リエさなスギレオ


あの変な男に出会ってから三週間がたった。
「り。りえちゃん、へん。じゃない???」

第三回目『崩』

「変じゃないわよ??さなえによく似合ってる!」
ポップンパーティ開演まで二時間前、控え室には沢山の有名人や私たちのようなまだ名前が業界に無い新人がいた。
「やっぱ恥ずかしい!さなえにはこんな可愛い服似合わないよっ!!!」
「だから大丈夫だって;私がさなえに似合うように揃えたんだから;;;」
さなえの服は一応私がコーディネートしたもの、前日にいきなり「りえちゃん!!私着るものない!」と電話で騒がれ急遽渋谷に走って買ってきたもので…。
そんな事を前日に言うさなえが天然なのでムカツくを通り越して可愛らしい。

「あっ、二人とも着替え終わったんだね!」
そう言いながら手を振りながら私たちより一足遅く着替えを終えたスギが近づき笑いかけた。
「わぁ!スギさんそれってCDのカバーの…」
「うん!星達よりも高く飛ぶの衣装!このベレー帽、好きなんだ〜」
さなえの興奮の問いかけに照れながら答えるスギ
「あれ…レオさんは…??」
「レオ?なら…機材室に運んでる自分の音楽機械の最後の点検してると思う…」
「あ、なら私も…りえちゃん、私レオさんに話があるから、ちょっといくね?」

小走りで走るさなえが見えなくなるとスギが私の方を向き口を開いた。
「あの…りえちゃん?」
「何??」「そのー…好きな男の子とか居る?」
「……別にいないよ?」「あの…じゃあさ…僕とか……えと」

顔を真っ赤にして俯きボソボソと何か呟くとスギはパッと真剣な目をし私を見つめた。
「僕、りえちゃんが好きなんだ」「そう」





「……へ?」「どうしたの??」
「その…そうって…」「別に?」
「あの…コレ告白…」「ふーん、有難う」
「……お返事は…」「ごめんなさい」
ガックリ、と肩を落としてスギは溜息を吐いた。……やれやれ。
「あのねスギ、私は貴方は嫌いじゃないけど、、男は…昔ちょっとあって、ね」

「ちょっと…って?」
ふっ、と顔を上げさっきみたく真剣に訊いてくるスギの目線をそらし。私は少しだけ続けた。
「それは秘密、けど男は駄目みたいなの」
するとスギは何か考え込み、暫くして私に向かってつぶやいた。
「それは…さなえちゃんが好きだから?でも…さなえちゃんは…」
「…さなえが、何?」
「さなえちゃんは…」


「…スギ。リエ。なーにしてんだよ」
レオ…またこいつは大事なときに…。。スギがその先を言う前にひょこりと顔を出して邪魔をしてきた。
「…今日の打ち上げの話だよ」「打ち上げ?」
スギの溜息まじりの答えにさらに疑問系で返すレオ。
「そ、…さなえちゃんは?」「あ、さなえは………もうすぐ来るんじゃないか?」
やけに笑顔のレオ。何かあったのか…。
沈んでるスギと比べると正に天国と地獄だった。

暫く関係ない話を三人でしているといきなり辺りのライトが消えて、ステージにスポットライトの明かりがついた。
『皆さん、お待たせいたしました』

ステージの上に立ったのは猫耳の女の子と…ウサギ耳の女の子。顔がそっくり…。
周りの声も聞こえなくなり、しんとした静寂が会場を包む。

『ポップンパーティ、それは音楽を極めたものたちが集う神の聖地!』
『そう、貴方達の中から神様が用意したパーティの出席券を与えられます!』
『長い長ーい練習、血と涙の曲!愛と勇気の歌声!熱い、時には冷たい歌詞!!』
『すべての音楽はここに!すべては神様の元へ!!』
『『We love music! We love ポップンミュージック!!これよりポップンパーティ出席試験をはじめます!!!!』』

大歓声と拍手が巻き起こる。
「はじ…まったのね…」
ごくりと唾を飲み込み、そのすごさに私は驚いた。
「すべての音楽…」
レオも隣で目を細めてステージを見ている
「り、りえちゃーん;」
「さなえ!?」
人の波を乗り越えて疲れきった顔のさなえを私は抱き止めて迎えた。
「始まったんだね;」「何してたの?;心配してたんだから…」
「ごめんね…その…」
さなえの目線がレオに行く。レオも気づいたのかさなえに柔らかい目線を送る。が、レオが見つめた瞬間、さなえが真っ赤になって私の方に急いで顔を戻した。
「ちょっと!;ね?;」「……そう」

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