Love2 Sugar 篇


ずっき─────(゚Д゚)─────んっ!!
「いっ…いてててっ!」
奥歯にネジ釘を捻じ込まれたような痛みで思わず声が出てしまった。

「ん? ど、どうしたの?佐藤くん」
僕の肩に手を置いたままのモモコさんが、びっくりした目で僕を見ていた。
「んー……だ、大丈夫れふ…なんでもないれふから……」
僕は口に手を当て、微笑んでごまかす……実は、ちっとも大丈夫なんかじゃない。
仕事に集中してたので忘れかけていたのだが、不意にモモコさんが僕の肩を叩いた為に強烈な痛みが奥歯で発動した。

僕は今、虫歯で悩んでいる。
最初は少し水がしみる程度だったんだけど、今ではちょっとした刺激で、奥歯に高圧電流が流されたみたいな激痛が走る。

実は…あのバレンタインの日から、ししゃもはチョコ作りにすっかりはまってしまった。
今では腕前もかなり上達し、なんとししゃもの作ったチョコがリエちゃんのおかげで『ポップンクランチチョコ』と名づけられてカフェのメニューにも載せることができたのだ。
だけど……その代償に僕の奥歯にでっかい穴が開いてしまった…ほぼ一ヶ月間、毎日、味見役は僕が務めたからだ……。

「本当にだいじょうぶ? なんか涙目になってるし…?」
「だ…だいじょうぶれふ……」
モモコさんは僕の顔をじっとみつめ、いきなり僕の頬を指で突いた。
「……つんっ」
ずっき─────(゚Д゚)─────んっ!!
「 う が あ っ ! ! 」
がっしゃあんっ!

奥歯の激痛スイッチがONになり、思いっきりのけぞった僕はデスクチェアごとひっくり返ってしまい、歯と腰の痛さと情けなさで涙が出てきた。
「…な……なにするんれふか……」
僕は床に這いつくばったまま、頬を押さえてモモコさんを見上げた。
「佐藤くん……あんた虫歯でしょ……」
「な、なぜそれを……」
「……つか、ほっぺ、ぱんっぱんに腫れてるし……」
モモコさんは僕に向けてコンパクトミラーを開いた。
鏡に映った僕の顔は……片頬が真っ赤に腫れて、顔全体が変形したようにみえるほどだった。
「はわわわ……ましゃか…こんなに……」
僕は床に座り込み、鏡を手にして愕然とした。
「んもう…子供じゃないんだから……さっさと歯医者さんいってきなよぉ……」
まるで保護者のような口調で言うと、モモコさんは僕の手をひいて立ち上がらせてくれた。

「ところで……何の用だったんれふか?」
僕は、奥歯がずきずき痛むのを我慢しながら椅子に座りなおした。
「んー…実は受け取って欲しいものがあったんだけど……」
そう言ってモモコさんはB5サイズくらいの薄い箱を取り出した。
「コレなんだけどね……」
箱を開くと、中には一口大のチョコレートが整然と並んでいた。

ずっき─────(゚Д゚)─────んっ!!
僕は頬を押さえてぷるぷる震えた。
甘いものを認識した瞬間、虫歯菌たちが歓喜の雄叫びを上げたのだ。
「いりまふぇんっ!! ゆるひてくだひゃいっ!!」
僕は泣きながら、その場から逃げ出そうとした。
だが、モモコさんは僕の首根っこを押さえて、耳元で小さめの声で言った。
「ちがうって! 食べなくていいから! つーか、食べちゃだめだからねっ!!」
「………たべちゃらめ……??」

このチョコレートが、これからとんでもない事を引き起こすことになるとは、僕はまだ気づいていなかった。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

「……えっと…たひかこのへんらったかな……?」
虫歯の痛みに耐え切れず会社を早退して、近所で評判の歯医者に行ってみることにした。
しかし、あまり歯医者に縁のない僕は道に迷ってしまい、通りがかったおばさんに道を聞いてみた。
「あのー、すみません…………」
「あぁ、TAKA歯科医院ね? そこの角、曲がったとこだよ」
「ありがとうございまひた」
僕は不器用に頭を下げて、角を曲がっていった。
「……あ、今日は金曜日だっけ……? あの人、生きて帰れりゃいいけど……」
片顎の脈がズッキンズッキンと脳髄にまで響き続ける僕には、そんなおばさんの呟きなんか全く聞こえていなかった。

そこは綺麗なこじんまりとした歯科医院だった。
てっきり混んでると思っていたのだが、扉を開けると僕の他には誰も患者は居なかった。
待合室から診察台まで壁や仕切りもなく、窓も大きめで、広くて明るく開放的な雰囲気だった。
「へぇ……歯医者って、もっとおっかないイメージがあったけど……これなら安心できるなぁ……」

「いらっしゃいませ〜!!」
背後からいきなり声をかけられて僕は飛び上がった。
ずっき─────(゚Д゚)─────んっ!!
「あだだだだだっ!!!」
今まで落ち着いていた分もまとめて、情け無用の激痛が襲ってきた。
「くすっ♪ 歯いたいの? がまんしてなくちゃだめよv」
頬を押さえながら振り向くと…白衣を着たピンクの髪のかわいい女の子が立っていた。

「あ……歯医者さんでふか…?」
「患者さん、ココはじめてぇ? わたしTAKA先生の助手のミルクです♪」
ミルクと名乗った女の子はニコッと微笑んだ。
「はひ……予約とかしてなひんでふけど……治療できまふか?」
「Don't worried♪ 大丈夫よ、今、予約の方が一人いるけど次は空いてますから」
「はあ…」

ミルクは笑顔も声も文句なしに可愛く、誰もが緊張する治療前でも自然と安心できる雰囲気を醸し出していた。
ついでに…カラダも……胸は白衣のボタンがはちきれそうなほど大きくって、白衣の長さはほとんどミニスカートなみで、裾から伸びるむっちりした太股につい視線がいってしまう…。
『……いかんいかん……オヤジ入ってるな……最近……』 僕は目を伏せて自分を戒めた。
しかし…気になったのは……評判のTAKA先生とやらや、先約の患者さんの姿がどこにも見えないことだった。

「じゃあ、そこでお掛けになってお待ちくださいね」
ミルクが指した待合用のソファに僕は腰掛けた。

「あらぁ? もう…ヨシオくんったらちょっと目を離してる隙に、すぐ逃げるんだから……」
そういってミルクは誰も居ない診察台に近づいていった。

「 さ っ さ と お り て ら っ し ゃ い っ ! ! 」

 ど っ か ぁ ん っ ! !
ミルクは床を思いっきり踏み鳴らした。 その衝撃は医院全体が揺れるほどすごかった。

 ど さ っ !
衝撃で、天井からジャージを着て奇妙な頭巾をかぶった男が診察台に落ちてきた。
「ひいいいいいいっ!! た、助けてくれでござるっ!!」
「ほらほら、男の子が泣かない のっ!!」
「ぎゅ─────っ!」
ミルクはニコッと笑って、「のっ!!」のタイミングで、怯えている忍者(?)のような男の鳩尾に瓦割り突きを叩き込んだ。
ヨシオと呼ばれた彼はひくひくと痙攣したままぐったりし、ミルクは慣れた手つきで彼の身体を革のバンドで診察台に固定しはじめた。
「ほうら…おくちをあーんしてぇ……やん…こんなに…おっきくて……太い……なんて逞しい 親・知・ら・ず …濡れてきちゃう……」
ミルクはヨシオの頭巾をめくりあげ、口をこじ開けると中を潤んだ目で眺めていた。
するとヨシオの意識が戻ったようだった。
「……はわっ! や、やっぱりTAKA先生の居るときにするでござるっ!! だから今日はこれにてっ!!」
ヨシオはじたばたと身をよじった。
「 だ ぁ め v これ以上…がまんしたら身体に悪いわ……それに…毎週金曜日は先生、クラブDJの仕事の日なの…… だ・か・ら・・・」
ミルクは診察台の傍でヨシオの身体に寄りかかりながら、甘えるようにつーっと指先を彼の頬に滑らせた。
「…だ……だから……?」
ヨシオは震える声で聞き返した。
「……だから………今日は……おねえさんが……思いっきりヌイてあげるうっ!!」
彼女は両手いっぱいに何本も持った禍々しく銀色に輝く治療器具を振りかざすと、ヨシオの親知らず目がけて襲いかかっていった。

「はぁい あ────────────んしてぇ!!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ あ あ あ ぁ ぁ ぁ ぁ ・・・・・・」
診察室に歓喜の声と哀れな叫びが交互にこだました・・・

<残酷な場面のため、音声のみで自粛>
「きゃはっ! きゃははははっ!」
きゅいいいいんん
「ひいいいいいいいっ!」
がががっがががががっ
「次はね…ハァハァ…じゃーんっ! 特大抜歯鉗子でーっす♪ …ハァハァ…気失っちゃいやよv…ハァハァ…」
じゃきっじゃきっがごっ 
「やーめーてええぇぇぇ…………ごきっがががごがきっ」

僕は……目の前で繰り広げられる惨劇に身動きが取れなかった。
「……逃げなきゃ……次は…………」
ごく、と唾を飲み込み、必死で足を奮い立たせようとする。
だが、途切れなく聞こえる金属音と悲鳴に、僕の腰は抜けたままだった。

 が た ん っ !
「きゃんっ!!」
診察台のほうから突然、大きな音と悲鳴が聞こえてきた。
音の方を見てみると、ミルクは床にしりもちをついたように座り込み、ヨシオが凄まじいスピードでこっちに向かって駆け出していた。
「う…うわあああああああっ!!」
口から何本もの治療器具をぶらさげたままのヨシオと目が合い、僕は絶叫した。
そして、彼は必死の形相で僕の前を横切り、扉を蹴り開けて外に飛び出していった。

「……いたぁい……まさか、関節を外して脱出するなんて……さすが忍者ね……」
ミルクは床に打ちつけたおしりを擦り、立ち上がりながら呟いた。
「ま、いいか……次いってみよっかな……」
空になった診察台から、かちゃかちゃと革バンドを外しながらミルクは僕の方をちら、と見る。
びくっ! 目が合った瞬間、僕は殺気を感じ、開けっ放しの出口にむかって駆け出した。

スコンッ!!

何かが僕の目の前を掠めて壁に突き刺さった。
壁を見てみると…細い鉤爪の様な治療器具が、びぃぃぃぃん……と音を立てて震えていた。
「えへへ、その歯石用グレーシーキュレットは先がチタンの特注品なのぉ? 毎日、練習したから空缶くらいなら貫通できるようになったよ!」
彼女は自慢げに胸をはって言うとニッと白い歯を見せて笑った。
『…も…もう……だめだぁ……』 最後にふりしぼった力がぬけて、僕は床に座り込んでしまった。
へたりこんだ僕の傍らを通り抜け、ミルクは外に出ると「本日休診」の札をかけた。
「…これで…邪魔はこないし……ふたりっきりよ…ンフフフフ……」
彼女はそう言いながら扉を閉めると、後手で鍵をかけて妖しく笑う。
そして…僕の肩をがっちり掴んで……処刑台(診察台)にずるずると引きずっていった。
「ぃ…いーやーだあああああぁぁぁぁ……!!」

「んふふ〜♪ 虫歯〜♪ 削っちゃおっかなん? つめちゃおっかなん? それともそれとも〜♪ ヌイちゃおっかなぁん♪」
ミルクは僕をベルトで固定しながら奇妙な歌を口ずさんでいる。
「うぅ…おねがひです……たすけてくだひゃい……」
「あ、まだ名前聞いてなかったわね! 保険証は?」
「か…カバンの中でふ……」
彼女はソファに置きっぱなしのカバンにスキップしていった。
革ベルトは体を診察台の四隅へ両手首、両足首ともがっちり固定していて、離れた隙に揺すってみたが、僕の腕力ではどうにもならなかった。
「……あ、あった……えーと、お名前は……佐藤さん? きゃあああっ! シュガーちゃんだわっ!!」
僕の珍しくもなんともない苗字で、なんだかわけのわからない感動をしているようだ。
「わたし、甘いのだぁい好きっ! ぞくぞくしちゃう…これからは『シュガーちゃん』って呼ぶからね!」
「は…はぁ……」
なんて答えればいいのかわからない……

「おや? これはなんでしょう?」
カバンを引っ掻き回していた彼女は、モモコさんから預かったあの薄い箱を見つけた。
「わあっ! そ、それはだめでふっ!」
ずっき─────(゚Д゚)─────んっ!!
「いだだだだっ!!」
僕は驚いて叫んだが、大口を開けると奥歯の高圧電流がONになった。

モモコさんから預かった箱……それは……

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

「ちがうって! 食べなくていいから! つーか、食べちゃだめだからねっ!!」
「………たべちゃらめ……??」
「そう……風尾課長からホワイトデーのお返しで…女性社員みんなでってもらったんだけど……」
モモコさんは用心するように周りをみわたし、さらに囁き声になった。
「あのセクハラオヤジ……ガラナチョコなんか持ってきやがった……」
こみあげる怒りでモモコさんの手に力が入り、箱がめきっと少し潰れた。
「……がらな……ちょこ……?」
僕は初めて聞く名称に首をかしげた。
「あー、別におこちゃまは知らなくってもいいから…ただ毒だから食べちゃだめってこと」
「ど、毒!?」
まさか部下に毒を配る上司がいたとは……先月もらった小さいチョコももしかして……僕は背筋がぞっとした。
「……で、会社のゴミ箱にすてると、バレたら面倒だからね……佐藤くんにどっかで捨ててきてほしかったの」
「……わ、わかりまひた……」
僕は箱をしっかりと受け取り、用心してカバンにしまった。
もしその辺の公園とかに適当に捨てたら子供たちが危ないかもしれない。
誰の手にも届かないところに捨てなくては……僕の中で使命感が燃えてきた。
「じゃあ、まかせたからね!」
そう言ってモモコさんは僕の背中を叩いた。

ずっき─────(゚Д゚)─────んっ!!

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 

「わ! チョコレートだぁ! きゃほーっ!!」
箱の中身を見たミルクは満面の笑顔で喜び、飛び上がった。
「んもぅ…だめじゃなぁい……こんな甘いもの隠しててぇ……虫歯がもっとひどくなるよぉ?」
彼女は僕にツカツカと近づき、箱を目の前でひらひらした。
「い、いや……それは……」
「これは…おねえさんが没収っ!! いえーいっ!」
「だ、だめですっ! それは…」
言いかけた僕の口に何か押し込まれた。
「んがががっ!」
「もうっ! うるさい子には口角鈎っ!」
僕の口は器具で開きっぱなしに固定されてしまった。
「あぅーっ! ろくーっ! ろくれふーっ!」(毒ーっ! 毒ですーっ!)
「でわ、いただきまーっす!」
彼女はチョコをつまむと、口にほおりこんでモコモコと噛みはじめた。
「あぅ…あわぁ……」
僕の顔から血の気が引いていく……
もし…彼女が中毒を起こして倒れて……警察がきたらなんて説明したらいいんだろう……
まて、土日は歯医者は休みだから……最悪、月曜にならないと誰もこない……僕……固定されっぱなしかーっ!?

「おいしいっ! ちょっと大人の味ってやつ? もっと食べちゃおうっと♪」
「はぅーっ…あぅーっ……」
僕の不安など気にもせずミルクはぱくぱくとチョコを食べた。
だが、別に見たところでは食べても大丈夫なようだ……?
「ふぅ……ゴチでした♪ すわて! 血糖値あがったところで、はりきっていってみよっかな!」
…いっそのこと倒れてくれたほうが生存確率高かったかもしれない……

「……んふふぅ……ぽっかり穴あいちゃって……うわぁ、いったそー……ンフフフフフ…」
ミルクはデンタルミラーを手に、僕の口の中を覗き込んで含み笑いをする。
「それに…ハァハァ…あっちこっちに…虫歯予備軍さんがいっぱぁい! たまらんば─────いっ!!」
それどころじゃない、こっちは背中に冷や汗がたまってきた。 しかもなんで博多弁?
「あら? 緊張してる? うぅん…シュガーちゃんがそんな顔したら、ミルクせつない…」
どうやったらこの状況で笑えるというのか…?
「…麻酔つかおっか?」
「…! ほんほれふは!?」(ほんとですか!?)
希望の光が見えてきた! でも…使うのが普通なんだよ……ね?
「これが即効性のある缶スプレータイプの麻酔なの」
彼女はスプレーに吸引マスクが付いた缶を取り出した。
「は…はやふ! おっおへはいひはふ!」(はやくっ! おっおねがいします!)
「 わ た し が 吸 う の 」
ミルクは口にマスクを当てるとノズルを押し、プシュッと音をたててガスを吸い込んだ。
「きゃーっははははっ! 最高にハ───イっ! たまらんとですた─────いっ!!」
僕の希望は粉々に砕け、目の前は真っ暗になった……それに、なんで鹿児島弁?

「さあ、シュガーちゃぁん……ミルクすっごくいいきもち……イクよ……」
ミルクは潤んだ目でちゃき、と歯削用電動ドリルを構えて、僕の頭にしっかりと腕をまわした。
「あ……あわあわわわああああ……」
「はぁい、あ─────んしてぇ……ん」

きゅいーんと診察室にドリルの音が響く。
「…んー、神経までは大丈夫ね…これなら削って詰めるだけでいいかも……」
「ふぁい……」
彼女はミリ以下単位の細かい作業を丁寧にこなしていた。
「あ、酸を塗りますから苦かったり、しみたりしたら言ってくださいね」
「ふぁい……い、いふぁい…」
「ごめんなさい! 大丈夫?」
「ら、らいひょうふれふ…」

……いったいどうしたんだろう?
始まった途端、彼女は豹変し、やさしく丁寧に治療してくれている……。
彼女の表情は真剣で、とても騙しているようには見えない。
心配そうな僕の目を見つめかえして彼女は微笑む。

「ごめんね…わたし下手だけど……すぐに治したげるからね♪」

後編へ

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