

「センター街の方のお店。新しい服見に行こうかなーって。そろそろ秋も近いしさ。」

「服、ですか。」

そういえば自分は忙しくなったせいか最近服を買いに行く機会が少なくなったなぁと思い出す。
丁度いい機会だと考えた。

「そうですね、分かりました。じゃぁ行きましょうか。」

(ヒグラシはリサに腕を引っ張られて)2人はセンター街に向かい、店に入った。リサが服を
取り広げてヒグラシに見せてみる。

「ねぇねぇ、この服とかどう?」

「へぇ、明るい感じでいいですね。」

そこで「何を着ても似合いますよ」と言おうと思ったがそれじゃ細かい点が見れてない。実際に
自分が”リサなら何を着ても似合う”と思ったとしても、やっぱり際立った点を言わなきゃな、と思った。

「んじゃぁ、これにしよっかな。あ、ところでヒグラシさんさぁ、この前言ってたけどさ、眼鏡変えないの?」

「それが…この前コンタクトにチャレンジしてみたんですが、電柱にぶつかった時にコンタクトを
落としてしまって見つからず、よく見えないから帰り道とかでも犬小屋に近づき過ぎて吠えられるわ、
暴走自転車にぶつかりそうになるわ、溝に嵌まるわで本当に散々な目に遭ってしまったんです。
だからしばらくコンタクトは見送らせてください…」

プッ、とリサが笑う。

「電柱に?それってある意味すごいよヒグラシさん。」

「よくあるんです。僕って何か物事に集中したり夢中になったら周りのこと見えなくなりますから。」

ヒグラシは右手を頭に当てて掻く。

「アハハ、ヒグラシさんってさ、面白い人だよね。」

ヒグラシも服を1着買って店を出た。それからいろいろと話をしながら歩いていて、いつの間にか
2人は山手線の側を歩いていた。

「さて、次どこに行くんですか?」

「うーん、どこ行こっかなぁ。じゃぁ…」

その時、電車が通りがかってリサのセリフがかき消された。

「…ね、行こっ。いいでしょ?」

(…?よく聞き取れなかったけど、別に変なところ行くわけじゃなさそうだし、まぁいっか。)

「分かりました。いいですよ。」

「やったぁ♪えへへっ、いっぺんヒグラシさん家行ってみたいと思ってたんだ。」

「Σえぇっ!?僕の家ですか?」

「そうだよ、今言ったじゃん。ヒグラシさんだっていいって言ったしー。」

(まさか僕ん家だとは…っていうか、こういうシチュエーションって前にもあったような気が…?)

「その、片付けもしてないので今日のところはちょっと…」

「ダメ?」

リサは上目遣いで寂しそうな顔をして目を潤ませる。ヒグラシには見えなかったが、後ろに
回した手に目薬を持っているようだが…

「…いえ、散らかっててもいいんでしたら…」

こう言わないと仕方がないかと妥協して収拾をつけた。

「やったぁ!じゃ行きましょっ。」

まんまと罠にはまったヒグラシであった。リサは何やら企んだような含み笑いをしていた。

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2人はヒグラシの自宅に着いた。もう昼過ぎだ。ヒグラシは単身上京しており、アパートに
1人暮らしをしている。

「へぇー、ヒグラシさんって1人暮らしなんだ。へぇー…」

リサは後に言った「へぇー」の時にニヤついていた。

「すいません、ちょっと散らかってますけど…」

「全然キレイだよ。言うほど散らかってないじゃん。」

ヒグラシの部屋は六畳一間のワンルームで、こざっぱりしたシンプルな部屋である。
本棚が1つ、パソコンが1台、扇風機が1台とベッドが1台ある。台所部分に小さな冷蔵庫が
1台ある。部屋の隅にはギターが置かれており、本が2〜3冊床に落ちていた。

「えーっと、なになに、月刊DTMマガジン、日本地図、東欧の風景写真集、…」

リサは床にある本を手にとって見た。

「何か真面目な本ばっかなんだね。他には無いのー?」

リサはニヤニヤしながら言う。

「…何を、期待してるんですか?」

「ヒグラシさんも持ってるのかなぁーって思ってさ。Hな本とか。」

「持ってません!」

ヒグラシは顔を赤らめて否定する。

「ふーん…」

リサは何かを思いついたような様子を見せた。

「ねぇねぇ、ヒグラシさんってさ、今まで彼女とかいたこと無いの?」

「高校の時につきあってた事がありましたけど、僕はこういう消極的な性格ですからね…
早い時期にフラれてしまいました。」

ヒグラシは片付けをしながら人ごとのように自分のことを答える。

「んじゃぁさ、女の子のこと、あんまり知らないんだね。」

リサは含み笑いを口元に浮かべながら言う。

「えぇ、まぁ…そういう事になりますかね。」

ヒグラシは特に話に気を留める事も無く片付けをしながら淡々と返答する。

「ふぅ…片付いた。どうぞ座ってください。」

「ひっぐらっし、さぁんっ♪!!」

突然リサはヒグラシに飛びつきその勢いでベッドに押し倒した。

「Σわっ!何するんですかリサちゃん!」

「キャハハッ、女の子のコト、知らないんでしょ?だからさ…アタシが教えたげるよっ。」

リサは無邪気な表情で、しかしニヤつきながらベッドに押し倒したヒグラシに乗っかって言った。

「リサちゃん、何言ってるんです、ちょっと…やめてください。」

ヒグラシはそう言ったものの、顔が真っ赤になってしかもパニックになっていてうまく動けなかった。

「クスクス…でも、こういうのって嫌じゃないんでしょ?嬉しいくせにぃ。」

「っ…い、嫌とかどうとかじゃなくて…こういうのは…駄目ですよ!!」

「いいのっ!さぁ、覚悟しなさいっ!」

ヒグラシはリサに両腕を押さえられた。ヒグラシは駄目だとは思いつつも抵抗することができなかった。

「あ、あの…リサちゃん、何か怖いんですけど…」

「大丈夫よ、ヒグラシさんはされるがままにしてたらいいんだから。まずは何からしてあげよっかなぁー。
キスがいいかな?」

「あ…ぅ…リサちゃん、ちょっと…」

「そうねぇー、とりあえず…こういうのはどうかな〜?」

リサはニヤニヤしながらヒグラシの腕や脇をくすぐる。

「Σひゃっ!?ちょ、っやめてくださいよリサちゃん、やめっ、はぁっ、あはは、くすぐったいから、やめ…あははは…」

リサがくすぐるうちにヒグラシの衣服が乱れ、はだけた隙間からリサが手を指を入れていく。直に肌に指が触れる。
リサの指は柔らかくヒグラシは敏感に感じた様子を見せる。

「クスッ…どう、感じちゃってる?」

くすぐるだけでなく、優しく、触れるか触れないかというぐらいの具合でリサはヒグラシの肌を触り撫でまわす。
くすぐりだけでなく、優しく触れられることでの快感が次第に入り交じってきた。

「あははは、やめて、あぁっ、リサちゃん、お願いですから、はぁっ、やめて、あっ、うぁっ…」

「えー、何でー?気持ちいいんでしょ?ホラホラ、ね、こことか気持ちいいでしょ〜?アハハッ。」

くすぐりで抵抗する力を奪われ、柔らかな指で体中を優しく触り撫でまわされて敏感に感じている
ヒグラシ。リサはちょっぴり悪い事を覚えたばかりの幼い少女のような顔でヒグラシを見下しながら、
その手を止めずに続ける。

「やめて、あっ…お願い、うぁっ…もう許して…ぁ…ん…」

ヒグラシはリサに5分ほどくすぐられ触られ撫でまわされて抵抗する力をほぼ皆無になるまで
奪われていた。辛うじてできる抵抗はしゃべる事くらいだった。

「えー…分かったわよぉ。」

リサは少し不満気になりながらも手を止めた。ヒグラシは少し落ち着き、息を切らしながらも
呼吸を整えようとする。

「…でも、その代わり…えいっ!」

「はぁ、はぁっ…うわっ!?ちょっ、リサちゃん、何を…?」

「決まってんでしょー、こんな事するなら何するかなんて。アタシだってヒグラシさんの事好きだから
こんなコトしちゃうんだよ?ふふっ…」

リサはヒグラシの服を脱がせ、自分も上にまたがったまま服を脱ぎ始める。ヒグラシは
さっきのくすぐりで抵抗する力を奪われた上に目の前の状況を見てパニックになり思考能力が
働かずの状態で頭の中が真っ白だった。ただ、裸になったリサを見て「綺麗だ…」と思うだけ
であった。それ以外には何も考えられない。リサは躊躇の欠片も見せずに次の行動を取リ始めた。

「…じゃぁ、キスしてあげるね?」

リサが近づき、唇に柔らかな感触を感じ取る。ヒグラシがそれに気がついたとき、リサは舌を
入れてきてヒグラシの口の中で舌を絡めてきた。

「ちゅっ…ん…くちゅくちゅ…」

何だこの感覚は?今までに感じた事の無い…。ヒグラシがそう感じた時、何故そうなって
いるのかを理解したと同時に今まで以上に全身の感覚が研ぎ澄まされたように敏感になる。
同時にリサの柔らかな腕、脚、胸が自分の体に当たる。されるがままのヒグラシは心臓の
鼓動をかつて無いまでに激しくさせ、その音はリサが触れている胸でも感じ取っていた。

「っ…あはぁ。ふふっ…」

唇を外し身体を起こしたリサは妖しく笑う。ヒグラシはただ呆然とリサを見るだけだった。
リサは呆然として力無く仰向けになったままのヒグラシの両手首をつかんで自分の胸に
引っ張っていく。

「ほらぁ、こうするのよ…」

リサは引っ張ってきたヒグラシの手を自分の胸に当てて撫でまわさせる。

――柔らかい。

普段の見た目よりも豊かな胸をリサが手を添えて揉ませる。その感覚に加えて思考力を
失わされたヒグラシはリサに操られているかのようにリサの胸を揉みしだいていた。

「…あっ、そう…ぅ…っ、イイよ…そう、気持ちイイよ…ぁん…」

リサも徐々に頬が上気し始め、息遣いが荒くなり始める。同時にリサの胸の先が堅くなり始める。
リサはヒグラシの手を掴み、胸の先に持っていき、指で摘むようにさせた。

「…はぁん、…あっ…んっ…ぁ…」

リサは胸の先を触られたただけでもびくっと身体を震るわせる。リサも敏感に感じ始めていた。

その状態がしばらく続き、そしてリサが再びヒグラシを見下ろしたまま妖しく微笑んでヒグラシに言う。

「…んじゃ、そろそろ…ヤっちゃうよっ。」

「だ…駄目ですよリサちゃん、それだけは…やめてください…」

辛うじて理性が働き、それだけは言えた。しかしヒグラシはそう言う一方、実はこのまま
犯されたいと思った。ヒグラシ本人にとっては自分の理性の働きが勝っているのだが、リサの
手にかかればそんな事はもはや関係無い。
後は彼女によって堕とされていくだけで、本当はリサに堕とされたいと思っている事を自覚していた。

「ふふ…だぁめっ。覚悟はいい?クスクス…」

リサはヒグラシの両腕を抑え、十分潤った自らの泉へとヒグラシ自身を招き入れ、ゆっくりと
腰を沈めていった。

「…ぅうっ!あぁっ…!」

根元までリサの中に飲み込まれる。その熱く柔らかな感触に、自身が蕩けて呑み込まれて
いってしまいそうな錯覚を覚えるヒグラシ。

「ふふっ…どう、気持ちいいでしょ?このまま溺れさせちゃうよ…クスッ。」

リサが耳元で囁く。同時にリサは腰を振り始める。

「うぁっ!あっ、あぁっ!はぁっ、あっ、ぁ…あぁっ!」

「ねぇっ、知ってる?力を奪われたオトコってさ、オンナよりもずっと従順になるって。クスッ…」

まるでその言葉がヒグラシの今の状況を再確認させ、思い知らせるようにリサが言い放つ。
それを聞いたヒグラシは魔法にでもかけられたかのように、そうならねばならないと
思わされそうな錯覚に陥ってしまう。

「うぁ、あっ!あぁっ…あっ!あっ、…っあ!」

「アハハッ。気持ちいいでしょ、ねっ。ホラ、アタシの目をじっと見てよ…ヒグラシさんさ、
さっき言ってたじゃん、物事に夢中になったら周りの事が見えなくなるって。ふふ…
アタシ以外何も見えなくさせたげるね…?」

ヒグラシはただ喘ぎ、快感に身を任せるだけでまともに返事もできなかった。言われるがままに
リサの瞳を見るとヒグラシの何もかも、全てがリサの手に握られているように感じてしまい、
もはや一切の抵抗を考える事もできなくなってしまった。
そんなヒグラシを、リサは容赦なしに責め立ててゆく。

「アハハッ、ほらぁ…イッちゃえ、イッちゃえっ!」

「あはぁ、ぅあっ、…うぅっ!あぁ…あああっっ!!!!……………あぁ…っ…」

全身に電流が流れるように快感が走り、ヒグラシは身体を仰け反らせ、その場にぐったりとなる。
リサは動きを止めてヒグラシを見下ろしながら優しく妖しく、甘い声をかける。

「はぁ、はぁ…どう?初めての女の子の味は?クスッ…」

「あ…あぁっ…こんな…いい…はぁ、はぁっ…」

「ふふっ、ヒグラシさんって、かぁわいいーっ。キャハッ。」

リサはヒグラシを征服してやったと言わんばかりの表情で上に乗っかったままヒグラシの
両肩に手を置いて顔に近づき、まじまじと見つめながら話しかけた。

「ね……気持ちよかった?」

「………は、はい…」

ヒグラシはしばらく黙った後、おとなしく返事をした。

「クスクス…そう、よかったんだぁ…ふふっ。…じゃぁ、また今度もヤったげるからね。ふふ…」

「………リサちゃん…」

ヒグラシはしばらくの間呆然としていた。ぼーっとしながら一部始終を反芻するように思い出す。
リサはその間ヒグラシに抱きつき、頭を優しく撫でながらニコニコしていた。
丁度、小動物を可愛がるような優しい表情だった。

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――それから、かなり時間が経過し、既に夜になっていた。

………

「そろそろ遅くなりそうだからアタシ帰るね。ねっ、また会おうねっ。」

「…あ、はい。じゃぁ、駅まで送って行きますよ。」

ヒグラシはリサを駅まで送りに行った。

「ねぇねぇ、ヒグラシさん。」

「どうしたんです?」

「ね、腕とか組んだり手つないだりしてさぁ、一緒に歩いてみない?」

リサがそう言ってるそばからもう手をつなぎ、ぐいっとヒグラシの腕を引っ張り一緒に
腕を組んでいた。

「あ…あの、リサちゃん、あの…言い終わる前に…」

「え、なぁに?」

リサはニコニコと笑っている。その無邪気な笑顔を見てヒグラシは何も言い返せなかった。

「あ、あの…リサちゃん、その…胸が…」

リサの胸がヒグラシの肘に当っているのをヒグラシが言おうとした。

「どしたの?ヒグラシさん。あぁ、これ?当たってるんじゃなくて、当ててんのよ。ふふっ…
どう?アタシの胸のドキドキ、感じてる?」

「は、はい…すごく、大きい音です…」

むしろヒグラシの方がドキドキしている。リサは頭をヒグラシの肩にもたれかけるように
寄せながら歩く。

そうしてしばらく歩き、2人は駅に着いた。改札でリサが切符を買ってヒグラシに言う。

「ねぇ、今度はいつがいいかな?来週の土曜とかどう?ねっ、いいでしょ?」

「えぇ。僕は土曜は特に用事もありませんから、大丈夫ですよ。」

「ふふっ…ヒグラシさん、今日はよかった?」

「あ…あの…えと…あ、はい…」

ヒグラシは、かぁっと顔を真っ赤にして照れてうつむきながら返事をする。

「クスッ…もうどこにも逃がさないからねっ。バーンっ。なーんて、ネっ♪」

リサはウィンクしながら指鉄砲でヒグラシを撃つ。ヒグラシは急に胸がドキンと鳴った。
思わず左胸を右手で押さえる。

「じゃぁねっ、また今度!」

「あ、はい。また…」

リサは改札を通りホームへ向かった。ヒグラシはリサが行った後もしばらくそこに
立ち尽くしていた。ヒグラシの心の中にリサの存在が大きなものになっていく事を彼は実感していた。

「心を奪われた…リサちゃん、まるで天使のような、悪魔のような…ううん、いやいや、
僕にとっては天使だよ、絶対に。うん…」

ヒグラシは今日の事を思い出しながら独り言を呟き家路に着いた。

その夜、ヒグラシはベッドに寝て明かりを消した後も寝付けず、今日一日のことを思い出し、
黙って暗い天井を眺めていた。空には満月が出ており、雲一つ無い青い夜空にある月明かりが
窓の外からヒグラシの暗い部屋に薄明かりを差していた。開けていた窓から入る風がカーテンを
なびかせ、ヒグラシの頬を撫でる。その感覚に今日の出来事がフラッシュバックして再び
思い出される。その時ヒグラシはリサへの好意を明確に持っている事を思い知らされたように実感した。
それと同時に、リサの積極性に対し、自分の想い・考えもロクに伝えられていない事を後悔した。

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