アゲハ&スミレ×MZD


柱を挟んで、後ろに縛られた両手首に縄が食い込み、その痛みに顔をゆがませた。
「フフッ。良い気味だわ。いつもいつも私たちをコケにしてくれて!」
「お前の今の姿を他の皆に見せてやりたいくらいだわ」
「くっ…オマエらっ…!!」
彼は床の上に座り込む格好で縛りつけられ、自分の前で自分を見下ろす
2人の女性を睨みつけ、こう言い放った。

「神にこんなマネして…一体何を考えてやがる!!!」

勢い良く首を振って叫んだものだから、身につけていたサングラスが外れ
カシャン、と軽い音を立てて床に落ちた─



【事の始まりは5日前の事】

「ははははははっ!罠とも知らずに良くぞ来たわね、神よ!
今日こそは貴様を倒して、この宇宙全体の平和をめちゃくちゃにしてやるわ!!」

「…」

ここはアマゾン川流域青木町の街道─
MZDがその道を鼻歌交じりで歩いていたら、
いきなり前方の電信柱から飛び出して今のように叫んだのは
若干14歳の乙女兼地球を狙うエイリアン、スミレである。

ビシィッとMZDに指を指し、一等司令官らしいポーズを取っていると
足元ではお供のクロミミ隊が同じポーズを真似していた。
そんな彼女のセリフとポーズを見るのがすでに36回目のMZDは
呆れたようにため息をついて、右手にぶら下げているスーパーの袋を持ち上げ
「罠とも知らず─って、そっちが勝手に俺の買い物の帰り道で
待ち伏せしていただけだろーが…」
カサカサと軽く振ってスミレに見せる。
だが、スミレは腕を組んで目を瞑り、胸を張って返事を返す。
「ふっ!毎日繰り返される日常を狙ったとは分からないのかしら?
繰り返す日常、つまりこの道を通る事が貴様にとっての日常であり
無意識のうちにこの道を通ることが義務になっているのよ。
その義務の中に私たちが隠れているなんて
まさか思いも…って!ちょっと待ちなさいよ!」
自己満足げな演説をベラベラしゃべるスミレを無視し、横を通り過ぎようとしたMZDは
顔をスミレに振り向かせて眉をハの字に下げて口を尖らせる。
「あー、ワッリ。もうすぐギャンブラーZが始まっちまうんでよ?
これ見ないとサイバーとスマイルの話に付き合ネェんでな。
また今度付き合ってやるからよ。あ、お前らこれ食うか?」
MZDはスーパーの袋から小さなキャンディが詰まった袋を取り出すと
それを破って中身のキャンディをクロミミ隊に渡して行く。
クロミミ隊はキュッキュッ♪と嬉しそうだが
「えぇーーーい!!受け取るな!お前たち!!!神を捕らえるのよ!」
スミレの一括に驚き、キャンディを口に含んだままザッとMZDの周りを囲う。
そして地面を蹴り上げ、一斉にMZDに飛び掛り─

パシッ!!

MZDの足元から伸び上がった影が、飛び掛ったクロミミ隊を弾き飛ばした。
クロミミ隊はそのまま地面へぽてぽてと飛ばされ、
最後に一匹は呆然とするスミレの頭の上に落っこちてきた。
彼らを弾き飛ばした黒い影は、やがて人の形を形成してMZDの横に倣う。
スミレは頭に落ちたクロミミ隊を抱きしめ、震える指でMZDを指した。
「き、き、き、貴様!卑怯だぞ!オプションで攻撃するなど!」
「つーか、そっち1人と10匹。なおかつこっちは2人でどっちが卑怯なのか…
どー考えたって、こっちが不利なんだけどさ?」
ニヤァ〜、と嫌味ったらしく笑顔で言うMZD。
「き、貴様の影の力はアップアップたち1000匹でも足りないわっ!!」
「しゃーねーじゃん〜?だって神の影だし〜?」
「くっ…お、お前たち!撤収よ!!」
「キュ、キューーー!!」
スミレが手元に持っていたリモコンのスイッチを押すと
空から丸い小型の宇宙船が降りてきて、パカッと透明なシェルターが口をあける。
スミレたちがその中に乗り込むと
「お、覚えてなさーーーい!!」
「キュゥゥーーー!!!」
と、悪役のお約束的セリフを吐いて空へと消えて行き
影とMZDはそれを見上げて
「あー、もう36回も同じこと言われりゃー忘れねーーって!」
と、笑いながら返した。
そうして、影を足元の影の中に戻して
軽くため息を吐いて家に戻ろうと歩き出し─

バシュッ!!

MZDの後ろから熱の塊が飛んできて、それが右頬を掠めると
目の前の石壁にあたり、ジュッと音を立てて焼け焦げた。

「アハハッ!ここであったが100光年目!
今日こそはアナタを倒して、この地球を手に入れて任務を遂行してみせるわ!」

固まっていたMZDが首を動かして後ろを見ると、いつの間に来ていたのか。
そこにはカシャン!と音を鳴らして、熱くなった熱線銃を構える
地球を狙うエイリアンその2、アゲハの姿があった。
オマケに後ろには彼女の宇宙船がスタンバイしている。
バックにドーンと言った効果音を付け、赤と黄色で作られた集中線を付ければ
絵になるだろうなぁ、とMZDは悠著に考えていた。
そんなMZDをよそに、アゲハは勝手に自分でヒートアップしながら
『悪役のお約束決めセリフ集』に載っていそうな
セリフをベラベラと喋っている。

「はぁー…めんどくせ」
MZDは大きくため息を吐くと、指をパチッと鳴らして影を再び呼び出す。
そしてまだベラベラしゃべり続けるアゲハを指差すと、
影はコクリとうなずいて、アゲハへ向かって飛んだ。
「そして私とケリーお姉さまは晴れて…ウフフ…♪」

妄想を膨らませ、顔の筋肉を緩めるアゲハの首のリストを掴み、
ポイッと宇宙船に投げ込むと、そのまま影は何処で覚えたのか
器用に宇宙船の操作ボタンを押して、シェルターを閉じさせ

バシューン!

砂煙が立ち上り、宇宙船は一気に空へと舞い上がった。
「あぁ、お姉さまぁン……って!ちょっとちょっと!!何ー!?」
恍惚とした表情から一転して、慌ててシェルターに張り付いて
下を見ると、MZDと影がが憎たらしいまでの笑顔でこちらを見上げて手を振っていた。
「嘘でしょーーーーーー!!」
困惑した表情を残したまま、宇宙船は雲の中へと突っ込みやがて空の彼方と消えて行った。
「いーんや。コレが真実ってヤツ?」
MZDはアゲハに向かって言うわけでもなく、そう笑顔で呟くと
影を後ろに控えさせて上機嫌に鼻歌を交えながら家への道を歩いて行った。



「んっもーーーーー!!超サイアクーーーーーー!!!!」
ビリビリと空気が痛く揺れるほどの今の様な叫び声をあげるアゲハ。
しかし、周りにいる者たち─おおよそ、人間とは思えない風貌の者たちは
またいつもの事か、と苦笑していた。
ここは宇宙人御用達のスペースカフェ。
ガラス製の天井からは星々の光りが照明の代わりをしており
煌々とアゲハが掴んでいるコーヒーカップを照らしていた。

「これで通算26回目だわ!いっつも人の話を聞かないで
一方的に好き勝手してくれるんだから!」
ガン!両手で掴んだカップをテーブルの上にたたきつける。
「26回ならまだマシだわ!こっちなんて36回目よ!
その度にこの可愛いアップアップたちの怪我が増えていく…」
アゲハの隣に座るのはスミレ。膝の上にはアップアップを1匹乗せ
彼の頭を優しくなでながら、オレンジジュースを一口含む。
この2人は地球侵略、と同じ目的を持つ故、立場上はライバルであるが
MZDにコテンパンに成敗され続け、彼をいかに、どうやって攻略するか、
それより聞いてよ!今日はアイツにあんな事で負けた…
などとこのカフェで愚痴り合い続けるうちに妙な友情が芽生え
こうしてよく交流を交わすようになったのだ。
「あの影さえいなければ神などただの子供なのに」
「そう、あの影さえ!!影さえいなければMZDなんてイチコロなのよ!!」
アゲハとスミレは顔を見合わせて声を張った。

MZDは神だが、特殊な能力といえば空を飛べることと天地創造くらいである。
彼の力のほとんどは、まさにオプションの影なのだ。
成長性は遅いが、力、スピード、そしてその特殊能力─相手の時を止める能力がある。
その力の脅威は、まさに神としての使いとして相応しいだろう。
逆に言えば、影がいなくてはMZDに力は無い。
その弱点を突き、なんとかしてMZDから影を消すことは出来ないだろうか…。

「影を消す方法なら、なんとかなるんだけど…」
アゲハがコーヒーのお代わりをマスターに頼み、ポツリと呟いた。
「でも、私1人じゃどうともならないのよ。そこで…」
チラ、とスミレを横目で見つめ、ニッコリと微笑む。
「手を組まない…ですって!?」
目を見開き、驚いた口調でアゲハを見上げるスミレ。
地球を狙う所ではライバル。しかしその地球を手に入れるためには
まずMZDを倒さなければならない。だが、自分の力では絶対的に不利だ。
スミレの頭の中は葛藤の嵐。

「……」

一呼吸置いて、スミレは呟いた。

「…分かったわ。手を組もうじゃないの!!」
ガシッ!とアゲハを手を掴み、興奮気味な笑顔で返す。
アゲハはにこやかに微笑えんでこう言った。
「そうこなくっちゃね♪」


「は…?男性を意のままに操る方法…ですか?」
白い湯気がカップから上がって香ばしい幕を作り、
周りの空気に溶けて今のセリフを言った人物が姿を現す。
このカフェの常連客であり、他の常連客の良き相談相手
通称『歩く宇宙辞典』。土星人間ウォーカーであった。
「そうなのよ!考えたらさ、MZDを倒すよりも洗脳して操った方が良いじゃない?」
アゲハが両肘を机に突き、顔を支えて背を丸めながら言う。

「そうすれば、我が軍の強力な手下になるわ」
スミレが腰に手を付き、胸を張ってフンッと威張る。
そんな2人の姿を見て、ウォーカーはやれやれとため息を吐いた。
「いくら長年生き続け、この宇宙を放浪してさまざまな文化の知識を持つ私でも
そんな都合の良い方法など知りませんよ」
そう言ってコーヒーカップを口に運び、中の液を飲み干す。
が、ふと何かを思い出したように動きを止め、軽く宙へと視線を止める。
「あ…いや…洗脳とは違うのですが…」
「何かあるのっ!?」
「『男性を手玉に取る方法』ならば、地球で訪れた書店で見つけましたね」
それだ!!と、スミレとアゲハは同時に叫び、ウォーカーに詰め寄った。
「どこで見つけたの!?」
「渋谷の大きな書店でしたね。先週です。」
「本の名前は!?」
「えぇっと…忘れてしまいましたが、今言ったコピーが表紙に載っていましたね」
「そう!分かったわ!!感謝するわ!!」
そう言うと、2人は猛ダッシュでカフェを飛び出し、駐車場の宇宙船へと乗り込み
あっという間に宇宙の闇へと消えて行った。
ウォーカーは今の嵐のような光景を見て、ふ、と笑った。
「…まぁ、神ならばあの2人の計画くらい
軽くあしらえると思うんですがね…」
だが、ウォーカーは知らなかったのだ。
2人に教えた本の内容により、MZDがとんでもない目に合わせられる事を。

そしてウォーカーの足元では、置いていかれたアップアップが
泣きそうな顔でオロオロしていた。

3日後─
無事にその『本』を手に入れたアゲハとスミレは
その方法が果たして効くのかどうかの実験を行い
結果をカフェで語り合っていた。
「サイバーのヤツに試してみたんだけどね…
凄いのよ!いつもはお調子で生意気なサイバーが
もぅ私に対してヘロヘロになってしまったの!
ホラ、こんなもの手に入れちゃったわ」
そう言いつつ、アゲハが取り出したのはサイバー愛用のいい人光線銃。
「貸してって一言言ったら見事よ」
それなら私も、とスミレが言う。
「私は睦月君に試したら、耳は垂れるわ尻尾は丸まるわ。
5時間並ぶラーメン屋の場所取りを命じたら、嫌な顔一つもしないで実行したの」
そう言って、そのラーメン屋のマッチを取り出すスミレ。
2人は真剣なまなざしで『本』を眺めた。
「これは凄い…まさに男を手玉に取れる方法だわ!」
「これならMZDだって手玉に取ることも簡単ね」
「─と、それなら早速準備にかかるわよ」
2人は拳を合わし、エイエイオー!と気合を入れた。


そして舞台は2日後の青木町のMZD宅へと移る。
MZDはいつものように、自室のDJルームでうんうん唸りながら
次回パーティ用のメンバー表やら、リミックス曲作りにいそしんでいた。

「マスタァ〜たまには休もうよぉ〜」
DJ台の前にへばりついているMZDの後ろから
そんな疲れた声で語りかけたのは、彼のしもべ…というより
ペットといったほうが正しいか。
いぬ千代が紅茶とクッキーを盆に乗せて現れた。足元にはP-catとKaeruとかたつむり。
いぬ千代は普段は名前の通りの犬の姿をしているが
こうしてMZDが業務に勤しんでいる時はアシスタントとして人の姿にされている。
「あー、悪ィ!あと少しなんでよ。もちっとさせろヤ」
「もぉ〜。身体壊さないでくださいよ。ほら、窓とカーテンまで閉め切ったら
身体にますます悪いんだから。開けるよ?」
資料がごった返す机の上には盆が乗せられなかったので
空いている椅子の上に盆を置き、閉められたカーテンを開けて窓を開ける。
「うわぁ、木々の香りが良い感じ〜♪」
窓から身を乗り出し、家の周りを包む亜熱帯植物の香りを嗅ぐ。

と、その時だ。

キラリ、と空の向こうから一筋の光りが見え
いぬ千代はなんだろうか?とその方向へ目をやった。
それはこっちに向かってきており、やがてその姿が確認できた時─

パンッ!!

それが勢い良くいぬ千代の額に当たり、
その衝撃によって彼は背中から床へと派手に倒れこんだ。

「いぬ千代!」
それに気が付いたMZDが、大慌てで椅子から飛び上がり倒れた彼を抱きかかえる。
「いぬ千代!大丈夫か?いぬ千代!!」
「うぅ…マスタ〜…ぼ、僕…僕…」

「大丈夫みたい」

むくりと上半身を起こし、額にくっ付いているとんで来た物体を手でもぎ取った。
「何これ?」
「矢…?先に吸盤が付いてる…あぁ、ヨシオのアレと同じヤツか」
いぬ千代の額にヒットしたのはおもちゃの矢で、羽の根元に紙が結んであった。
「ナンジャコリャ」
MZDはそれを解き、紙を広げた瞬間
「ゲ…」
左頬が、かすかに引きつった。
「どうしたの?マスター」
いぬ千代がその紙を覗き込もうとした時、MZDがクシャリと丸めて床にほおる。
「アゲハからだ…今から指定の場所に止めた宇宙船へ来いだってよ」
「何?また対決しろって?」
「あ〜〜〜〜メンドクセェ〜〜〜。でもここで行かネーと
『私の力に恐れをなして逃げ出したのね!』と風潮されかれネェ」
よっこらせ、と立ち上がるとMZDはゆっくりと影を召喚させる。
「なぁ、今何時だ?」
「え?今は4時ちょっとだけど?」

そうかー…ギャンブラーZまで、あと1時間か。まぁそんくらいあれば
軽く片付けられるナ。じゃぁ行ってくる。留守番頼むぜ!」
MZDは軽く上半身をひねりそう言うと、
影を身体に纏い、開け放たれた窓からバッと飛んで行った。
その姿を見て、ボーっとしていたいぬ千代だが
いつもとは違う、何かを感じた。
「う〜ん…マスターの事だから平気かとは思うけど…
なんか、不安だなぁ…いつもは感じないのに…」
動物としての本能が働いているらしく、いぬ千代の尻尾は
せわしなくパタパタと動いている。
彼が床の上に丸められた紙を広げると、そこにはアゲハからの挑戦状と
宇宙船の場所の地図が描かれていた。
「ここか…うん、ねぇ、PにKaeruにカタツムリ!
マスターの後を追うよ!」
そう言って立ち上がると、後ろからP-catがどうやってMZDの後を追いかけるかと言った。
走ってでは、飛んでいるMZDに到底追いつくことは出来ないからだ。
しかし、いぬ千代は自信たっぷりに胸を張る。
「大丈夫!この前のパーティの時に久しぶりにドナちゃんに会ってさ!
ポップンステージの時のお礼だって、彼女の古いバイク譲ってもらったんだ!
それに乗って行こう!ほら急いでー!」
ドタバタとDJルームから外に出て、MZDのレコードコレクション置き場と化した
ガレージのシャッターを押し開けると、多少傷がついてはいるが
ピカピカに磨き上げられた原付がそこには置かれていた。
Kaeruとカタツムリはかごの中に入れられ、
P-catはヘルメットを装着したいぬ千代の肩に乗っかった。

いぬ千代はバイクにまたがり
「行くよー!!」
ブウゥゥン!!
バイクが震え、一気に発進してジャングルの中へと突っ込んでいった。

バシャン!
ガサガサガサガサ!!
ギュロロロロロ ギキィーーーー!!ズシャァーーーー!!!

ジャングルの向こうで、いぬ千代のこんな声が聞こえた。

「あーーーー言い忘れたけどねーーー」

「僕、実は免許持ってないのーーー!!!」

ちなみに、運転するのも今日が初めてだったのだから
乗り合わせた他の3匹の叫び声がジャングル中にこだましたのは言うまでも無い。

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